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中山大障害をバシケーンで優勝した高橋先生に話を伺いました
2011.1.27

先週は、土曜日の京都8レース(500万下)でノボジュピターが2着となりました。

僕自身は、正直、少し余裕があるかなという感覚があり、そこまでの手応えを感じていたわけではないのですが、2着に来られるのですから力がありますし、とにかく京都コースはよく走ってくれます。メンバーが強くても、いい競馬をしてくれるので、相性の良さということもあるのかもしれません。

さて、今週は、『バシケーン中山大障害優勝記念』として、高橋義博調教師にお話を伺いましたので、その対談をお送りしたいと思います。それではどうぞ。

西塚信人調教助手(以下、西)先生、バシケーンでの中山大障害優勝、本当におめでとうございます。

高橋義博調教師(以下、高)ありがとうございます。


[西]僕も競馬場に行っていたのですが、本当に熱くなりました。ゴールした瞬間、先生の顔が浮かびましたよ。

[高]そうですか。僕たちの席はゴール板に対して、斜め前方に位置していますので、勝っているとはすぐには分からなかったのです。

[西]写真判定でしたからね。

[高]テレビで観ていた人たちは「勝っている」と言ってくれていたのですが、僕自身は分からないと思っていました。喜んで引き上げてきた蓑島(騎手)にも、「写真だぞ」と言うと、急に静かになってしまったのですよ。悪いことをしてしまったとも思ったのですが、検量室のボードに2頭の番号(馬番)が並んで、ウチのが先に書いてあるのを見るまでは、まったく分からないと思っていましたから。

[西]そう、まずはあそこを見ますよね(笑)。

[高]あれを見て、初めて「勝っているのかな」と思いました。

[西]自信はあったのですか?

[高]うははは(笑)……正直、ありませんでした。

[西]失礼な言い方になりますけれど、バシケーンのイメージは細くて華奢というものなのですが、あの日のパドックでは大きく見せて張りがあって、気合いも乗っていたので、調子が良いと感じましたす。

[高]レースの後だから言えるのですけど、助手も「掲示板くらい、いやその端くらいはあるんじゃないか」と言っていたのです。僕自身も、そのくらいはあってほしいと希望は持っていたのです。


[西]そうしたら、逆の端になりましたね(笑)。

[高]そうですよ(笑)。私がいちばん驚きました。

[西]最後の3コーナーから凄い加速でしたよね。

[高]あのあたりで上がってきた時に、2周目でしたので「あっ、これなら何とか掲示板くらいはあるかな」と思いました。4コーナーで「ミノ(蓑島騎手)、ヘマするなよ」と思って見ていたのですが、そこから今度は「あれ、あれ、あれ!?」と思っているうちに伸びてくるではありませんか。

[西]先生、声は出ましたか?

[高]出ませんでした。

[西]まったくですか!?

[高]はい。とても冷静に見ていました。「ひょっとしたら」という思いがまったくなかったわけではありませんでしたが、先ほどもお話ししましたように、「写真だから」という思いの方が強かったです。

[西]でも、他の先生方から「おめでとう」と声を掛けられたんじゃないですか?

[高]調教師席から(検量室へ)降りていく時に言われましたが、もし負けていたら恥ずかしいですからね。「写真ですので」とだけ返事をしていました。

[西]3コーナーの勢いは確かに凄かったですけど、前の馬(タマモグレアー)も頑張っていましたし、交わせるかどうかまでは分からなかったですからね。

[高]そう、2着馬も頑張っていました。後から冷静になった時、蓑島よりも林さん(林騎手、タマモグレアーに騎乗)の方が年上ですから、厳しい世界なんだと改めて痛感させられました。4000mを走ってきて、わずか数cmの差ですよ。

[西]わずか数cmですが、その差は雲泥の差ですからね。騎手の方々と話をすると、何馬身差も付いている時には馬の力もありますので割り切れるらしいのですが、ハナ差とかですと、何とかできたんじゃないかという思いが残って、何倍も悔しいと聞きます。

[高]本当に頭の上げ下げが勝敗を決めることもありますからね。

[西]いやぁ、本当に名勝負でした。そう言えば、蓑島は、(中山大障害の)装鞍に遅れそこなっていましたよね?

