4kgの斤量差が勝負の綾となったのかもしれない
文/村本浩平
先週、取材で出向いたサマーセール(新ひだか・HBA北海道市場で行われる定期市場)で、
ビービーガルダンの生産者でオーナーでもある、坂東牧場の
坂東正積代表と話をすることができた。
サクセスブロッケンの育成、調整にも深く携わるなど、育成牧場としても知られる坂東牧場であるが、特に
ビービーガルダンの所属する
領家厩舎との結びつきが強い。
特にこの北海道シリーズでは目立った成績を残しており、
函館2歳Sを勝利した
マジカルポケット、そして
ブリーダーズGCを勝利した
シルクメビウスが、レースまでの期間を坂東牧場で調整され、そして重賞タイトルを手にしている。
「領家先生は北海道シリーズで大事な管理馬を任せてくれるので、それに答える仕事をしなくては、という思いもあります。助手さんも時間を見つけては牧場に馬を見に来てくれますし、我々もつぶさに情報を送り届けていることが、良い結果として現れたのではないのでしょうか」と
坂東代表。
他聞にもれず、
ビービーガルダンも前走の
函館スプリントSの後は、坂東牧場で調整されていた。
「いい状態で送り出すことはできたと思います。ただ、他にも軽い馬がいるだけに、58kgという斤量だけが心配ですね」坂東代表の語る軽い斤量の馬とは、
函館スプリントSを制した
ワンカラットを指していたのだろう。前走、重賞を勝利したにも関わらず、
ワンカラットの斤量は据え置きの
54kgで、
ビービーガルダンは1kg減ったとはいえ、
58kgを背負うこととなった。
札幌の芝コースでは[3.2.0.1]という圧倒的な連対率を誇る
ビービーガルダンということで、1番人気に支持されたものの、この
4kgの斤量差が勝負の綾になる可能性は残されていた。
レースは、
ローレルゲレイロが先手を奪うかと思われたが、手綱を動かして主導権を奪ったのは
サープラスシンガーだった。同じ7枠の
ポートジェネラルが並びかけ、枠なりのスタートを決めた
ビービーガルダンは、5~6番手でレースを進めていく。
その外に進路を取っていた
ワンカラットであるが、3コーナー手前から順位を上げ、最後の直線では早くも先頭に踊り出る。
一瞬、内をすくった
ジェイケイセラヴィに抜け出しを食らいかけた
ワンカラットだったが、その後の叩き合いを制して、半馬身差を付けてゴールを駆け抜けた。
3着には
ベストロケーションが上がり、最後の直線でインコースに進路を取った
ビービーガルダンは、斤量が響いたのか、伸びきれず4着に敗れた。
「丁寧に乗っていこうと思いましたが、道中で他の馬に接触されて行きたがってしまいました。それでも最後までしっかり走ってくれましたし、本当に強い馬だと思います」とは、レース後の
藤岡佑介騎手の言葉。
一方、4着に敗れた
ビービーガルダンの
安藤勝己騎手は、
「いい枠を引けましたし、前に行けるかなと思っていたのですが、勝負所でいい位置を取れなかったことが、切れる脚を持っていないこの馬にとって、難しい競馬となってしまいました」と話した。
ビービーガルダンは
斤量に泣かされた面もあったのだろう。ただ、目標とするのは次走の
スプリンターズS。他馬との斤量差が縮まるこのレースでは、力を発揮してくれるに違いない。
一方、一躍スプリント界のニューヒロインに躍り出た
ワンカラットは、早くもこの勝利でサマースプリントチャンピオンの座をほぼ手中とした。
実は、坂東牧場で調整された
ビービーガルダンと同じように、
ワンカラットも
函館スプリントS、そして、この
キーンランドCともに、
社台ファームで調整されていた。それはこのレースの3着馬である
ベストロケーションも同様であり、開幕週に行われた
クイーンSでも、社台ファームの調整馬4頭が上位を独占したことは、前回のレースインプレッションで書いたとおりである。
あと、ひと開催と1週を残すだけとなった北海道シリーズだが、短期休養明けでも臆することなく、馬券を買ってみたほうが高配当にありつけそうな気がしてくる。