相当な実力がないと、東京と中山の古馬芝G2を制することはできない
文/編集部
3歳以降は中山で勝ったことがない
トーセンジョーダンが
圧倒的な1番人気に推されているのを見て、レース前は
大丈夫なのかなあと思っていたが、そんな不安を吹き飛ばすような
快勝劇が見られた。
1000m通過が
63秒4というスローになり、昨年の
有馬記念ほどではないにしても、
最後の瞬発力比べとなったわけだが、
トーセンジョーダンは
58kgの斤量を背負いながら
34秒7の上がりを計時。今回のメンバーの中では、
レベルが一段上であったことを証明するような内容で勝利した。
東京と
中山は、そのコース形態があまりに異なるためか、
ふたつの競馬場で芝G2を勝つ馬というのは案外少ない。
86年以降、両場での
古馬G2(芝)を制した馬は
12頭で、
トーセンジョーダンが
13頭目。過去の12頭を見ると、
「名G2ホース」と呼ばれるような馬が目立つ。
【1986年以降に東京と中山の古馬芝G2を制した馬】
馬 |
勝利レース |
カシマウイング |
87年AR共和国杯 88年AJCC |
メジロモントレー |
90年AR共和国杯 91年AJCC |
ダイナマイトダディ |
92年中山記念 92年京王杯SC |
マチカネタンホイザ |
93年目黒記念 94年AJCC |
ローゼンカバリー |
97年AJCC 97年日経賞 99年目黒記念 |
サイレンススズカ |
98年中山記念 98年毎日王冠 |
マチカネキンノホシ |
00年AJCC 00年AR共和国杯 |
ホットシークレット |
00年ステイヤーズS 01年目黒記念 02年ステイヤーズS |
アクティブバイオ |
02年日経賞 03年AR共和国杯 |
バランスオブゲーム |
03年毎日王冠 05年中山記念 06年中山記念 06年オールカマー |
チャクラ |
03年ステイヤーズS 04年目黒記念 |
カンパニー |
08年中山記念 09年中山記念 09年毎日王冠 |
トーセンジョーダン |
10年AR共和国杯 11年AJCC |
この
13頭の中で
G1馬に輝いたのは、
サイレンススズカと
カンパニーの2頭になる。ただ、他の馬たちに関しても、
G1を勝たないまでも好戦している例がかなり多い。
13頭について、それぞれの
G1での最高着順を記すと、次のようになる。
【1986年以降に東京と中山の古馬芝G2を制した馬のG1最高成績】
馬 |
G1最高成績 |
カシマウイング |
90年天皇賞・春③着 |
メジロモントレー |
89年オークス⑤着 |
ダイナマイトダディ |
90年朝日杯3歳S⑤着 92年安田記念⑤着 |
マチカネタンホイザ |
92年菊花賞③着 |
ローゼンカバリー |
98年天皇賞・春③着 |
サイレンススズカ |
98年宝塚記念①着 |
マチカネキンノホシ |
98年朝日杯3歳S④着 99年NHKマイルC④着 |
ホットシークレット |
01年宝塚記念③着 |
アクティブバイオ |
03年ジャパンC⑤着 |
バランスオブゲーム |
04年安田記念③着 06年宝塚記念③着 |
チャクラ |
04年天皇賞・春④着 |
カンパニー |
09年天皇賞・秋①着 09年マイルCS①着 |
トーセンジョーダン |
10年有馬記念⑤着 |
G1で掲示板に載ったことがない馬は
ゼロ。これは、
「相当な実力がないと、東京と中山の古馬芝G2を制することはできない」という証左でもあるだろう。
今回の
AJCCを制した
トーセンジョーダンは、昨年の
有馬記念で
⑤着に入っていた。それを考えれば、
東京の
アルゼンチン共和国杯に続いて
中山の
AJCCを制しても、なんら不思議ではなかったとも言える。
東京と
中山の
古馬芝G2を制した
トーセンジョーダンは、すでに
G1.5のレベルにあることは間違いない。前記した13頭の中から、
サイレンススズカと
カンパニーの領域、つまり
G1タイトルを手中にできるかが今後の焦点だろう。
東京の古馬芝G2を制する前に
G1馬となっていた
サイレンススズカよりも、
トーセンジョーダンが目指すのは
カンパニーの方だと思われるが、その
カンパニーと
トーセンジョーダンは
同じ一族で、
血統構成も非常によく似ている。
┏
トニービン ┏
ミラクルアドマイヤ ┃ ┗バレークイーン
カンパニー ┃ ┏
ノーザンテースト ┗ブリリアントベリー
┗
クラフティワイフ ┏
トニービン ┏
ジャングルポケット ┃ ┗ダンスチャーマー
トーセンジョーダン ┃ ┏
ノーザンテースト ┗エヴリウィスパー
┗
クラフティワイフカンパニーと
トーセンジョーダンは、
父が
ミラクルアドマイヤと
ジャングルポケット、
母が
ブリリアントベリーと
エヴリウィスパーで、それぞれ異なるが、
祖父と
祖母は
トニービンと
クラフティワイフで同じ。
母の父が
ノーザンテーストというのも一緒である。
同じ血統構成をしていれば同じような活躍ができる、ということではないけれど、
トーセンジョーダンに対して
カンパニーと似たような
成長曲線を期待しても、それは悪くないことだろう。
カンパニーは初めての重賞勝利を
京都(
京阪杯)で飾り、翌年(5歳時)に
阪神(
大阪杯)、翌々年(6歳時)に
新潟(
関屋記念)でも重賞タイトルを手に入れた。7歳になって
中山(
中山記念)でも重賞勝ちを収め、8歳になって初めて
東京の重賞(
毎日王冠)で勝ち鞍を挙げ、その勢いで
天皇賞・秋でG1ホースに上り詰めた。
トーセンジョーダンは、この後、いくつの競馬場で勝ち鞍を収めるだろうか。
走るたび、経験を重ねるに連れて強くなっていく血統であることは、ぜひ頭の中に入れておきたい。