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高橋先生に障害馬の奥深さを語っていただきました
2010.7.29

先週は、土曜日の函館メインレースとなるTVh杯にエフテーストライクが出走して、7着という結果となりました。

ノリさん(横山典騎手)に乗っていただけるということで、どんな競馬になるのかとても楽しみに、そして興味深く観ていたのですが、好位で進んでいったのには正直驚きました。

でも、楽に付いていきましたし、4コーナーでは見せ場十分という感じで、エフテーストライクの新たな一面を見ることができたと思います。

着順こそ7着と掲示板を外しましたが、着差がそれほどあったわけではありませんし、一戦一戦しっかりと仕上げて出走させていくことができたら、良い結果が出てくれるはずと信じて、今後も頑張ります。

今週は、高橋義先生との対談の2回目をお送りします。それでは、どうぞ。

[西塚信人調教助手(以下、西)]高橋先生のところ(の馬)で、いちばん印象にあるのはハイヤーザンヘブンなんですよ。

[高橋義博調教師(以下、高)]なぜですか?

[西]西塚厩舎にビジネスサイクルという馬がいて、よく対戦していたんです。

[高]あっ、そうですか。

[西]宗像さん(騎手)がハイヤーザンヘブンに騎乗するので、ビジネスサイクルの鞍上が浮く、ということがよくありました。ですので、なるべくぶつからないように、チェックをしていたんです。

[高]そうだったんですね。

[西]で、(ビジネスサイクルの)鞍上が浮くと、大庭になるんですけどね(笑)。

[高]なるほど。ハイヤーザンヘブンが(中山)大障害に出走した時(07年)は、宗像さんが塞がっていて乗ってもらえず、その時は大庭に頼みました。


[西]そうでしたか。

[高]ヘブンは大変に稽古が難しい馬なのです。それで、稽古が下手な大庭ということで、『一度も稽古には乗せないけれど、俺を信じてくれ』と言って、テン乗りで大障害へ出走という形になりました。

[西]えっ!? 読者の方々には伝わり難いかもしれませんが、あり得ないことですよ。大障害にテン乗りで出走するということは。

[高]『信じてくれ。この馬は飛越が上手い。信じて行けば、キッチリと飛んでくるから』と言いました。

[西]では、攻め馬では宗像さんが飛ばしたのですか?

[高]当該週は飛ばしていません。

[西]読者の方に説明させていただきますと、一般的には競馬の追い切りの時に直線を飛ばすとか、北馬場正面で3つを飛ばしてから追い切りを行うとか、あるいは金曜日にひとつふたつ障害を飛ばすという感じなのです。それを飛ばさなかったわけですね。あの馬だけですか?

[高]いえ、ウチはたいていそうです。

[西]そうですか。それにしても、大障害のテン乗りは衝撃ですね。大庭はレース後に何と言っていましたか。

[高]『上手かったです』と言って降りてきました。だから『言った通りだったろう?』と言うと、『はい』って。

[西]そうでしたか。

[高]細かい話をしますと、ハイヤーザンヘブンは宗像さんが乗って新馬戦を勝っているのです。馬主さんも期待されていたのですが、そこからは成績が伸び悩むこととなってしまいました。いまにして思うと、能力を出し切れていなかったように思うのですが、第二の道として障害へ転向することとなったのです。

[西]なるほど。

[高]個人的に、宗像さんというのは、慎重な障害騎手だと思うのですよね。

[西]つくり方がそうですよね。

[高]そうです。その宗像さんが(ハイヤーザンヘブンに騎乗して)「次、北へ行きましょう」と言って、次はコースの障害へ行きますと、パッパ、パッパと進めて行っていて、とにかく驚かされるくらいスピーディに障害試験に合格したのですよ。いまにして思えば、本当に上手でした。

[西]最初から上手だったんですね。でも、そういう馬たちの中にも、実際に競馬に行くと力を出し切れないケースもあったりしますが…。

[高]ヘブンは最初から上手でしたし、競馬でもそのまま上手に飛んでいました。

[西]未勝利を勝った時の勝ちっぷりなどは、特に印象に残っています。

[高]最初の頃は、中山で結果を出していたのですが、ジョッキーは東京の方が良いと言っていたのです。あとになってからは、その言葉通り、東京の方が良いと思いました。

[西]そうですか。あと、先生のところでは、バシケーンの印象も強いです。現在進行形ですが、未勝利の時からチェックしているのですよ。大庭が乗って着に来ていた印象があります。


[高]大庭も何回か乗っていますが、(障害の)稽古から試験まで簑島(騎手)が乗っていたのですよ。3歳の夏前から練習していて、障害試験を受かったのです。デビュー戦が夏の福島で、初めの障害で体を捻って飛んでしまって、『あぁ、落ちてしまった』と思ったのを横にしがみ付いて。結果的には、ようやく走ってきたというレースでした(結果8着)。

[西]こういう言い方をしたら失礼ですが、平地の成績がふた桁(着順)ばかりで、しかも短いところを走っていて、正直、障害向きという印象がありませんでした。最初の障害レースでの斜飛を見ても、大障害に出走するまでになるとは、なかなか思えないですよ。でも、本当にステップアップしていったのでしょうね。

[高]本当にそういう馬なのです。それを可能にしたいちばんの大きな要因は、馬主さんの執念、諦めない執念ですね。シルクジャスティス産駒ということで、奥手で先々変わってくるだろうということもあったかもしれません。でも、なにせ3歳5月までの平地成績が散々でしたので、障害にしたからすぐにどうのということは思えませんでした。

[西]普通はそうですよね。

[高]ただ、平地で走っていた時、大庭が降りてきて、『先生、この馬、背中といい、手応えといい、こんな着順じゃないですけど』と言うのですよ。「でも、何回やってもふた桁(着順)だよ」っていう話をしたことがありました。そこからどうするかを悩むのが僕の仕事で、僕が「障害を飛ばしてみましょうか」と進言して、始まったのです。

[西]障害馬にしていく段階で苦労したことも多かったですか?

[高]初めは何をやっても下手でした。簑島が付きっきりでやっていて、最初はできないのですが、2回、3回と経験すると、確実に上手くなっていったのですよ。角馬場でこれだけ飛ぶことができるのだからと、大きなコースの障害を飛ばせると、最初はものすごく下手なのです。でも、2回、3回と飛ばせると形になっていくのですよね。

[西]そういう意味では、グランドジャンプを一度経験したことは、暮れ(中山大障害)に向けて大きいでしょうね。

[高]そうですね。

[西]個人的には、バシケーンが(中山)グランドジャンプに出走する際、先生の共同インタビューに感動したんですよ。『バシケーンがひとつひとつクリアしてきた馬なので、初めてのコースとなるあの舞台がどうなのかということは、やってみなければわからないし、自信もない』というような発言をされていらっしゃいました。

[高](自信は)ありませんでしたよね。

[西]僕は、いままで聞いたり、読んだりした調教師のコメントで、これほどリアリティを感じたことがなかったのですよね。ものすごい本音だったと思ったのです。

[高]そうでしたか。

[西]高橋厩舎と言えば、障害というイメージも持っています。

[高]最初に所属していたのが大久保勝之厩舎で、通称「大勝厩舎」と言われていたんですが、そこでは秋福(秋の福島開催)が終わりますと、3歳未勝利馬を障害に仕立てていくのがほとんどだったのです。障害厩舎だったわけですよ。ただ、当時は、障害厩舎と言われるのが嫌でね。ひとつ低く見るような風潮がありまして、助手同士で話をしていても、そういう雰囲気がハッキリとありました。

[西]あっ、すみません…。でも、これほどまでに走るのですから、『障害は俺に任せろ』って言って良いくらいだと思いますが。

[高]任せろですか(苦笑)。ただ、障害に関する感覚というのか、そういう部分は大勝先生から受け継いだものだろうと思いますよ。かつては障害馬はあまりつくりたくはないと思ったりしましたが、いまの時代はそういうことを言っていられませんからね。

[西]未勝利で抹消するということは、預託頭数が1頭減ることにもなりますしね。

[高]馬主の方々の中にも、「1頭を大切に、楽しんで」という傾向が強くなってきているようですし、やはり障害をやってダメですという方が仕事をした感覚になるのも確かですね。

今週はここまでとさせていただきます。

読者の方から質問が届いているので、お答えしたいと思います。その質問とは、先日、カノヤザクラがレース中に脱臼し、予後不良になった件について、「人間であれば脱臼は入れ直せば治ると思うのですが、馬の場合はそうはいかないのでしょうか」というものでした。

獣医さんに説明を求めたところ、競走中に発症した馬の脱臼は予後不良だと思っていただいて差し支えないそうです。例えば、球節が抜けて骨が皮膚を突き破って表に出てしまうなど、速度が出ている状況のなかで脱臼を発症すると、二次的なケガを負って被害が拡大してしまうことになるからだということです。

もし、何とか修復することができたとしても、馬の場合には蹄葉炎を併発する可能性が高くなるため、安楽死という処置が取られるのです。

これはあくまで獣医さんとの話で出たことですが、おそらくこれまでに脱臼した競走馬を何とか救おうと、世界中で試みられてきているはずです。ただ、残念ながら成功した例がほとんどないということなのだと思います。

他にも、また何か質問があれば、メールをいただければと思います。

ということで最後はいつも通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。