調教時計の数字には、その裏に隠された部分もあるものです
2011.4.14
先週、桜花賞が行われた日曜日の阪神第1レース(3歳未勝利戦、ダート1200m)で、ミヤビヘレネが勝ち、今年の3勝目を挙げることができました。
出馬確定直後に臨場を先生(尾関調教師)から頼まれて現地に行っていたのですが、競馬場にいて勝つとまた嬉しさも格別です。
第9レース(忘れな草賞)にも出走馬(シンクオブミー)がいたので、桜花賞も観て帰ってきたのですが、あそこまで凄い満員電車に乗ったのは、子供の頃に巨人戦のナイターを観た後以来です(笑)。
さて、今週は、追い切りのタイムについて読者の方からメールをいただいているので、そのお話をさせていただきたいと思います。
どのように時計を判断しているのか、というご質問をいただきましたが、これは、完歩を数えることで判断しています。
1ハロン(200メートル)を15秒で進んでいくとされる、いわゆる「15-15」というのは、基本的には34完歩か、33完歩だと言われています。トビの大きさによって、1~2完歩差し引きするのですが、誰に聞いても34か33完歩と言うはずですよ。
その時に重要となってくるのがハロン棒なのですが、ウッドチップなどのコースの場合は200メートル間隔で立っていて、坂路は100メートル間隔となっています。僕は坂路の方が合わせやすかったりしますね。
ひとつ種明かしをしますと、テンの2ハロンを15-15で行くように指示が出ていたのに、1ハロン目は15-15だったのが、2ハロン目で14-14になってしまったとします。
その時には、3ハロンのところから外目を通るようにするのです。そうすると、距離ロスで全体的な時計が合ったりするのです。逆に、遅いときには内目に進路を取るようにします。
馬のことを思えば、良いこととは言い切れないかもしれませんが、指示通りに乗ることが仕事である調教助手としては大切なテクニックのひとつだと思っています。
もうひとつ、追い切りの時計について、最近、ウッドチップのタイムが遅いように感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、それは、外を通ることになったからです。これまでは速い馬は内、遅い馬は外というルールだったのですが、これが逆になったのです。
以前のウッドチップでは、速い馬なら64秒台も記録されていましたが、変更以降は70-40というタイムが出なくなってしまいました。
まったくと言っていいほど、以前とは時計が違いますので、現在、新馬が馬なりで70-40というタイムを記録したら、かなり優秀ですよ。
ちなみに、芝よりも外に位置するポリトラックで65秒台を出すのは簡単です。このように、通る位置ばかりでなく、馬場によっても時計というのは違ってきます。実際、乗っていても完歩も違ってきますからね。
調教の時計については、賛否両論分かれるところでありますが、僕自身は絶対的ではないと思っています。
ただ、追い切りで速いタイムを出せる馬というのは、新馬戦ではなくても、いつか能力を見せるケースが多いように感じます。
競馬に行ってイレ込んでしまったり、馬込みが気になったりする馬も中にはいますが、追い切りで速い時計を出せる馬は、どこかで走ってきたりするのですよね。
同じ時計でも内容によって違いがあるので、そのことについてもお話ししておきましょう。
同じ15-15だとしても、持ったままで、そこで放せばさらに伸びるという手応えを感じさせられる馬がいる一方、もうアラアラでステッキさえ使わざるを得ない中での15-15ということもあります。
数字の裏に隠されている部分もあるということです。さらに言えば、手綱が動いていなくても、実はその先というか余裕がない場合もありますからね。
(小林)久晃さんとの対談でも出た話ですが、僕は、テンの2ハロンを15-15というのが基本だと、先輩たちに教えられました。そこから先は、馬の手応えや雰囲気で決めていくのがいいのでしょうね。
調教助手としては、テンの2ハロンを15-15で乗れなかった時には怒られて当然と思います。そんな話は読者の方々には役に立たないですかね。それであれば、ウッドチップでは70-40という数字に注目していただければと思います。
来週からは、笹倉武久元調教師との対談がスタートします。個人的には、とても楽しかったので、皆さんにもぜひ読んでいただければと思います。
ということで、最後はいつも通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。