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幹細胞移植は魔法の手術ではありません
2011.6.23

今週は、競走馬にとって不治の病と言われる屈腱炎に対して、最近よく耳にする『幹細胞移植』についての話をさせていただきたいと思います。

移植を受けて復活した馬たちがいて、その移植手術については各方面で取り上げられているので、ご存じの方も多いと思いますが、ひょっとすると、ブラックジャック的に、廃用になった馬の腱をそのまま移植して完治することを想像する方もいらっしゃるのではないでしょうか。

僕自身、トレセンに入って間もない頃にシマトラという馬が屈腱炎を発症して、その時にこの幹細胞移植が行われ、経験したことがあります。

いまでも、JRAでは「試験的に」ということで手術を行なっていますが、当時はもっとレアケースであったはずです。

手術の概要を簡単に説明いたしますと、骨髄から幹細胞という細胞を取り出し、培養して、損傷した腱を綺麗に再生させるために幹部に注入するのです。

シマトラは、トレセン内で開業している永田獣医にお願いしたのですが、その時は、お尻の脂肪から幹細胞を取り出して移植する方法が取られました。

それでも、シマトラは1年以上の休養を余儀なくされました。現在、屈腱炎に対しては見舞金が支給されていて、それは9ヵ月とされています。つまり、発症してから復帰までに9ヵ月程度はかかるということなのですが、このことを考えれば、幹細胞移植を行なったからと言って、確実に復帰を早くすることができるわけではないということです。

屈腱炎に対して行われる幹細胞移植の目的についてお話をしますと、屈腱炎というのは腱が損傷して出血することを言うのですが、そのまま休養しても幹部は治ります。

ただ、人間が傷を負った時にケロイド状になりますが、あの状態になるのです。そうなると、今度はその周辺が損傷する可能性が出てくるとされているのです。

そうならずに、綺麗に修復するために、幹細胞移植を行なうのです。綺麗にすることで再発の可能性が低くなるということなのです。

ただ、幹細胞移植の手術を受けても、復帰が早まることが約束されるわけではありません。再発してしまったり、復帰することが叶わない馬たちもたくさんいます。

このような幹細胞移植というのは、人間にも用いられているのですが、医学的には確かな証拠と言いますか、効果が実証されているわけではないのが現状です。馬で言えば、細胞が腱細胞に変化したことを証明することができていない、と言われています。

現在JRAでは、この幹細胞移植は試験的ということで無料で行われていますが、有料になれば莫大なお金がかかるでしょう。屈腱炎に対して支払われる170万円の見舞金以外、休養している間の預託料も馬主さんの払いとなるわけで、負担は決して小さくありません。

屈腱炎というのは、休養することで治ることは治ります。さらに言えば、時間をかければかけるほど良いと言われているのですが、先ほどもお話をしたように、ケロイド状になった幹部の周辺で再発する可能性が高いのです。だから不治の病と言われるわけですが、少しでも可能性があるならと、幹細胞移植が注目されるのでしょう。

ただ、幹細胞移植は医学的には試験的な段階であって、魔法のような特効的な方法ではないということなのです。

毎度のことながら、長くなってしまいまして、どうもすみません。もしこの件について、専門家の方がいらっしゃいましたら、ぜひメールでさらなるレクチャーをいただければ幸いだと思っております。

来週からは、『日刊競馬』のトラックマン・黒津伸一さんをお迎えして、対談をお送りします。どうぞ、お楽しみに。

あっ、あと、先日、田辺と200勝&新潟リーディングのお祝いを焼き鳥屋さんで、身内でやりました。


対談の出演をお願いしたところ、『このままここでの話を載せれば?』と言われたのですが、準備もしていませんでしたし、危ない話も多かったので、また改めてということになりました。ファンの方々はお待ちください。

それでは最後はいつも通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。