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20年以上前のあの「ワープした馬」を思い出した
文/編集部

直線で弾けたダノンヨーヨーを見ていたら、20年以上の時を経て、あのトリプティクを思い出してしまった。富士SジャパンCの前哨戦として位置づけられていた1987年の話だ。

ジャパンCで外国馬が強かったあの当時、トリプティクはジャパンC制覇を目指して2年連続で来日したわけだが、87年は、前年に⑪着に敗れた反省を活かしてか、本番の2週前に組まれた富士S(当時は芝1800m)に出走してきた。

このレースは、「トリプティクがワープした」として有名なので映像を見たことがある人も多いと思うが、9頭立てで内ラチ沿いを進んでいたトリプティクは、4コーナーで最後方に位置しながら直線に向くと、他馬を一気に抜き去り、結局、5馬身差で圧勝する。

OP特別で他馬とは力差があったのだろうし、内をすくってのものなので、いま振り返って見ると、それほど驚く内容でもないように感じるかもしれないが、当時は、それは驚いたものだ。さすがに世界中でG1を8勝もしている馬は違うと(トリプティクは翌年にもG1を勝利して、通算でG1・9勝を挙げた)。

今回のダノンヨーヨーは、あの時と双璧の、いや、衝撃度としてはトリプティク以上と言ってもいいと個人的に思っている。それくらい直線での弾けっぷりには驚かされた。

前述したように、トリプティクは直線でを突いていた。それに対してダノンヨーヨーは、大外を回って弾け飛んでいた。他馬より距離損をしながら子ども扱いしたのだから、凄いものだ。

東京の芝重賞で、外から追い込みを決めるケースは珍しくないけれど、今回の富士Sは、②~③着に内を回って先行した馬が残ったことからも分かるように、馬場&流れとも内の馬たちに有利に働いていた。それをダノンヨーヨーは外から切って捨てたのだから、衝撃以外の何物でもないだろう。

戦前、ダノンヨーヨーはいわゆる「お客さん」ではないかと思っていた。いくら3連勝中の馬とはいえ、重賞に出走するのは今回が初めて。今回、中央馬で重賞初出走となったのは、ダノンヨーヨーの他にマルタカエンペラーがいただけだった。

過去の富士Sの歴史を振り返ってみても、それこそトリプティクの時代から20年以上、重賞に出走経験のない馬は勝っていなかった。重賞に格上げされた98年以降の勝ち馬は、いずれも重賞での④着以内があった。それらのデータも、ダノンヨーヨーは大外から断ち切ったということだ。富士Sの歴史上、ダノンヨーヨーが例外的な存在であることは疑う余地がない。

もちろん、ダノンヨーヨー「富士Sの歴史上」に収まる馬でもないだろう。

ダンスインザダーク産駒としては、東京芝1600mの準OP以上で勝ち鞍を挙げた2頭目の馬となった。

同産駒は、富士Sと同週に行われる菊花賞はよく勝っているが、東京芝1600mの上級条件ではなかなか勝てず、準OPクラス以上では1勝、1000万クラス以上でも15頭立て以上だと1勝止まりだった。

ダノンヨーヨー以前にその勝ち鞍を挙げていたのは、04年の安田記念を制したツルマルボーイである。同父の先輩G1馬と名前が並べられるのだから、これも立派なことだ。

次走はもちろん、11月21日マイルCSということになるのだろう。

90年以降の同レースで、前走が富士Sだった馬は[1.3.0.42]という成績が残されている。02年にトウカイポイントが優勝しているものの、その年の富士S中山競馬場で行われていた。東京での富士SからマイルCSに向かった馬は、90年以降で[0.3.0.38]となっている。

「富士Sの歴史上」では収まらず、ダンスインザダーク産駒としてもG1級であることを認められるのだから、ダノンヨーヨーには、ぜひとも過去のデータを打ち破り続けてほしいものだ。

トリプティクは2歳時から6歳時まで毎年G1を勝利し、5ヶ国でG1・9勝をマークした。日本ではG1勝利はならなかったが、後世まで語り継がれるようなレースを見せてくれた。

ダノンヨーヨーも日本のG1を制し、いつの日か世界に飛翔して、彼の地の競馬ファンに衝撃を与えてほしい。果たして、それが言い過ぎかどうか。数年の後を楽しみにしたいと思う。