レーヴディソールは名牝に育つことが約束されたようなもの!?
文/編集部(W)、写真/森鷹史
周囲の期待に応えるのは大変なこと。ましてや、
単勝1.1倍の圧倒的1番人気ともなると、見ている側のこちらが
緊張するほどだ。ところが、
レーヴディソールはその
周囲の期待のさらに上を行くパフォーマンスを演じてみせたのではないか。しかも、
颯爽とした脚取りで。
レースは1000m通過が60秒1のスローペース、レース上がりは34秒4で、
展開的には先行馬有利。実際、4角4番手以内につけた
ライステラス、
メデタシ、
タガノラヴキセキが②~④着を占めた。その中、
レーヴディソールはいつも通り、後ろからの競馬で外を回る形。
直線に向くと、内ラチ沿いで
タガノラヴキセキと
ライステラスが競り合っていたが、
レーヴディソールは
別次元の脚色(メンバー中最速の上がり33秒6)で、ノーステッキのまま、あっという間に突き抜けて4馬身差の圧勝。
芦毛だけに、まるで
『ダビスタ』での
オグリキャップを見ているかのようだった(笑)。
福永騎手はレース後、
「自分が乗った中で、これだけインパクトがある馬はいままでにいませんでした。ここまで楽に重賞を勝ったことはないと思います」とコメントしていたが、見ている側だけでなく、
鞍上にも
衝撃を与えたのだから恐れ入る。ひょっとすると、当の
レーヴディソールがもっとも冷静だったのかもしれない。
チューリップ賞が重賞に昇格した94年以降、1番人気で勝利したのは01年
テイエムオーシャン(3勝)、04年
スイープトウショウ(3勝)、07年
ウオッカ(7勝)、09年
ブエナビスタ(5勝、現役)。いずれも
押しも押されもせぬ名牝であり、G1勝利(馬名の後ろ)は
計18勝にも上る。
また、レースでのパフォーマンスという観点で見ると、同じく94年以降、②着以下に4馬身差以上をつけて勝利したのは96年
エアグルーヴ(5馬身差、2勝)、01年
テイエムオーシャン(4馬身差、3勝)。G1勝利(馬名の後ろ)は
計5勝となる。
ちなみに、07年の
チューリップ賞は①着が
ウオッカ、②着がクビ差で
ダイワスカーレットだったが、③着
レインダンス以下には6馬身差がついていた。
ダイワスカーレットもG1・4勝を挙げた、
近年屈指の名牝である。
さらに言えば、
レーヴディソールは今回、
上がり33秒6を計時していたが、94年以降の
チューリップ賞で、
33秒台の上がりを計時して勝利したのは07年
ウオッカだけ。
チューリップ賞の過去の傾向から弾き出される結論は、
「レーヴディソールは名牝に育つことが約束されたようなもの」といった感じか。
そんなにあれこれとデータの裏付けを取らなくても、今回見せたパフォーマンス、
福永騎手の
「いまのところ注文はありません。無事に行ってほしい」というコメントが、すべてを物語っているという話もあるが、本当に無事に行ってほしいものだ。
それにしても、
レーヴディソールに対し、すでに
「女ディープ」といった表現をちらちら目にするようになったが、
デビューからメンバー中最速の上がりを計時し、1番人気で勝利を重ねている点では
ディープインパクトとまったく同じ。
細かく見れば、
ディープインパクトは国内のレースに限ると、単勝オッズはすべて
1.0~1.3倍だったのに対し、
レーヴディソールは
1.1~2.4倍だから、その点は
異なるのだが、これについては
ディープインパクトが
怪物だったとしか言いようがない。
日本競馬史上最強と言っても過言ではない
怪物と、3歳3月の
チューリップ賞の時点で比較されることを
評価してしかるべきか。あどけなさが残る
芦毛の馬体に、底知れない強さ、可能性を秘めた新世代のニューヒロイン・
レーヴディソール。その
存在感を改めて示した
チューリップ賞だった。