今週は「ゲート」のポイントについてお話しいたします
2010.10.28
ここ最近、ゲートについてのメールが届いているようですので、今回はゲートについてお話をさせていただきたいと思います。
みなさんご存じだと思いますが、まず、大前提として、デビュー前の新馬たちは、すべての馬がゲート試験に合格しなければなりません。それに対して古馬の場合は、発走再審査となった馬たちのみがゲート試験を受けることになります。
僕の場合は、新馬に対するゲート練習と試験がほとんどで、短い助手経験でもあり、一度も再審査に騎乗した経験はありません。
新馬について話をしますと、大きく分けて5つのポイントをクリアできるかがカギとなります。ゲートに寄るのかどうか、入ることができるのか、入った後に中でおとなしく待つことができるのか、そこから発進できるのか、そして加速できるのか、ということです。これらをすべてクリアできて、初めて合格できるのです。
我々は、入厩してきた馬たちに対して、いま説明した順番に沿って調教を進めていくことになるのですが、この順番をしっかりと守らなければならないというか、どこかを疎かにしてしまえば、ゲート試験に合格することはできません。
どこかの部分が不十分な状況であるにも関わらず、試験で上手くいって合格できたとしても、後々に問題を抱えることになってしまうものです。
ひとつ例を挙げるとすれば、ゲートにスムーズに近づき、中にもスッと入る。そこでチャカチャカするなど、おとなしくはないものの、扉が開くと発進し、スムーズに加速できた馬がいたとします。
このようなケースにおいては、中でおとなしく人間の指示を受け入れて待つことができるようにしておかないと、後々、より苦しい状況になった時に近づかなくなってしまったり、中に入らなくなってしまうことになりかねないのです。
僕の経験では、とにかく、ひとつひとつをしっかりと、段階を踏んで進めていくことが大切だと痛感しています。
ただ、本音を言わせてもらえば、ゲート試験に対しては必要以上に時間をかけたくないと言いますか、早く終わらせたい、と思っているのも事実です。
なぜかと言いますと、ゲートを発進する際、馬は、極端な言い方をすると、重心を後ろに移す、つまりトモにウェイトをシフトさせて飛び出す動きをしますので、やはりトモ、あるいは背中に負荷がかかり、疲れを蓄積してしまう確率が高くなるからなのです。
例えば、土曜日に入厩した馬がいるとします。すると、翌水曜日からゲート練習を開始して、木曜、金曜と連続して行うわけですよ。
馬にもよりますし、時期にもよりますが、弱い馬にとってその負担は物凄かったりするのです。少なくとも、自分自身で乗っていて、トモや背中が張ってしまう、そういう感覚を覚えます。
しかし、じっくり時間をかけてやれば良いかというと、決してそうとも言い切れないんですよね。時間をかけることで、逆によりストレスを感じさせてしまうことになるかもしれませんから。
あくまで馬の状態を見極めながら、ゲートの段階では、調教そのものの負荷を軽くするなど、対応していくことが大切だと思っています。
あと、ゲートの発進のスピードは練習すれば速くなると思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、スピード自体は馬そのものの問題というか、人間の手ではどうしようもない部分があったりします。
スプリンターとかで物凄く速い馬がいたりしますが、発馬そのものの速さは資質のひとつであるのですよね。
ゲート試験に向けて、徐々にペースをあげていく、あるいは競馬をしていく過程でゲートで何か問題を抱えるようになる馬たちの多くは、精神的なストレスもありますが、どこか肉体的に苦しい部分がある、と僕自身は感じています。
もちろん、それとはまた違った部分でゲートに問題を抱える馬もいます。具体的に言えば、トレセンでの練習、あるいは再審査では問題がなく、スムーズに入って発馬ができるのに、実戦では問題を見せるタイプがそうですよね。
競馬開催日の昼休みに行われるゲート再審査、いわゆる「13レース」でもまったく問題をみせない。それでも実戦ではやる馬もいるようです。
そうなると、僕が未熟なのかもしれませんが、どう対処して良いか、策がなくなってしまいます。
そういう馬たちの場合は、肉体的な苦しさ以外に競馬を分かっていて、嫌悪感なのか何か理由は分かりませんが、故意にやっているということもあり得るでしょう。
実際に、ゲートに対応できず、競走馬としての命が絶たれた馬もいますし、試験に合格できずに競走馬になることができなかった馬も存在するのです。
久しぶりに長くなってしまいました。この続きは、また来週にお話しさせていただこうと思います。
なお、再来週からは、飼い葉について飼料会社の方との対談を予定しております。こちらもどうぞ楽しみにしてください。
ということで最後はいつも通り、あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします。