名牝2頭に比肩、真価を発揮するのはまだまだこれから!?
文/編集部
ドリームフライトが大逃げを打ち、離れた2番手には
ゴールデンメイン、3番手以下のグループは大きく離された展開。去年は
テイエムプリキュアが大逃げを打ち、離れた2番手には
クィーンスプマンテ、その他の馬は大きく離れて3番手以下から。向正面を進む隊列は昨年と見間違えるほどよく似ていた。
ただ、1000m通過は昨年が
59秒1だったのに対し、今年は
57秒7。86年以降、京都芝外2400mで行われた23年の中では、93年(①着
メジロマックイーン)の58秒2を上回り、
もっとも速い1000m通過タイムだった。スローペースになることが多い
京都大賞典としては、異例の展開だったと言える。
有力馬の道中の位置取りを振り返ると、離れた3番手に
プロヴィナージュ、そこからほぼ等間隔に
ベストメンバー、
メイショウベルーガ、
フォゲッタブル、
オウケンブルースリ。やや置かれた感じで最後方から
スマートギアといった隊列。
この有力馬の位置取りはだいたい
大方の予想通りだったと思われるが、よもやの
ドリームフライトの大逃げには、
「後続の有力グループがそう易々と逃げ切りなんて許すわけがない」とは思いつつも、2年連続で
ハラハラドキドキさせられた人も多かったのではないだろうか(笑)。
レースはというと、坂の下りで脚色が鈍り始めた
ドリームフライトを交わし、
ゴールデンメインが押し出されるように先頭に立ち、1頭抜け出して直線へ。後続グループは
ドリームフライトを飲み込み、固まった状態で4コーナーを回って直線へと入る。
「さあ、どの馬が伸びて来るんだ!」と固唾を呑んで見守っていると、馬場の中央から堂々と
メイショウベルーガが抜け出して来る。それを追いかけるように外から
オウケンブルースリも脚を伸ばす。
結果は
メイショウベルーガが
オウケンブルースリの追撃を半馬身差で凌いで勝利したが、
直線で見せた2頭の末脚は、他の馬がスローモーションに見えるほど際立っていた。そう見えたのはあくまで個人的な感想だが、上がり3Fを見ると、それも大げさな表現ではないように思えるかもしれない。
上がり3Fを見ると、
メイショウベルーガは
34秒9(メンバー中2位)、
オウケンブルースリは
34秒7(メンバー中1位)。対して、メンバー中3位だったのは
35秒8で
プロヴィナージュ(③着)だが、2位の
メイショウベルーガのそれとは
0秒9差もある。
メイショウベルーガと
オウケンブルースリの末脚は
次元が違った。ひと言で言えばそうなるし、③着以下には3馬身差がついた結果から言っても、
2頭の力がここでは一枚上だったという結果だろう。
メイショウベルーガは、出走馬で唯一のG1馬
オウケンブルースリを退けて勝利した。その
ライバルは
10ヶ月半ぶり、22kg増での出走だったから、完調ではなかったかもしれないが、昨年の
ジャパンCで
ウオッカとハナ差の大接戦を演じた、
現役トップクラスの実力馬である。
その
オウケンブルースリを負かしたという事実からも言えるが、
京都大賞典の歴史を振り返っても、
メイショウベルーガの潜在能力が
G1級であることが窺い知れる。
86年以降、
京都大賞典で1&2番人気に推された牝馬は
スイープトウショウ(
3)、
ヒシアマゾン(
2)、
ダンスパートナー(
2)、
アドマイヤグルーヴ(
2)、
コスモドリーム(
1)の5頭。馬名の後ろの数字は
G1の勝利数を表すが、錚々たる顔ぶれだろう。
その5頭のうち、
コスモドリーム以外の4頭は
エリザベス女王杯を制していて、さらに、
スイープトウショウは牡馬相手に芝G1勝ちがあり(
05年宝塚記念)、
ヒシアマゾンは牡馬相手の芝G1で連対実績がある(
94年有馬記念②着、
95年ジャパンC②着)。
86年以降、
京都大賞典で1&2番人気に推されて勝利した牝馬は、
スイープトウショウと
ヒシアマゾンだけ。
メイショウベルーガは2番人気で勝利したから、京都大賞典における実績としては、その
名牝2頭に比肩したことになる。
エリザベス女王杯のみならず、その先も……。今回の
京都大賞典がキャリア通算30戦目で、来年には6歳になる
メイショウベルーガではあるが、
真価を発揮するのはまだまだこれから。躍動する大柄な芦毛の馬体が、そう物語っているような気がしてならない。