ヘニーハウンドの“特異ぶり”は強烈に脳裏にインプットされた
文/編集部(W)、写真/森鷹史
有力候補と見込んでいた
エーシンヒットマンが右肩跛行のために
出走取消。さらにレース直前、
アフリカンハンターが馬場入場後に左肩跛行を発症したため
競走除外。
「これはどうもすんなり収まりそうにない」と、最後にゲートに向かう
ヘニーハウンドを見ながら、なんとなくそんな気配を感じた。
結果、1番人気の
アフォードは掛かり気味に先行して
⑩着に失速、3番人気の
マジカルポケットは
差し届かず⑤着まで。2番人気の
テイエムオオタカは2番手追走から③着に粘り込んだが、
連対圏内には届かず。直前の予感は
当たったが、肝心の馬券は
当たらないという……。
勝ったのは9番人気の
ヘニーハウンド。逃げ切りを決めた
新馬戦のレースぶりから、現役時代にダート短距離のG1で2勝したヘニーヒューズの産駒らしく、
軽快なスピードが武器なのだろうとは思った。直前の追い切りの坂路4Fでも
51秒5という好時計を計時していたことからも、それは窺えた。
だが、キャリア1戦で
3歳限定重賞を勝った馬が浮かんでこない。
「あの…雨の日のフローラSで差し切りを決めたパラダイスクリーク産駒」と周辺情報は出てきても、肝心の馬名(正解は
02年フローラS①着の
ニシノハナグルマ)が出てこない脳が悪いわけではない。きっと
該当馬が少ないのだ。
また、
『ファルコンSの考え方』で
「阪神芝1200mの重賞は96年以降で20レースあったが、馬番13~16番は[1.3.2.43]で、勝ち馬は09年セントウルSのアルティマトゥーレ(8枠16番)しかいなかった」と書いた通り、
8枠15番という枠順も気になる。
新馬戦も逃げ切りで3馬身差の
圧勝だったとはいえ、1000m通過61秒3のスローペース。過去4年の
ファルコンSのそれは56秒2~57秒0で、舞台が阪神芝1200mに替わったとしても、
新馬戦以上に
ペースアップすることはほぼ間違いない(実際、1000m通過は56秒8だった)。果たして流れに乗って競馬ができるのか。
自分の中で、
ヘニーハウンドに対する
好材料と
不安材料を
天秤にかけたところ、
不安材料に軍配が上がってしまい、馬券から外す結論に至った。だが、決して負け惜しみではなく、もし同じような局面に遭遇した場合、
馬券から“外す”ほうが、奏功することが多いように思えてならない。
90年以降、キャリア1戦で
3歳限定重賞を制したのは
シクレノンシェリフ(
93年毎日杯)、
フューチャサンデー(
00年クイーンC)、
ビッグプラネット(
05年アーリントンC)。
652レース中、該当馬はたったの3頭だけ。キャリア1戦で
3歳限定重賞を勝った馬が浮かんでこないのも
納得である。
96年以降の阪神芝1200m重賞における枠順データについても、
馬番13~16番は[1.3.2.43]と触れたが、
該当馬49頭中で勝ち馬はアルティマトゥーレ1頭だけだった。
だからおそらく、前記した
不安材料をすべて跳ね返し、勝利した
ヘニーハウンドが特異なのだろう。しかも、
3ヵ月半ぶりの中、スタートで
出遅れて
外、外を回るロスがありながらも突き抜けてしまったのだから、ただただ
感服するばかり。
ヘニーハウンドは
7分の2の抽選を突破して出走にこぎつけたようだが、
運も味方につけるあたり、やはり
只者ではないということか。まあ、
652分の3や
49分の1をクリアした
ヘニーハウンドにとって、
7分の2は
“高確率”の部類だったのかもしれないが。
1番人気の
アフォードは
馬券圏外となったが、
スギノエンデバーが
②着に食い込み、サクラバクシンオー産駒はこれで6年連続で馬券圏内入り。
「サクラバクシンオー産駒は本当に偉いなあ」とも思ったが、10年後にそのことを思い浮かべるだろうか。
10年後、
「あの…阪神芝1200mのファルコンSで8枠に入り、キャリア1戦の身で勝利したヘニーヒューズ産駒」と周辺情報は思い出せても、肝心の馬名が出てこない可能性も否定はできない。だが、
ヘニーハウンドの“特異ぶり”は強烈に脳裏にインプットされた。10年後もきっと、そのことはすぐに
アウトプットできるはず。