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最強牝馬2頭の対決は、競馬人気を大いに盛り上げていきそう
文/後藤正俊(ターフライター)

今年が5回目、もっとも歴史が浅いG1のヴィクトリアマイル。牝馬産駒の売却低迷が深刻な問題になっている生産界からの強い要望と、売り上げ確保のためには「G1」の看板がさらに必要だと感じていたJRAの思惑が一致して創設されたものの、ファンにしてみれば「安田記念の3週間前に、同じ東京マイル戦でG1を開催してもメンバーが分散して盛り上がらない」と感じていた人が多かったことだろう。

昨年の第4回は、ドバイ帰りのウオッカが②着以下に7馬身差をつける圧勝劇を演じて観客をどよめかせ、勢いを駆って“本番”安田記念も連勝したが、いまにして思えば、7馬身差の②着は平坦コース以外ではほとんど実績がないブラボーデイジー、2番人気だったカワカミプリンセスもピークを過ぎていた印象だけに、ただ1頭だけ、スーパーG1級だったウオッカの圧勝は当然と言えば当然。レースレベルがG1にふさわしかったかどうかは疑問だった。

だが、今年は様相が違った。ドバイ・シーマ・クラシックであわやの②着となったブエナビスタ、本番のドバイ・ワールドカップこそ⑪着に敗退したものの、そのトライアルだったマクトゥーム・チャレンジ・ラウンド3で、本番優勝馬グロリアデカンペオンを差し切ったレッドディザイアの4歳牝馬2強が、揃って凱旋出走を果たしたからだ。

この2頭が日本の現役最強古馬であるばかりか、ドバイでの活躍で国際的な評価が極めて高い2頭なのだから、レイチェルアレクサンドラとゼニヤッタの対決とまではいかないまでも、その直接対決は世界的にも注目を集めている。この2頭が出走したというだけで、「G1」としての価値が十分あるレースとなった。

結果はブエナビスタの見事な差し切り勝ち。先行馬が圧倒的有利の超高速馬場状態で、直線大外から強襲して粘り込むヒカルアマランサスを一気に交わしたレース内容は、首差の着差以上に横綱相撲。ドバイからの帰国後、やや急仕上げだったためか、448kgの馬体は細く見えたが、8分の仕上がりでも格の違いを見せつけたレースだった。

一方のレッドディザイアは直線で伸びを欠いて④着。マイル戦はこれまで4戦全勝だったブエナビスタに対して、レッドディザイアは2戦1勝②着1回。マイル適性でブエナビスタに大きなアドバンテージがあったことは、単勝人気(ブエナビスタ1.5倍、レッドディザイア5.7倍)にもはっきりと表れていた。

ブエナビスタから0秒1差は想定内の結果だし、大善戦だったとも思える。ともに力を出し切った見応えのある“直接対決”となったし、レッドディザイアにとって適距離の宝塚記念では、ブエナビスタに雪辱を果たすシーンも十分に考えられる。今後も続くであろう、最強牝馬2頭の対決は、ウオッカVSダイワスカーレットの名勝負のように、競馬人気を大いに盛り上げていきそうだ。

安田記念との有力馬分散という問題は解決されないが、これだけ名牝が相次いで誕生している「牝馬の時代」が到来した一因は、古馬牝馬G1路線の整備にもあったはず。その面では“G1ヴィクトリアマイル”を評価することができるのかもしれない。

ただ、心配な点もある。いまの東京芝コースは異常なほど時計が速く、NHKマイルCは1分31秒4の日本レコード、京王杯スプリングCも1分19秒8のレコードとなった。

確たる逃げ馬が不在だったヴィクトリアマイルは、NHKマイルCほどの超ハイペースにはならなかったため、昨年のウオッカと同じ1分32秒4の決着だったが、ブエナビスタの上がり3ハロンは33秒5を計時した。

中山のニュージーランドTを1分32秒9で勝ち、NHKマイルC④着のサンライズプリンスが屈腱炎を発症したのも、高速馬場の影響を完全に否定することはできないはずだ。

ブエナビスタレッドディザイアは日本競馬にとって貴重な財産。高速馬場が原因となり、故障を発症するようなことがあってはならない。あまりにも時計が速くなることが予想される時には、芝丈を長くするか、散水をするなどして、極力、脚部に負担の少ない馬場に仕上げる工夫が必要かもしれない。