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『心臓の音が良い馬は走る』というのは本当か、聞いてみました
2010.2.18

先週も土曜日の中京1Rでスピールナカヤマが未勝利戦を勝ちまして、今年の5勝目を挙げることができました!

実は、その勝利こそ、前回の対談に出ていただき、またいつも調教を手伝っていただいている(小野)次郎さんの尾関厩舎初勝利だったのです。

半信半疑だったというのが正直な思いでして、いやぁ、声が出ましたぁ。中京の直線があれほど長く感じたのは久しぶりです(苦笑)。

こういう言い方をすると、批判される方もいらっしゃるかもしれませんが、同じ勝つのなら、毎日一緒に調教に跨っている騎手と勝ちたいと思うのは本音ですし、ほぼ毎日ように、暑い日も寒い日も一緒に頑張っているわけですから、そう思うのはある意味自然なのではないでしょうか。

いやぁ、本当に嬉しかったですし、良かったと思います。

さて、今週は、山嵜獣医との対談の最終回となります。それではどうぞ!

[西塚信人調教助手(以下、西)]西塚厩舎の時、あるベテランの厩務員が、背中に疲労が溜まりやすい馬を担当していて、追い切りでガタガタになると、獣医さんに頼んで注射針だけを刺してもらっていたんですよ。そこから3日間くらいは運動のみに抑えて、4日目に乗るとこれが不思議とシャキッとしていたのには、最初は本当に驚かされました。あれも筋注と言えば筋注の一種ですよね。

[山嵜将彦獣医師(以下、山)]広い意味ではそうですね。さらにお話しすると、使ったのが注射針であって、針治療に用いる針と効果は同じことです。ただ、針治療は行うが、筋注は避けてほしいという方もいらっしゃいます。

[西]えっ、同じですよね。

[山]そう思うのですが…。

[西]そう言えば、針が好きな厩舎もあると聞きますが、どうなのですか?

[山]ご自身で針治療を受けて、改善したという経験を持つ方々は、積極的だったりします。

[西]僕も腰痛を患っていたことがあるのですが、神経節ブロック注射の治療を受けて、完治したのです。筋注ではありませんが、幹部である痛みを感じる神経に消炎剤を打ち込むということですよね。

[山]そうですね。

[西]馬で言えば、トウ骨の痛い部分に直接打ち込む注射ですよね。

[山]そうです。

[西]僕が経験したブロック注射については、癖になるからやりすぎない方が良いという人が結構多かったんですよ。でも、痛くなった時に一度打って良くなると、そのまま行けてしまう。極端な言い方をすると、効果さえあれば1回のみということですよ。

[山]症状にもよるのですが、ペインクリニックという治療方法で、麻酔の一種を投与していることが多いのです。作用時間は30分から40分とされるのですが、どのくらい効果がありましたか? もちろん個人差はあるものですが。

[西]僕の場合は、最初は1ヵ月くらいだったかなぁ。いや、それ以上かもしれません。とにかく痛くて、どうしようもなくて、最初に病院に行って注射をして、そのあと痛みとしてはそれほどでもなかったのですが、悪くなるのがイヤで2回目に行って、結局それっきりです。

[山]不思議ですよね。西塚さんのケースを分かりやすい言い方にすれば、局部に30分程度作用が継続する薬を注射することで痛みを取り除いただけですよ。それなのに、体が自分で治そうとするわけですよね。


[西]そういうことですよね。

[山]痛みがあると、そこにある血管が収縮してしまったりもしますし、血流が行かなくなったりもします。それらが脳のストレスとなってしまって、治せないということになってしまうこともあるということなのです。

[西]個人的な感覚を言えば、痛みがなくなると、かばうことなく動かせたり、動けたりするじゃないですか。それも良いのかと思うのですよ。

[山]そういうことです。しかも薬の作用時間としては30分ですからね。それで改善が見られたわけですから、痛みという症状に対しての治療において、取り除いてあげるということは有効な手段のひとつだと考えます。

[西]馬も同じじゃないかと思うんですよね。

[山]同感です。ましてや競走馬はトップアスリートですからね。消炎剤が嫌われる傾向もありますが、有効な治療方法のひとつであると考えます。

[西]ペインクリニックという治療方法が存在して、効果が確認されているわけですから、そこまで嫌われることはないと思うんですよね。


[山]馬も痛みのストレスを取り除いてあげるだけで、全体的なコンディションが改善することがありますよ。

[西]確かに、動かせなかったところを動かせるようになるだけで、気分が違いますよ。癖になるほど消炎剤を打つということではなく、適切だったら大きな効果を得られる可能性が高いと思うのですよね。

[山]症状や個体差にもよりますが、適切かつ適量を投与することで大きな効果を得られるケースは多いと言えるでしょう。

[西]聞くところによると、厩舎によっては、効果があるとされるAという薬を、あるタイミングで打っているというところもあるようですが。

[山]あります。詳細については避けますが、効果は大きいという感覚を持っています。そのことは置いておいて、話を戻しましょう(笑)。痛みを取り除いてあげることで、痛みによるストレスも取り除くことができるわけですから、個人的には有効な治療方法のひとつであると考えています。

