小島茂先生に「調教で攻める」意義を伺いました
2010.5.13
先週の土曜日、新潟10Rのわらび賞をノボプロジェクトが快勝しました!
今回も状態が良く、チャンスがあるはずだと思っていたのですが、実際に強い競馬をしてくれたと思います。
今回は、調教でこれまでよりも長めから乗るようにしていたのですが、そういう効果もあったのではないでしょうか。
次走に関しては、ユニコーンSを目指して調整されていくことになります。マイルという舞台にも高い適性があるように思いますので、楽しみです。
さて、今週は、小島茂之先生との対談の2回目となります。それではどうぞ。
[西塚信人調教助手(以下、西)]馬を調教していく過程では、勇気というか、攻めていかなければならない部分というのがありますよね。
[小島茂之調教師(以下、小)]クィーンスプマンテのエリザベス女王杯の前に、「どれくらいを目標にしているか?」とスタッフに聞いたら、「勝ちたい」と言うんですよ。俺自身も「もしかしたら」という思いはあったよ。ただ、あそこまでハッキリと「勝ちたい」と言われるとは、正直、思いませんでした。「それなら、いまの調教では無理。どの馬を負かそうと思っているんだって。あのブエナビスタだよ」と言って、最後のレースになる予定ではあるけれど、もっとハードなことをやらないと無理だという話をした。もちろん、あくまで故障をしないように馬を確認しながらではあったんだけれど、そこからいろいろやって、直前に栗東へ見に行った時には、ほぼイメージ通りになっていたんですよね。
[西]そうだったんですか。
[小]馬はきつい、ひょっとしたら音をあげてしまうかもしれない。でもやらせてほしいと言えるようになったら、もっと強くなれると思うんですよね。
[西]それができたら、厩舎として本当に強くなりますよね。でも、やりたいと言うのも簡単じゃありませんが、やれと言うのも簡単じゃないですよ。
[小]でも、そこを目指したいし、目指しているんだよ。
[西]攻めているということでいえば、ブルーミングアレーは相当やっているみたいですね。(編集部注・この対談はフローラSの週に収録しています)
[小]攻めています。よく耐えていると思います。
[西]桜花賞をスキップしていますよね。
[小]クイーンC を使った時点で、底を打っていたのですよ。未勝利馬だったら、即放牧という状態でした。ただ、あの馬は期待されている馬ということで、桜花賞を使えるのなら使いたいと思いましたし、どうやって、調子が落ちた馬を休ませずに引き上げて、好結果に持っていくかという技術も、これからは求められるという思いがあるのです。あと、こちらとしては、何とかなるんじゃないかという手応えもあったのですよ。何とか間に合いました。
[西]そうだったんですね。
[小]将来がある馬ですので、潰さないようにしなければならないわけですし、休ませても良いのですが、敢えて踏み込んでいくことで、プラスになるように踏み込んだつもりなのです。結果はわかりませんが、感覚としてそういう思いがあるのです。
[西]でも、それって難しくないですか?
[小]個人的には、火で焼いて、叩いて、水で冷やすということを繰り返すことで刀が強くなるように、馬も鍛えることで強くなると思っています。叩けない馬ならば仕方がないですが、できる馬だと思ったのですよ。もちろん、そこでパリンと折れてしまわないように気を付けながら叩いたつもりです。結局、中間一度、放牧に出させていただいているのですが、個人的には、もしオークスはダメならば諦めてもと思っています、という話をしました。ただ、何とかオークスは間に合うという状態ではあると思っていますので、あとは判断してください、と言ったのです。やれと言われればやりますとね。
[西]そういうやり取りって、外からは分からないですからね。
[小]嬉しかったのは、このような状態で戻してもらえるとは思いませんでした、と言われたのですよ。
[西]もっと酷い状態を想像していたのでしょうね。
[小]結局、動かして何とか間に合いそうだということになったので、あとは頑張りますということになったのですよ。正直、良くなったというよりは、これからまた叩いていけるという状態で戻していただいたので、叩かせていただいているのです。
[西]いやぁ、オークスが楽しみですね。
[小]とにかく頑張るだけですよね。ただ、距離が延びてのアドバンテージというのはあると思っています。
[西]あと、プロヴィナージュもヴィクトリアマイルですよね。
[小]そうです。
[西]ここから小島厩舎旋風が吹き荒れるんじゃないですか。
[小]頑張りますよ。
今週はここまでとさせていただきます。
対談でも名前が出たプロヴィナージュが、今週のヴィクトリアマイルに出走するということで、ぜひ頑張っていただきたいと思っています。
対談の中で、先生(調教師)と調教助手とのやり取りが出てきていますが、極論から言えば、馬のことは誰にも分からない部分というのがあるのです。だからこそ、騎手の方々も含めて、馬に直接携わっている人の感覚や言葉が大切なはずで、小島先生はそういう部分をよく覚えているなぁと、今回の対談を通じて、改めて感心させられました。
それと、コミュニケーションの質が高ければ高いほど、仕事の質も高くなるということも教えられました。
例えば、調教に乗っていた人が「右の出が良くない」と口にしたとします。多くの場合は、そこで、治療してもらうなどという対応になるのでしょう。でも、小島先生は、それで終わらないわけですよ。
肩なのか、それとも膝下なのか。あるいはトモなのか。いや、調子が良い時と比べてどうなのかなど、コミュニケーションを惜しまず取ることで、ありとあらゆる可能性を探ろうとしていくのです。
そういったことの積み重ねが、小島茂之厩舎の、特に大きなレースを含めた上のクラスでの好成績につながっているのだと思うのですよ。
見習わなければと強く思いますし、そこが小島茂之先生の凄さでもあるのでしょう。
今回、たくさんの反響をいただきましたが、激アツな方なので、そういった面が読者のみなさんにも伝わってくれればと思います。
ということで、最後はいつもの通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。