今週からは菅原隆一騎手との対談がスタートします!
2010.8.26
土曜日の札幌6レースで、リズミカルステップが未勝利戦(芝1200m)を勝ち、今年の10勝目を挙げることができました。
厩舎にとって、この夏の北海道シリーズでの初勝利でしたので、本当に良かったですよ。
ただ、北海道と新潟ですので、中には2ヵ月近く触っていない馬たちがいることもあり、イメージが湧かないと言いますか、何か妙に実感が湧かない部分があったりもします。それでも、1勝は1勝ですし、それは嬉しいですよね。
さて、今週からは、菅原隆一騎手との対談がスタートします。今年デビューを果たした同騎手がこの世界を目指した理由をはじめ、現在の心境など、様々な話を聞きましたので、お読みいただければと思います。それでは第一回目をどうぞ。
西塚信人調教助手(以下、西)今回は、菅原隆一騎手に来ていただきました。今日はよろしくお願いします。
菅原隆一騎手(以下、菅)よろしくお願いします。
[西]まず最初に、なぜ菅原君なのかという読者の方もいらっしゃるかもしれませんので、説明させていただきます。西塚安夫の父である西塚十勝元調教師の弟子であったのが、菅原君の父である菅原隆明元騎手だったのです。僕が親父(西塚安夫元調教師)に付いて競馬を観にいくと、だいたい騎乗していたのは菅原君のお父さんだったんですよ。
[菅]そうだったのですか。
[西]極端な言い方をすると、お父さんじゃなければ、岡部さんか柴田政人先生でした。本当に身近な騎手がお父さんだったのですよ。だから、菅原君が騎手候補生となって、トレセンに実習に来るという時には、ウチの親父は物凄く喜んで、「調教をお願いしよう」と言っていたのです。
[菅]そうだったのですか。ありがとうございます。
[西]唐突ですが、いま18歳なんだよね?
[菅]そうです。3月で19歳になります。
[西]92年生まれかぁ。ということは、13歳の差があるわけですね。今日はもちろんノンアルコールですね(笑)。
[菅]はい。ウーロン茶をいただきます。
[西]デビューして約半年が過ぎようとしていますが、騎手になってみてどうですか?
[菅]実際、大変だなぁと実感しています。言い換えると、父親が何をやっていたのかということがよく分かります。
[西]同じ騎手だからね。ただ、お父さんの時代とは騎手を取り巻く状況も違ってきているよね。昔は所属厩舎とそれ以外の系列や調教を手伝っている厩舎の馬に騎乗させてもらえたようですが、いまはそういう感じではないからね。
[菅]そうですね。
[西]いつ頃から騎手になりたいと思ったのですか?
[菅]真剣に目指したのは中学1年生でした。
[西]それまでは、まったく意識にはなかったのですか。
[菅]いえ、乗馬も始めていましたし、なりたいという思いはあったのですが、真剣にという感じではなかったです。
[西]乗馬はいつから始めていたのですか?
[菅]小学5年生です。その年齢にならないと乗せてもらえないんですよね。
[西]あっ、そうか。美浦の乗馬苑は小学5年生からじゃないと乗せてもらえないんだ。お父さんは、菅原君が何歳の時に引退したのかな?
[菅]まったくわかりません。乗っていた頃の話については触れたことがないのです。
[西]へぇ、それは意外。記憶にもないんだ?
[菅]そうですね。親に抱っこされて競馬場には行っていたらしいのですが、記憶にはありません。父親の現役時代については、いろいろな人から伝え聞くことでしか知りません。
[西]どういう話を聞いたりしているの?
[菅]西塚十勝先生に「絶対前に行け」と言われて、ウチの父親がステッキとゴーグルを取り上げられた話がいちばん印象に残っています。
[西]それは俺も聞いた。お父さんからね(笑)。
[菅]あとは、競馬に乗る時に、ステッキではなく、腕を使わされたという話なども聞きます。
[西]みんな同じような話を聞くわけだね(笑)。騎手になって保田厩舎に所属したことでお父さんと働いているわけですけど、どうですか?
[菅]家にいる時と仕事の時では違うので…。実習で厩舎にお世話になるのですが、右も左も分からないですし、それこそ現役の競走馬に乗ること自体が初めてで、当然、対処方法も分からなかったりして、よくお怒られました。
[西]隆明さんが怒るんだぁ。
[菅]本当によく怒られましたよ。『その程度の馬も乗れないのか。お前に乗せられる馬はいない』などとも言われました。
[西]へぇ、そうだったんだ。まあ、競馬学校の馬とは違うからね。
[菅]学校の馬は決まっていますけど、トレセンでは様々な馬がいるわけで、それだけ対処法を知っていなければなりませんよね。
[西]状況も違うしね。
[菅]そうですね。馬そのものの数も違いますし、競馬学校では、厩舎からすぐに馬場に出て、回って終わりですが、(トレセンでは)厩舎回りの運動場、地下馬道、角馬場と通っていきますし、それぞれの状況で違った対応が求められたりしますからね。
[西]言われてみれば、競馬学校には角馬場もないしね。馬もまずパニックにならない。行く順番も決まっているからね。
[菅]当たり前ですが、入厩してきたばかりの馬たちは右も左も分かりませんよね。そこで、教えてあげるように対応しなければならないわけで、最初は上手くできませんでした。
[西]そこでお父さんは細かく教えてくれたりはしなかったの?
[菅]聞きに行けば教えてくれました。でも、あちらから教えてくれたことはありません。
[西]そうなんだぁ。でも、いまにして思えば、親父が「厩舎実習に来たら、すぐに攻め馬に乗せたい」と隆明さんに言った時、あまり乗り気じゃなかったんだよね。たぶん、まだ何も分かっていないからという部分もあったんだろうね。あとは、ウチは歩様の悪い馬が多かったから、どこまでがセーフで、どこからがアウトというのが分からないだろうという部分もあったのかもしれない。
[菅]どうなんでしょうか。でも、いちばん最初に攻め馬を手伝わせていただいたのは西塚厩舎でした。
[西]あっ、そうだったんだ。でも、危ないというのは分かる。アブミを短くして乗っていて、もし躓いたら、アンチャンたちの多くは起こす余裕がなくて簡単に落ちてしまうからね。
今週はここまでとさせていただきます。
先週、預託料についてお話をさせていただいたところ、賞金の分担金があるだろうという方がいらっしゃいました。
現在、JRAでは、賞金の10%を調教師が、5%を厩務員が、それぞれ進上金として、給与以外に手にすることができるシステムになっています。
ただ、先週はあくまで預託料についての話がメインであって、進上金を含む厩舎の収入や我々の給与について話をしたかったわけではありません。あくまで預託料がどのくらいで、どのように使われているのかということを説明させていただいたのです。
故意に省いたわけではありませんでしたので、機会があれば預託料以外の部分についても説明をいたします。
毎日暑い日々が続きますが、今週も11勝目、それ以上を目指して頑張りたいと思います。みなさんも暑さに負けず、ともに頑張りましょう。
ということで最後はいつも通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。