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競馬の神様から与えられた試験に見事に落第してしまった
文/編集部

「愚者の後知恵」という言葉がある。すでに結果が出た物事を語るのは簡単なことで、誰でもできるという意味だ。レース後に「終わってみれば買えたよなあ」、と思うことは非常に多いが、自分にとっては、このレースもそうだった。

昨年はローズキングダムが1番人気で制したが、今年は混戦模様。1番人気はフジキセキ産駒のサダムパテックで、単勝オッズは4.6倍。ハーツクライ産駒の2頭、トーセンケイトゥーが2番人気で5.8倍、リフトザウイングスが3番人気で6.9倍。絵に描いたような人気の割れ方だ。

「2歳重賞は、クラシックを目指す馬が上位を争う」と思いがちなこともあり(実際そうなのだが)、サダムパテックがまだ牡馬クラシックを勝ったことがないフジキセキ産駒だったことも、人気の割れ方に拍車をかけたのかもしれない。それでも、前走の未勝利戦を好タイムで勝ったこの馬が、1番人気に推された。

ちなみにグレード制導入以降、2歳重賞で1番人気馬の単勝オッズが4.5倍を超えたのはわずか2回。07年フェアリーS(メイビリーヴが1番人気で⑨着)、90年テレビ東京賞3歳牝馬S(マーキーソロンが1番人気で⑪着)のみ。

「府中千八展開いらず」という大橋巨泉氏の言葉もある。このコースは強い馬が強い競馬をするコース。やはりクラシックで上位に入る馬が勝つのではないか、となると、SSの血を持つ馬が7連覇中とはいえ、フジキセキ産駒を信用しても良いのだろうか。

そう考え、SSの血を持つ馬の中からサダムパテックを外し、トーセンケイトゥービップセレブアイリフトザウイングスダコールフェイトフルウォーの5頭を買った。

ところが。結果はご存じの通り、サダムパテックの圧勝である。出負け気味のスタートでいったんは後方に位置取りを下げたが、内枠を利して徐々にポジションを上げ、直線では馬場の中程に持ち出して、上がり33秒7の脚で②着リフトザウイングスに3馬身半差。スミヨン騎手の手綱捌きも光る、完璧な勝利だった。

②着リフトザウイングスも強かった。外枠15番から武豊騎手はいったん最後方に下げ、最内に進路をとると、そこから直線で馬群を割って後方一気。上がりは勝ち馬と同じ33秒7で、今回は位置取りの差がそのまま着順に反映された感じだが、前走は4角2番手で初勝利を挙げた馬。枠順が逆だったらどうだったか分からない、と思わせるほどの末脚だった。

先ほどSSの血が7連覇中と書いたが、この7年にはもうひとつの共通点がある。勝ち馬は前走から馬体重の増減なし、もしくは馬体減だった。クラシックを意識する馬は、デビュー直後は余裕残しで、そこから徐々に仕上げられていく馬が多いのもその理由のひとつだろう。今回の該当馬は7頭で、①&②着馬もそれに該当していた。

勝ち時計の1分47秒3は96年以降(第1回)で2番目に速いタイムで、上がり33秒7は勝ち馬の中では最速だった。終わってみれば、押しも押されぬクラシック候補の誕生と言えるだろう。

データを振り返ってみても、レース前にサダムパテックを買わない理由はさほどなかった。要するにこのレースで、「君はフジキセキ産駒をクラシック候補として認識できるか?」競馬の神様に試されたのだろう。そして、自分=愚者は、その試験に見事に落第してしまった。

なお、重賞に昇格してから今年で15回目となるこのレースだが、過去14回の勝ち馬の中には、キングヘイロー(高松宮記念)、アドマイヤコジーン(朝日杯3歳S安田記念)、アドマイヤマックス(高松宮記念)、フサイチリシャール(朝日杯FS)、ナカヤマフェスタ(宝塚記念)、ローズキングダム(朝日杯FS)と、6頭もの平地G1馬を出している。

ただ、②着以下だった馬の中からはサニーブライアンメイショウサムソンといった牡馬二冠馬が出ている一方、不思議にも、勝ち馬の中からクラシックを勝った馬はまだいない。昨年の勝ち馬ローズキングダムも、ダービー菊花賞で②着に入ったものの、頂点には届かなかった。

今年のサダムパテックはどうか。昨年、ダノンシャンティNHKマイルCを制し、フジキセキ産駒として初めて3歳G1を勝った。来年、サダムパテックがさらなる壁を破っても不思議ではないのかもしれない。来年の春、自分は愚者から脱却できるのか、自分で自分が見物だ。