牝馬の活躍馬が多いのは? 高橋先生に要因を伺いました
2010.8.5
先週の我が尾関厩舎は、3着となったミヤビヘレネ、そして5着となったフラワーロックと、2頭の新馬たちが頑張ってくれました。
嬉しかったのですが、あそこまでいったら勝ちたかったぁというのが本音です。
個人的には、2頭とも能力を感じさせられる存在なのですが、跨ってこれは素質があると感じさせられたこともあり、ミヤビヘレネは初戦から良い走りを見せてくれるんじゃないかという思いがありました。
実は、尾関厩舎所属となる前、というよりも、この世界に入ってからというもの、新馬勝ちの経験がまだないのですよ。
まだまだ楽しみな新馬たちが入厩してきますので、ぜひ新馬勝ちを目指して頑張っていきたいと思います。
それでは、今週は、高橋義博先生との対談の3回目になります。どうぞ。
[西塚信人調教助手(以下、西)]高橋先生の管理馬では、牝馬の活躍も目立ちますよね。「高橋厩舎は牝馬が走る」というイメージも持っているのですが?
[高橋義博調教師(以下、高)]それは誤解でしょう。
[西]でも、プリンセスメモリーやレディインブラック、カツヨトワイニングなど、牝馬のクラシック挑戦が多いではありませんか。
[高]確かに、これまでにウチでクラシックに出走した3頭はすべて牝馬です。なぜかというと、優秀な牡馬をお預かりしていないからという、単に理由はそこだと思っています(笑)。
[西]そんなことはないでしょう。でも、3頭ともそれほど大きいタイプではないですよね。そういう馬の場合、僕たちは、「飼い葉を食べない、もう少し体があったなら」と思うわけですが…。
[高]レディインブラックは440~450キロ台でしたが、プリンセスメモリーは一度も400キロになっていません。カツヨトワイニングも、最近、ようやく420キロ台になりましたけど、3頭とも小さいですよね。
[西]結果的にでも構わないのですが、成功する極意と言いますか、なぜそういう馬で成功を収めているのか、教えていただけないでしょうか。ひょっとしたら、「バネがあるんだけど」と言われているものの、他の厩舎では結果が出ない馬が、高橋厩舎所属だったら走るかもしれない、と思うわけですよ。
[高]ウチに来れば走る、と胸を張れれば良いのですが(笑)、僕自身はそういう意識はまったくありません。
[西]攻め馬が弱いとか、そういうことってあるのでしょうか?
[高]どうでしょうね、分かりません。ただ、攻め馬について言うと、ウチは全体的に強くはないと思います。僕が「目一杯追ってほしい」と言うことは、まずありません。特定の馬に対して、年に1~2回言うことがあるかもしれない、という程度ですから。
[西]そういうイメージはあります。
[高]人間の筋トレでも、持久力でも、100%を要求する必要はないと思っているのですよね。筋肥大も、心臓の肥大も、循環器の良化も、85~90%で十分であると考えているのです。よく藤沢先生が、ご自身を「馬なり調教師」とおっしゃっていますが、本当はそれに自信があって、これの方が良いと考えていると思うのですよ。人間でも馬でも、マックスを求めると、キッチリできたなら効果はあるのでしょうが、反面、リスクも大きくなるわけです。そこで100%を求めた時と、90%の時の効果を比較したら、それほど大きな差はないはずですよ。でも、危険度ということで言えば、明らかに異なるのなら、毎週の調教で100%を課すべきではないと考えているのです。
[西]そのあたりの加減が、小さい牝馬と合うのでしょうかね?
[高]さあ、どうでしょう(笑)。
[西]あと、先生のところは、8の字でダグをやられていますよね。あれは、口向きだったりを狙ってのことなのですか?
[高]開業する時に、どのように馬をつくっていくかということに関して、上がり運動重視という方針を決めました。前運動は30分でも構わないと言っていますが、実際はそれよりも短い。でも、上がり運動はしっかりと40分やっています。基本的には、(前運動を)20分や25分くらいで馬場に向かってしまっても、あまり言うことはありません。でも、上がり運動に関しては言いますよ。
[西]そうだったんですね。
[高]同様に、攻め馬のパターンでも、僕が注意していて、『これだけは守らなければならない』というパターンがあるのです。
[西]それはどんなパターンなのですか? お話ししていただけますか?