[高]うははは(笑)。

[西]あの時、一緒に装鞍に向かっていたのですよ。別に急いだ様子もなかったところで、先生が「早く、早く」と言って迎えに来たのです。

[高]装鞍の合図が掛かっていたのですよ。他の騎手たちはすでに鞍を置いて戻っていってしまっていましたからね。

[西]僕たちは早めに行かなければなりませんので、「装鞍所集合時間」に合わせて行動しますが、蓑島は「装鞍時間」で見て勘違いしたのかもしれませんね。

[高]そういえば、鞍のことで思い出しました。春のグランドジャンプの時に、蓑島が「鞍を置いてもらえますか」と言っていたのです。彼は体重が軽いので、鞍が10kg以上あるわけです。さらに、身長が低いこともあって乗せられないのですよ。僕の方が少し高いので、乗せてほしいと言ってきたわけです。そして、暮れ(中山大障害)の時、急いだこともあって空気が沈んでしまったようなところを感じたので、和やかにする意味も込めて、「ミノ、置けるか?」と言うと、「置けます」と言うわけです。

[西]置いたんですね(笑)。

[高]10kg以上の鞍を置きました。

[西]蓑島だと、13kgくらいあるんじゃないですか?

[高]そうです。

[西]読者のみなさんにはなかなかイメージできないかもしれませんが、相当重いものですよ。

[高]大庭の鞍ではありませんからね(笑)。

[西]うははは(笑)。あの小さい鞍じゃないですからね。

[高]0.8kgじゃありませんから(笑)。10kgの鞍というのは重いです。

[西]でも、バシケーンって、背が高かったわけではないですよね?

[高]決して高いわけではありません。あくまで、場を和ませるというか、少し気分をほぐしてあげられたらと思ったのです。

[西]なるほど。実際に、今回、勝ってみて、いかがですか?

[高]「世界が変わる」とか言われましたが、正直、何も変わりません。ただ、障害厩舎として生きていくのかなぁと思ってしまいました(笑)。

[西]そういえば、今年の初勝利も障害でしたよね(1月9日中山5R、モリノミヤコ)。馬ではありませんが、やはり障害の血筋なのかもしれませんね。

[高](中山大障害の)レース後、元障害騎手だった成田(均)さんに、「おめでとう、ブルーフラール以来だね」と言われて、そうなんだよなぁと思いました。ブルーフラールというのは、(高橋義調教師が以前に所属していた)大久保(勝之)厩舎で大障害を勝った小さな馬のことです(ブルーフラールは1985年に第94回中山大障害を制している)。でも、ブルーフラールに乗っていたのは、佐藤全弘先生だったのですよ(笑)。

[西]へぇ、そうなんですか。でも、本当に多くの人がこの勝利を喜んでいますよね。

[高]年が明けてからだったかな、大庭と地下馬道を歩いていた時、「先生、未勝利であきらめなくて良かったね」と言われて、そうだと思いましたよ。

[西]そうですよね。

[高](バシケーンは)未勝利で大庭が乗っていて、いつも「手応えといい、背中といい、こんな結果のはずじゃないんですけど」と言っていたのです。「そう言ってくれるのはありがたいけど、何回走ってもふた桁(着順)なんだよ」という会話をしたこともありました。

[西]確か、バシケーンが障害に転向した時、大庭がケガをしていたので、蓑島が乗ることになったのですよね。

[高]あっ、そうでしたか。ごめんなさい、あまり記憶にないですね。

[西]大庭は鎖骨を骨折していたと思います。当時、西塚厩舎を手伝ってもらっていたので、記憶があるのですよ。バシケーンの障害初勝利を大庭と一緒に見ていた記憶があるのです。

[高]はじめの頃は、(バシケーンは障害が)下手でした。みんなが左にカーブしているのに、バシケーンだけが外ラチに飛んでいってしまったこともありましたからね。新潟の障害は簡単とされていますが、最初のふたつ、3つの飛越が下手だったりしたのですよ。

[西]初めてのところは、確かにダメみたいですよね。でも、最初がそんなだったとは、この前の競馬からはとても想像できませんよね。

[高]いまは下手じゃないですよ(笑)。でも確かに、1回目は何をやっても下手なのですよね。バシケーンは、2回、3回と経験すると上手になるのですよ。経験しても変わらない馬もいますので、そこはこの馬の能力でしょう。

今週はここまでとさせていただきます。高橋先生との対談は来週まで続き、話題となった「断髪」についても伺ったので、来週もどうぞ楽しみにしてください。

先週、外国人ジョッキーを含めたJRAの変革について話をさせていただきました。僕自身としては、みなさんから「甘い」とか「時代錯誤だ」といった批判をいただくんじゃないかと思いながら話をしたのですが、逆に、多くの方々から同意、あるいは後押しをしていただくようなメールをもらいました。

驚かされたのが正直なところなのですが、みなさんは冷静に状況を分析されているのだということを知れて、本当に良かったと思っています。

個人的には、5年後の競馬界を取り巻く状況というテーマに、とても興味を持っています。これからは、そのテーマを様々な角度から話していきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

ということで、最後はいつも通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。