他馬には手の出しようがない逃走劇だった
文/編集部、写真/森鷹史
年末年始のテレビでは、
若手お笑い芸人と
AKB48を目にしない日はなかった。まあ、年末年始に限った話ではなく、彼らは年がら年中テレビに出ているのだから、
本当によく働いていらっしゃる、と頭が下がる思いで見ていた。
もちろん、競馬に携わっている人もそれほど休んでいない人が多いわけだが、さすがに
競走馬はそうでもない……と思いきや、今年は雰囲気が違った。
有馬記念ウィーク→金杯デイという
“変則連闘”を仕掛けてきた馬がけっこういたのだ。
1月5日の中山&京都開催(24レース)に出走した
366頭のうち、
12月25&26日の有馬記念ウィークにも出走をしていた馬が
20頭もいた。中9~10日なので、通常の連闘よりは短いわけだが、それでもこの時期に……
ご苦労様です。
この20頭が1月5日にどういう成績を残したかというと、
[1.2.1.16]だった。結果が出なかった馬も少なくなくて……なんだか本当にご苦労様という感じがする。
さらに、この20頭の中で、
2走前も12月だった馬は
8頭いたのだが、その成績は、
⑥~⑨着が2頭、
⑩着以下が5頭で、
馬券圏内に入った馬は1頭だけだった。
12月に2走して、変則連闘で正月開催に臨み、そこで好走する。そんなことは、
「日本レコード大賞」と
「紅白歌合戦」に出て、さらに
「SASUKE」で優勝するくらい難易度が高い感じだが(笑)、それを成し遂げた馬が1頭だけいた。それこそが
京都金杯を逃げ切った
シルポートだった。
シルポートは
12月4日の
鳴尾記念を走り(④着)、
年末の
ファイナルSを逃げ切り、さらに
京都金杯でも逃げを打って、
重賞初制覇を成し遂げた。この頑張りと活躍は、
AKB48にも匹敵するんじゃないだろうか。
マイル戦となってからの
京都金杯で、
1分32秒台の決着は過去に一度あり(09年、
タマモサポート、1分32秒9)、04年には
1分33秒3(
マイソールサウンド)という時計も計時されているので、今回の
1分33秒4というタイムは、
歴代3位タイとなる(00年
キョウエイマーチと01年
ダイタクリーヴァも同タイム)。
しかし、それらはいずれも他に逃げ馬がいて、勝ち馬は
2番手以下から直線で抜け出て記録している。今回の
シルポートは自らハナを切り、勝負所で他馬との距離を開き、そのまま
34秒6の上がりでまとめたのだから、
他馬は手の出しようがない感じだった。
昨年の
京都金杯を制した
ライブコンサートは今年は③着までだったが、
走破時計を比べると、今年の方が速い。
昨年①着時が
1分34秒1で、今年は
1分33秒6。0秒5も時計を詰めていながら1馬身以上の差を付けられたのだから、これは、自らペースを作って押し切った
シルポートの
パフォーマンスを褒めるべきだろう。
00年以降の
芝1600m重賞で、1分33秒9より速い時計で
逃げ切り勝ちを決めた馬は11頭いるが、そのうち
斤量が57kg以上だったのは
3頭だけになる。
00年富士Sの
ダイワカーリアン(58kg、1分33秒9)、
07年マイラーズCの
コンゴウリキシオー(58kg、1分32秒2)、
08年東京新聞杯の
ローレルゲレイロ(57kg、1分32秒8)で、今回の
シルポートはこれらに続く4頭目となった。
4頭はいずれも
父がノーザンダンサー系で、
コンゴウリキシオーや
ローレルゲレイロが短距離のG1戦線で活躍したのは記憶に新しいところ。彼らが作り出す
淀みのない逃げは、
父サンデー系の持ち味である
切れ味を殺ぐケースが度々見られる。
働き者でしかもひとまわり成長した
シルポートは、今年の
マイルG1戦線でも
脅威の存在になる可能性が十分にあると言えそうだ。