青葉賞史上最速の上がり3Fタイムで優勝したウインバリアシオンがデータを覆すか
文/編集部(M)、写真/森鷹史
勝ち馬は1~3番人気のことが多い青葉賞だが、今年は
6番人気の
ウインバリアシオンが制した。4番人気以下の馬がこのレースを制したのは、96年の
マウンテンストーン(8番人気)以来、実に
15年ぶりになる。
ただ、
ウインバリアシオンは単勝人気こそ6番目だったが、例年の
青葉賞勝ち馬と似た結果を残した面もある。それは
上がり3Fの速さだ。
各馬の上がり3Fの記録が残っている
90年以降の青葉賞を振り返ると、その勝ち馬は、05年の
ダンツキッチョウ以外の
20頭がメンバー中3位以内の上がりで優勝していた。
今年は
1000m通過が63秒7という超スローペースとなる中、後方に位置した
ウインバリアシオンが
33秒6という上がりで差し切った。これは18頭中
1位の上がり3Fタイムだった。
逆説的に言えば、メンバー中で上位の上がりを使うであろう馬を探し出せば、
青葉賞の勝ち馬は見つけやすかったはずなのだが、レース前にそれに
ウインバリアシオンが該当すると言い切るのはちょっと難しかったように思う。
ウインバリアシオンはデビューからの2連勝をいずれも
メンバー中最速の上がりで制している。特に2戦目の
野路菊S(阪神芝外1800m)では
33秒9という上がりを使っていて、
「速い上がり」と言える
34秒台ではなく、
「超速い上がり」である
33秒台の上がりも使えることは実証済みだった。
ただ、その後の重賞での3戦が
ラジオNIKKEI杯2歳S④着、
きさらぎ賞④着、
弥生賞⑦着で、
きさらぎ賞と
弥生賞では33秒6~34秒3という速い上がりを使っていたものの、これは
メンバー中3位以内ではなかった(
ラジオNIKKEI杯2歳Sの上がりもメンバー中4位以下)。
今回は、上がり3Fがメンバー中4位以下になったことがない
トーセンレーヴや、
若駒Sと
弥生賞でメンバー中最速の上がりで差してきていた
ショウナンマイティが出走していて、そちらに食指が動くのが自然な流れと言えた。それらによって
ウインバリアシオンの相対評価(相対的な上がり3Fの順位)が下がっていたように思え、それが
6番人気という評価につながったのではないだろうか。
結果的には、鞍上の
安藤勝騎手がメンバー中最速の上がりとなるような騎乗をした、とも言えるかもしれないが、さすがに
安藤勝騎手が
「青葉賞では速い上がりを使う馬が強い」というデータを知っていたわけではないだろう。
たとえ知っていたとしても、それに応えた馬(
ウインバリアシオン)がエラい。なにせ、
33秒6という上がり3Fタイムは、昨年の
ペルーサ(33秒8)や04年の
ハイアーゲーム(33秒7)より速く、
過去の青葉賞勝ち馬の中で最速なのだから。
青葉賞史上最速の上がり3Fタイムで優勝を遂げた
ウインバリアシオンなら、過去25年のダービーで[0.6.3.72]という
青葉賞組の負のデータを覆せるかもしれない……そう言いたいところだが、そう簡単ではないのも
日本ダービーであるという気もする。
90年以降の
ダービー(21回)では、そのうち18頭の優勝馬が
メンバー中3位以内の上がりを使っている。
ダービーでも上がり3Fの順位は大切。そう言うことはできるのだが、
青葉賞と
ダービーのレース上がりを見比べると、
同じ性質とも言い切れない感じがするからだ。
00年以降の両レースの
上がり3Fを記すと、次のようになる。
年 |
青葉賞 |
ダービー |
2011年 |
34秒4 |
|
2010年 |
34秒5 |
33秒4 |
2009年 |
35秒0 |
39秒7 |
2008年 |
34秒8 |
36秒4 |
2007年 |
35秒5 |
34秒4 |
2006年 |
35秒3 |
35秒3 |
2005年 |
34秒7 |
34秒5 |
2004年 |
34秒1 |
35秒9 |
2003年 |
34秒5 |
36秒3 |
2002年 |
34秒6 |
35秒6 |
2001年 |
34秒8 |
37秒0 |
2000年 |
35秒7 |
36秒1 |
青い地色は稍重~不良の道悪道悪になったケースが
ダービーの方が多いとはいえ、
レースの上がり3Fが33~34秒台になるケースは青葉賞の方が多い。ダービーも、昨年のようなケース(スローペースで上がりの速い競馬になった)があるけれど、例年は
最後の力勝負になりやすい。
青葉賞と
ダービーが、つながっているようで究極の所ではつながりきれない(勝ち馬が出ていない)のは、出走馬のレベルとこんなレース質の違いに原因があるのではないだろうか。
果たして今年の
ダービーはどんなペースとなるだろうか。
ウインバリアシオンは今回と同じような
スローペースがベターなのだろう。
ダービーは、
皐月賞で先行した馬たちの動向がカギとなってくるかもしれない。