スマイルジャックの三浦騎手は『勝負脳』が活かされた騎乗だった
文/編集部(M)
冒頭から
負けた馬について触れるのはちょっと違うかもしれないが、気になってる人も多いと思うので、
1番人気で
⑦着に敗れた
ダノンヨーヨーについて言及しよう。
スタートがあまり良くなく後方からになり、直線で大外から追い込んだものの差し届かず、
「いつもより弾けなかった」と感じた人も多いことだろう。しかし、レース結果をよく見ると、どうやらそんなこともないようだ。
3走前の
富士S(
東京芝1600m)で、今回と同じような競馬をして1馬身以上の差を付けて快勝しているが、その時の勝ち時計が
1分32秒8で、上がり3Fは
33秒5。今回は、
⑦着ながら走破時計が
1分32秒8で、上がり3Fが
33秒2。
富士Sの時より
速い上がりを使い、
1600mをまったく同じ時計で走っていたのだ。
もちろん、前走の
マイルCSで
1分31秒台(1分31秒8)の時計を出しているのだから、もっと速いタイムで走れる能力があるはずという意見も間違いではないのだろうが、
近走に比べて今回のパフォーマンスが極端に落ちているわけではないことは認識しておきたい。
むしろ、東京で行われた
東京新聞杯での
第2位の時計(1分32秒5)で優勝した
スマイルジャックを褒めるべきなのではないかと思う。早めに動く形でこの時計で押し切ったのだから、その内容は強いものだった。
スマイルジャックの前走(
マイルCS⑥着)のレースぶりについては、実は
「どうなんだろう?」と思っていた。内の3番手でレースを進め、直線では最内を突いて一度は先頭を窺いながら、最後に差し込まれた。09年
関屋記念の差し切り勝ちが鮮明に記憶に残っていて、
スマイルジャックは
「差した方がいいタイプ」と思っていたから、
先行策を取ったことに
「?」が浮かんだのだ。
しかし、今回のレース後の
三浦騎手によると、
前走のそのレースが良い契機となったようだ。おそらく、ある程度の位置でリラックスして流れに乗り、最後に決め手を活かす方法を模索してきていたのだろう。そのきっかけを前走の
マイルCSで掴み、今回の勝利につながったようなのだ。
三浦騎手は
「川田騎手にいいレースをしていただき」と話していたから、今回の
スマイルジャックの勝利における
陰のファインプレーは
川田騎手なのかもしれない。でも、そのことに対して素直に感謝の意を伝える
三浦騎手も
立派だなあと感心した。
もうひとつ、
三浦騎手の勝利インタビューを聞いて感じることがあった。
「勝つことを意識しないで騎乗した」というフレーズだ。以前にこのコーナーで記したこともある、
『勝負脳』が活かされた騎乗だと思ったのだ。
講談社現代新書に
『<勝負脳>の鍛え方』(林成之著)という本がある。北島康介選手の金メダル獲得にも貢献したと言われる
脳外科医の林成之氏が著したもので、
勝負に勝つための脳の使い方(考え方)が記されている。
詳しい内容は同書をお読みいただきたいが、要約すると、勝負事は勝とう勝とうとすると良くなく、
勝つためのプロセスに集中せよ、と。
「結果を意識するのではなく、それを達成するために必要な技、作戦に気持ちを集中させる」べきと説いている。
三浦騎手は、今回、勝つことを意識せず、
スマイルジャックの
リズムを大切にして、
「馬がハミを取ってから追い出そうと、それだけを考えて騎乗していた」と話していた。まさに、
勝つために必要な作戦に気持ちを集中させていたというわけだ。
私自身は、
スマイルジャックについて、休み明けでもあったので勝つことはないだろうと思って馬券をハズしてしまったが、勝利騎手インタビューを聞いていたら、なんだか
清々しい気分にさせられた。自分自身が馬券で勝とう勝とうとして、大事なプロセスが抜け落ちていたようだ。
スマイルジャックは
ダービーで穴ぐさ💨に指名して、②着に激走してくれた個人的にも思い出のある馬で、その後も東京のG1で穴ぐさ💨に2度指名している。ただ、その2回では結果が伴わなかった。
東京競馬場が合わないはずがないと思っていたものの、2、3、4、5歳と毎年東京で走りながら勝てず、「やっぱり東京は合わないのか?」と思い始めた矢先に、
勝利が訪れた。
ダービーで、最後の最後に
ディープスカイに差されて②着となり、それ以降、G1では[0.1.1.8]という成績の
スマイルジャック。今春の
安田記念で、
3年ぶりに忘れ物を取ることができるだろうか。
G1タイトルを意識せず、
勝つための作戦に集中できるかどうかがカギを握っているのかもしれない。
ちなみに、
『<勝負脳>の鍛え方』は馬券を買う人間にも参考になると思うので、広く薦めています。
「結果を意識しない」とか
「最初から100%集中せよ」とか、
勝負に勝つための脳の使い方が記されていて、その中には
「笑顔を鍛えよ」という項目もあります。
笑顔と
勝つことの関係については同書をお読みいただくとして、
笑顔は大切らしいです。毎日、すばらしい笑顔をつくれるようにすることが好結果に結びつくようなので、とりあえず今晩から鏡に向かって
笑顔をつくれるようにしてみませんか😄