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エリンコートのオークス制覇の意義は大きなものがあったと思う
文/後藤正俊(ターフライター)、写真/川井博

レース20分前から東京競馬場上空が真っ黒な雲で覆われ、風雨が急激に強くなり始めたことが、大波乱の予告となった。

前評判では桜花賞①&②着馬が抜けた存在。マルセリーナ桜花賞で4角16番手の絶望的な位置から、父ディープインパクトを彷彿させる瞬発力で馬群をすり抜けて圧勝する強烈なレース内容。4戦3勝、これまで先着を許したのは牡・セン馬トップのレッドデイヴィスオルフェーヴルだけ。

母系はマイラー血統で自身もマイルしか距離経験がないが、逃げ馬不在の高速馬場で瞬発力勝負になることが予想されていただけに、2400mは大きな不安点にはなっていなかった。

ホエールキャプチャ桜花賞で4角大外を回って3/4馬身差の②着と、マルセリーナ以上に厳しいレースを強いられながら連対を確保。クロフネ産駒でも全兄ドリームセーリングは2600m戦で2勝目を挙げるなど芝長距離戦で実績を残しており、距離適性はむしろマルセリーナ以上。東京コースもクイーンC勝ちの実績があった。

この2頭が2.2倍3.0倍で、3番人気以下はすべて10倍以上。典型的な「2強対決」の様相だった。

だが、まだキャリアの浅い3歳の乙女にとって、土砂降りの雨の中で人気を背負ってのレースは想像以上に厳しい条件だったのだろう。マルセリーナはスタートこそうまく出たものの、1コーナーで外から馬群が押し寄せると、ひるんだように下がってしまった。

桜花賞では馬群をまったく気にしなかったが、を被る経験がなかったためか、まったく反応が違って見えた。淀みのない流れの中、後方3番手外側の位置取りは致命的に思われた。4角でも大外に振られてしまい、立て直して内に進路を切ったものの前がに。桜花賞馬の意地で離れた④着まで追い上げるのが精一杯だった。

一方のホエールキャプチャはスタートで出遅れた。雨が強くなり始めてからテンションが高くなっていたことが影響したようだ。池添騎手はすぐに内に入れてロスを解消する騎乗に切り替え、芦毛の馬体を泥まみれにしながら直線あわやのところまで追い上げたが、クビ、ハナ差及ばずの③着。強いレースを見せながら、またしてもG1制覇には一歩届かなかった。

この天候の中、大外から一気に先頭に立って、唯一“きれいな体”で逃げ粘ったピュアブリーゼ②着善戦は、8番人気だったとはいえ、ある程度納得できるものだった。繊細な牝馬にとってを浴びずに気分良く走るに越したことはない。

だが、7番人気でもエリンコートの優勝は、その内容からも驚きが大きかった。2枠4番と枠順は絶好だったが、さらに内のハブルバブルメデタシ好発だったため、経済コースを通れたわけではなく中団真ん中の位置取り。直線に入ると、豪雨のためスタンドに点灯したライトに物見をしたようで、内にヨレて、スピードリッパーと接触して審議の対象になってしまった。

その後も後藤騎手は立て直すのに必死で、まともに追うこともできない状況。それでもピュアブリーゼを捕らえて、ホエールキャプチャの追撃を退けたのだから、“何か”に恵まれたわけではなく、行儀はともかくとして、とてつもなく強い勝ち方を見せたことになる。500万忘れな草賞連勝していたものの、ここまで急激に実力を付けているとはとても想像できなかった。

しかも、父デュランダルはスプリンターズS1勝②着2回、マイルCS2連覇の名スプリンター&マイラー。母エリンバードはマイルの伊1000ギニー勝ち馬で、来日して安田記念京王杯SCに出走している、やはりマイラー。血統に多少でも興味がある関係者、ファンなら、オークスで正攻法のレースをしてさらに強さを見せるとは考えにくいはず。

デビュー戦2戦目と芝1200mを使ったように、陣営も当初はスピード馬だと判断していたということだろう。その意味では、単勝7番人気という以上のアップセットだった。

もっともそんな“大波乱”だったからこそ、WIN51億4685万110円出現の立役者にもなったのだ。競馬の祭典・日本ダービーを前に、ギャンブルとしての競馬の「難しさ」「魅力」を多くのファンに知らしめたという点でも、エリンコートオークス制覇の意義は大きなものがあったと思う。