[西]以前に筋注の話をしたら、「安易すぎる」とか、それこそ「プロじゃねぇ」というメールが届いて、凄かったんですよ(笑)。

[山]厩舎側もそうだとは思いますが、獣医としては、馬からのサインを適切に判断し、どれだけストレスを取り除いてあげることができるかというのは、大きなテーマであると考えます。そのストレスが、何に原因があるのかを見抜くということも、もちろん重要なのですがね。

[西]そういう部分が、最近は軽視されているような空気を感じますが、大切だと思います。

[山]あと、個人的には、血液の検査というのも、これからはより有効な手段というか、コンディションを判断する上でウエイトが増していくだろうと思っています。

[西]松永先生は血液検査もしますよね。

[山]そうですね。いま、いろいろなデータを取りながら、様々な分析をしたりしているんですよ。興味深いデータもあったりするのです。

[西]そうですか。

[山]調教後、あるいは1週間の終わりである日曜日など、摂取してデータ化しているのですが、疲労が蓄積するとある数値が高くなっていることが窺い知れたりするのです。また、肝臓の数値が上がったりするというケースもあったりするのですよね。

[西]人間なら飲み過ぎって感じですね(苦笑)。

[山]そういう数値が調教を進めていく上で、参考のひとつになりうる可能性もあるでしょうし、もちろん治療にあたる上でも、大いに役立つはずです。

[西]そういうことってありだと思うのですよね。

[山]同感です。個人的には、とても興味があります。ベストコンディションで競馬をしてもらいたいですから。

[西]肝臓ということで言えば、人間でも見た目で分かり難いとされていますからね。例えば歩様のようなわけにはいかないじゃないですか。

[山]やはり血液検査をして数値を測ってみなければ分からないですし、そもそも高い馬もいるかもしれませんので、1回ではなく数回に亘って検査した方が良いと考えます。

[西]なるほど。ロジユニヴァースも診察されているということですが、「この筋肉は凄い」というように、他の馬とは違うというような感触の馬はいるものですか?

[山]たくさんいますよ。ただ、じゃあ全部が活躍しているかというと決してそうではないので、これもまた難しいですよね。

[西]よく聴診器を当てて、心臓の音を聞かれますよね。『オープン馬の心臓』とか言われますが、凄い馬っているのですか?

[山]いますよ。

[西]心臓が良い馬って、やはり走っていますか?

[山]そうですね。ロジユニヴァースも、心拍数で言えば30から32くらいで、切れがあって、いわゆる良い心臓です。ただ、やはり心臓は素晴らしいのに、これでなぜ走らないという馬もいますし、逆に言い方は適切じゃないかもしれませんが、この程度の心臓でよくオープンで走れるなぁと思わせられる馬もいます。

[西]へえぇ、そんなもんですか。

[山]あと、これは個人的な感覚なのですが、鼻出血を持っている馬は心臓が良く聴こえる傾向があると思います。あくまで個人的な意見で、何の根拠もないのですがね。

[西]何か1頭、この心臓の音は忘れられないというような存在はいたりしますか?

[山]うんん……いろいろな馬がいましたからね。ジャングルポケットも良かったですよ。

[西]ジャンポケを診ていたのですか。

[山]函館に滞在していた時に診る機会に恵まれ、触らせていただきました。心臓の音もよく覚えていますが、気性の激しさは物凄く、いまでも鮮明に覚えています。あっ、あとはクィーンスプマンテです。聞くたびに良くて、スタッフの人たちは結果が出ていなかった当時は、『いつか走る』、『なんで走れないんだろう』という話をしていました。関西に滞在した時に診療していた先生も、『良いね』って言っていたみたいです。だから、北海道で逃げ切った時には、『やはり走る』と納得しましたよ。最近では、心臓の音ということで言えば、クィーンスプマンテが一番です。

[西]そんなに心臓が良かったんだぁ。いやぁ、今日はお忙しいところ、遅くまでお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。

[山]こちらこそ、上手くお話しすることができず、申し訳ありませんでした。

[西]読者の方から、また筋注以外の質問が届いた時には、ぜひお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

[山]僕でお役に立つことなら、協力させていただきますよ。

[西]よろしくお願いいたします。

[山]こちらこそ、よろしくお願いいたします。

5回に渡ってお送りしてきた山嵜獣医との対談は、いかがだったでしょうか。

西塚厩舎の時から、一緒に仕事をさせていただいているということで、接してきた時間も長く、幾度というピンチも一緒に潜り抜けてきていますので、信頼ということはもちろん、お互いに分かっている部分が大きいのも間違いありません。

ただ、個人的には今回対談をさせていただいて、接する機会が少ない獣医さんにも話を聞いてみたいと思いました。いずれ機会があれば、ぜひそういう対談もお送りできたらと思います。

それにしても、本当に食事をする暇もなく、今日もトレセンの中や近郊の牧場を走り回っている山嵜先生の姿を見ると、本当に大変だと思うと同時に、わが身がいかに恵まれているかと思ってしまいます。

さて、来週からは、柴山雄一騎手との対談をお送りする予定となっております。どうぞお楽しみに。

ということで、最後はいつも通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。