サクラバクシンオー産駒という点も加味すると価値がさらに高まる勝利内容
文/編集部
重賞4連勝で今年の
高松宮記念を制して、実績的には断然、中心の存在と見られていた
キンシャサノキセキが、疝痛を発症して出走を取り消し。一転して大混戦模様となったが、結果的には3歳の
ダッシャーゴーゴーが初重賞制覇を成し遂げ、「新星誕生」を印象づける形となった。
ダッシャーゴーゴーは、レース後に
川田騎手が話していたように、前走の
北九州記念では再三の不利もあっての⑪着。2走前の古馬相手だった
CBC賞では、
ワンカラットに先着しての②着だったし、昨夏には
小倉2歳Sでクビ差の②着もあり、重賞制覇も目前の能力をこれまで見せていたことは確かだろう。
ただ、その重賞初制覇が
セントウルSとなったのは、正直、意外な印象もした。というのも、過去のレースラップから見た傾向を考えると、
ダッシャーゴーゴーが適性的にピッタリ合いそうかには少々、疑問に思える面があったからだ。
セントウルSが阪神芝1200mで行なわれた00~05年と07~09年の過去9年において、前後半の3Fラップの平均を取ってみると、前半3Fが33秒6、後半34秒1。
前半が速く、それでいて開幕週の競馬ということもあり、後半になってもそれほどラップが落ちない。レースのイメージをざっくりと言うなら、そんな感じだろうか。
今年は、前半3Fが33秒9、後半3Fが34秒1。前半こそ平均より0秒3遅いが、
「前半が速く、後半になってもそれほどラップが落ちない」という、例年のレース傾向と大きくは違わない流れと言ってもいいだろう。
ダッシャーゴーゴーは、それ流れを早め先頭から押し切ったわけだが、過去に2連対した芝1200mを見ると、昨夏の
小倉2歳S(小倉芝1200m)が前半3F33秒8-後半3F35秒2、2走前の
CBC賞(京都芝1200m)が前半3F34秒3-後半3F34秒6。どちらも
「前半が速く、後半になってもそれほどラップが落ちない」といった感じでもなかった。
他に芝1200mで2戦しているが、4走前の
ファルコンS(中京芝1200m)が前半3F33秒0-後半3F35秒7で④着、前走の
北九州記念(小倉芝1200m)が前半3F32秒1-後半3F35秒0で⑪着。この2戦のように、
「前半3Fが非常に速い」という流れで実績を残しているわけでもない。
といったような過去の戦績から、
セントウルSのレースラップの傾向を考えると、②~③着ぐらいならともかく、勝ち切ったことに驚きを感じた。そして、それはさらに
「サクラバクシンオー産駒」という血統も加味すると、価値も高まってくる。
サクラバクシンオー産駒は、今回で芝1200m重賞を15勝目となるが、同産駒の芝1200m重賞での成績を細かく見ていくと、
前半の流れはともかく、少なくとも後半3Fはあまり速くない流れでの勝利実績が目立つ。
サクラバクシンオー産駒の
「レースの上がり3Fが34秒3以内の芝1200m重賞成績」は、今回も含めて[2.1.6.21]。①着は今回の他に、08年・
セントウルSでの
カノヤザクラだけ。②着も、07年・
セントウルSでの
カノヤザクラだから、今回の
ダッシャーゴーゴーの他には、過去に
カノヤザクラしか連対実績がなかった。
連対例は
セントウルSばかりだが、先述の[2.1.6.21]のうち、[2.1.1.8]が
セントウルSで、他のレースが[0.0.5.13]。
セントウルS以外も少なからず含まれている。そして、[2.1.6.21]の中で1~3番人気が[1.0.4.4]だから、上位人気で連外に終わっているケースも多い。
つまり、
サクラバクシンオーの産駒傾向としては、決して得意と言える流れでもないレースを
ダッシャーゴーゴーは勝ったわけで、今回の勝利を評価する時には、そういった点も加味して考えた方がベターのように感じられる。
ちなみに、
カノヤザクラは、母父が
ミスプロ系の
ウッドマンで、母母父が欧州の重厚な血統の
サドラーズウェルズ。
ダッシャーゴーゴーは、母父
がミスプロ系のミスワキで、母母父が重厚な
リボー系の
キートゥザミント。この2頭は、父だけでなく、母方の血統もなんとなく似ている。
カノヤザクラは牝馬で、
ダッシャーゴーゴーは牡馬という性別の違いはあるが、
ダッシャーゴーゴーは
小倉2歳Sで②着がある点を考えても、
カノヤザクラと同じく夏が得意な面もおそらくあるのだろう。
ダッシャーゴーゴーは次走の走りももちろん注目だが、08~09年に
サマースプリントシリーズを2年連続で優勝した
カノヤザクラのように、
「夏のスプリント王」と呼ばれる素質もあるように思われるので、来年以降、特に夏の成績を今から楽しみにしておきたい。
また、今年の
サマースプリントシリーズの優勝は
ワンカラットに決まり、
ダッシャーゴーゴーは3位という結果になった。