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ハナを主張し切った1コーナーでの行動がハイライトだった
文/編集部

「小倉」の名を冠してはいるが、まもなく始まる中京競馬場改装のために、今年の小倉大賞典中京に振り替えられての開催となった。

このレースが中京で代替開催されたのは過去二度あるが、そのうちの一回はあのサイレンススズカがレコードで逃げ切ったもの。奇しくも今年も、ハナを奪って逃げを打った馬が勝利を手にする形になった。

良馬場ではあったが、馬場の脇にはところどころに雪が残っていた。サイレンススズカが逃げ切りを決めた98年は4月の開催だったが、今回は2月。この日は積雪の影響で、第1Rの発走時刻が1時間以上も遅れて始まっていた。

さらには、戦前に逃げ宣言をしていたモエレビクトリーが感冒のために出走を取り消し、レースの発走前には発馬機材の誤作動でドリームサンデーが枠内から飛び出してしまうアクシデントまで発生。

落ち着かない状況の中でレースは行われ、決勝戦手前では2位に入線したマイネルスターリーが外に斜行して進路妨害を取られる事態まで起こり、7-2-13番人気の決着で3連単は34万馬券になる波乱となった。

98年の小倉大賞典は、後になって「サイレンススズカが勝利したレース」として記憶されているわけだが、今年はどうやら「いろんなことが発生したレース」として残りそう…。

しかし、いろいろなことが起こる中、大外枠から果敢にハナを奪い、そのまま押し切ったオースミスパークのことは、その騎乗ぶりと合わせて語り継いでいくべきものだったと思える。

7番人気だったオースミスパークは、大外枠から「何が何でも」という感じでハナを主張した。当初騎乗予定だった赤木騎手が落馬負傷したため、鞍上は藤岡康騎手に乗り替わっていた。

藤岡康騎手はまったくのテン乗りだったが、ハナを奪い切るとそれほどペースを緩めずに流し、直線に向いた。淀みないペースとなり、なし崩し的に脚を使わされたからか、後続の馬も直線に入ってそれほど切れる脚を使えず、オースミスパークが押し切る形になった。

結果的に、3位入線のナリタクリスタルが繰り上がりで②着となり、(株)オースミの持ち馬が①&②着を占める形になった。ナリタブライアンナリタトップロードなどでおなじみの勝負服によるワンツー。ナリタブライアンの主戦でもあった南井調教師が管理するオースミスパークが優勝したあたりは、何かの縁を感じさせた。

急遽乗り替わって結果を出した藤岡康騎手は、昨年のNHKマイルC(ジョーカプチーノ)以来の重賞勝ちで、意外にもこれが今年の初勝利となった。

そのNHKマイルCもそうだったが、藤岡康騎手は先行馬に乗った時に、後続の馬に上手く脚を使わせて、そのまま押し切るレースをよく見せる。この日もペースが速く上がりのかかるレースになったが、自分の馬と他馬の脚を測った上で直線入り口で突き放し、そのまま粘り込むという、絶妙のレース運びを見せた。

勝利したから「絶妙のレース運び」と言えるのだろう、との意見もあるかもしれないが、それもこれも、勝ちにこだわった1コーナーへの飛び込みがあったからこそ成せた業とも言えるだろう。ハナを主張し切ったあの行動が、今年の小倉大賞典のハイライトだった。

なお、降着となったマイネルスターリーに騎乗していた三浦騎手は、4日間の騎乗停止処分を受けることとなった。先月11日に史上最多となる9頭の落馬事故で騎乗停止4日となっていた三浦騎手は、処分明けから復帰2週目にして再び騎乗停止となってしまった。

パトロールビデオを見ると、決勝線手前でマイネルスターリーが急に外にヨレて、ナリタクリスタルと、その外から迫っていたダンスインザモアの進路を妨害している。では、そこまでの斜行に至った理由は何だろうか。

まず、残り100mを過ぎたあたりから、マイネルスターリーが徐々に外にヨレ始め、後続のナリタクリスタルの進路に入り始めるが、ここではまだ降着に至るほどの斜行ではなかったと思われる。

レースは、前(オースミスパーク)を捉えられるかどうかのところで、三浦騎手は左ムチを入れ続けたが、マイネルスターリーはゴール直前でさらに外側にヨレて、決定的な斜行を犯してしまった。

その理由は「手前を替えたこと」だと思われる。

馬が走る時の映像をいくつか見ると、先に着地する前脚が右と左でそれぞれ違うことがわかる。右前脚が先に着地する場合を「右手前」、逆を「左手前」と言うが、1頭の馬がひとつのレースを走る時、普通は何回か手前を替える。それは先に着地する脚に負担がかかって疲労が溜まるためで、手前を替えることによって消耗の少ない脚を使うことができ、馬が再度加速することができるわけだ。これは騎手が指示して替える場合もあるが、レースで消耗した馬が自ら苦しがって替える場合もある。

パトロールビデオを見ると、それまで左手前で走っていたマイネルスターリーが右手前に替えた瞬間、急に外にヨレていることが見てとれる。実際、手前を替える瞬間は馬が体勢を崩したりしがちで、特に消耗した馬はその程度も大きく、危険を招く場合がある。

実は、昨年の秋華賞でのブエナビスタの斜行(詳しい解説は本誌09年12月号に掲載)も、先日の9頭落馬事故(本誌3月号掲載予定)も、馬が手前を替えた際に起こった事象なのだ。

前の馬を差せるかどうかの際どいところで、勝負にこだわった結果ではある。しかし、後続から他馬が迫る中で、右にヨレる馬に対して左ムチを入れ続けたのは不注意と言え、ダンスインザモアなどは最速の上がりで前を追い詰めていただけに、被害は大きかった。降着処分は当然の判断だろう。

昨年から重賞での降着が頻発している。特に注目度の高いレースでは、こういった事例ができる限り少なくなるように祈りたいものだ。