[高]観ていれば分かると思いますが(笑)、速かろうが、遅かろうが、キャンター、ギャロップの後に、必ずダグが入るのです。ダグを1000m踏みます。それは、単に上がりの歩様を僕が確認するということだけではありません。助手時代の経験則から、スクミやコズミが少ないと感じるのです。ですから、上がり運動中心なのです。
[西]マイネルさんはそういう方針だと聞きます。
[高]そうですね。上がり運動重視ということです。馬属というのは草食獣ですから、いざという時には準備運動なしに走るのです。いかに上がりを楽にしてあげるにはどうしたら良いか。それは、溜まった乳酸を使い切ってあげることなのです。
[西]そのためのダグということですね。
[高]そうですし、上がり運動も長くということなのです。これは、なかなか理解されませんけれど。
[西]でも、いま、そういう理論を唱えているトレーナーの方も増えていらっしゃいますよね。ストレッチをして、いきなりトップスピードというか、マックスの力を出すということらしいですよね。
[高]ストレッチはするべきですよね。
[西]それが8の字ということですかね。
[高]そうとは限りません。8の字というのは、僕がスタンドで見ていて、両手前を確認できて、把握しやすいということもあるのです。いろいろな意見もあるのでしょうが、僕はウチのスタッフに対して、常々、『私に情報が集まらなければならない』と言っているのですよ。スタッフが分かっているだけではなく、それを私が把握していなければならないし、そうなってこそ情報の意味があるのです。
[西]その通りだと思います。いろいろ教えていただいて、ありがとうございます。あと、もうひとつ先生にお尋ねしたいことがありまして、ブリーズアップセールの調教師紹介のページで、唯一、預託料の金額を掲載されていらっしゃいましたよね。定額システムとなっていたのですが、正直、僕としては、これで大丈夫なのかな?という印象を受けたのですが…。
[高]だから青色吐息なのです(笑)。
[西]かなりギリギリのラインだなぁと思ったんですよね。
[高]開業3年目に変更したのですが、それまで過去2年間のデータを基に算出しました。1日いくらというスタイルにして、ただし競馬に出走した場合には、経費について請求させていただくこととしたのです。その時に、日本国内どこへ行っても一律としました。中山に行っても北海道に行っても同一にしたのです。
[西]ちなみに、おいくらですか?
[高]1日5000円です。そこで考えたのは、北海道に1ヵ月出張した時に、いくらまでなら大丈夫なのだろうか、ということです。
[西]でも、そうなると東京だと赤字じゃないですか?
[高]その通りです。でも、1日1万7700円と算出したのですよ。これ以上はもらわないことにしました。
[西]治療費と装蹄費は、どうされているのですか?
[高]手当の関係上、それはいただくことにしています。基本は1日1万7700円。それ以外に競馬に出走した場合、1日5000円の出張費はいただきます。あと、治療費と装蹄費はこれに含まれません。
[西]馬具とかはどうされているのですか?
[高]馬具は、馬が退厩する時に付けて出しませんので、自腹です。勝負服も自分で支払っているので、たとえ転厩しても付けません。
[西]つまり、1万7700円と競馬に出走した際の1日5000円の主張費で、すべてを賄われているということですね?
[高]そういうことです。ただ、時間が経つと人件費が上昇するのです。1万7700円ではやれなくなってきてしまいました。そこで挨拶文を書かせていただいて、値上げをさせていただいたのですよ。他の先生とも話をすると、やはり厳しく、ウチは500円上げさせていただき、1日1万8200円でやらせていただいてます。
[西]それでもギリギリだと思います。1ヵ月で全部込みで60万円くらいですか。
[高]治療費や装蹄費も含めて、だいたいそうですね。
[西]補助飼料や注射なども1万8200円に含まれているのですよね?
[高]はい。僕が良いと思ってやっていることですから。
今週はここまでとさせていただきます。
さて、今週の月曜日(2日)に、臨場のために盛岡競馬場に行ってきました。久しぶりだったのですが、ストークフィールドが7着、メイプリマベーラが3着と、勝つことができませんでした。
だからということではないのですが、結局、休みなしということで、いやぁ、食事にも気を付けなければと思うほど、疲労を感じています。
弱音は吐きたくありませんし、いままでも吐いた記憶はあまりないのですが、暑さも無関係ではありません。なにせ、朝7時にすでに29度だったりするわけで、やはり体力を奪われていっているのだろうと思います。
喉の渇きもまったく違って、クピクピと麦のジュースが欲しくなりますし(苦笑)、馬も鞍などを外すと、水を探しますからね。
みなさんも暑いなか頑張っていらっしゃると思います。お互い頑張って夏を乗り切りましょう。
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