涼しい夏の函館は、高齢馬を狙うべきだった!?
文/編集部(T)、写真/川井博
①着の
キングトップガンは
8歳馬、②着の
マヤノライジンは
10歳馬、③着の
アクシオンは
8歳馬。出走メンバーの16頭のうち12頭を占めた7歳以下の馬を一蹴し、今年の
函館記念は、さながら
「オジサン祭り」となった。
キングトップガンは前走が
目黒記念勝ち、
マヤノライジンは06年の
函館記念で③着、札幌開催の09年に②着、
アクシオンは重賞2勝と、いずれも実績のある馬だった。それが今回、なぜその実力を発揮できたのだろうか。
7月14日更新の
「トレセンうらばなし」で、「夏負け」について取り上げたが、記事を執筆していただいた橋浜氏に今回のレースの結果について聞くと、
「実力もさることながら、涼しい函館に行ったことが関係したのかもしれませんね」とのことだった。
7月末になり、全国的にかなり気温が上がってきたが、函館に行っている方に聞くと、
「ここは本州に比べたら天国だよ。気温も札幌ほど上がらないし」いう言葉が返ってきた。
確かに、この日の函館は、曇り空だったことも影響したのか、
気温が25度程度までしか上がらなかった。節電で冷房を
28度に制限されている会社より涼しかったほどだ(笑)。
人間は年齢を重ねると新陳代謝が落ちて、
夏バテしやすくなるという。確かに自分の例を振り返っても、最近は外の暑いところに出るとすぐに体調を崩すようになってしまった。それは馬も同じで、夏の暑さに対する適応力は若い馬の方が高いそうだ。
また、
「クーラーがない厩舎の馬の方が、夏に強い」という指摘もある。クーラーの普及で人間が夏バテになりやすくなったように、クーラーに慣れた馬にも同じことが言えるのだろう。
函館記念に出走した馬たちの多くが利用した函館の
出張馬房には、クーラーは設置されていない。そういった環境面で出走馬の
条件がフラットになって、実力を発揮しやすくなった部分もあるかもしれない。
いずれにしても、函館にいる関係者が
「天国」と言うのだから、馬にとっても過ごしやすいのは間違いないところ。今回は、
高齢馬が涼しい函館に行って、力を発揮しやすくなった結果、とも考えられるのではないだろうか。
データを調べてみると、今年の函館が開幕した
6月18日から7月17日までの古馬混合の平地のレースを対象に、函館とそれ以外の競馬場における年齢別の勝率を見ると、以下のようになる。
|
3歳 |
4歳 |
5歳~ |
函館 |
6.2% |
10.1% |
8.6% |
函館以外 |
8.0% |
10.9% |
3.3% |
これを見ると、確かに
函館における5歳以上の馬の勝率は、他の競馬場に比べて格段に高い。
「夏は牝馬」という格言があるが、
「涼しい夏の函館は高齢馬」という格言も成立するのかどうか、しばらく注目していきたい。
一方、レースを振り返ると、
道中の位置取りの差が結果を大きく左右したことが分かる。
逃げた
メイショウクオリアの直後の内につけたのが
マヤノライジンで、その直後につけたのが
キングトップガン。
メイショウクオリアも④着に粘ったので、
道中で好位の内にいた馬が軒並み上位に入る結果となったからだ。
キングトップガンの4コーナーでの位置取りを見ると、外から他馬が仕掛けるのを横目に見ながら、仕掛けをワンテンポ遅らせていた。それにもかかわらず、直線を向いた時にはすでに前を行く
メイショウクオリアと
マヤノライジンの直後に上がってきている。
直線で前の2頭を捌くのに手間取ったために僅差にはなったが、スムーズなら
キングトップガンはもっと突き抜けていたはず、と思わせるほどの末脚だった。
連対した馬にとって、軽ハンデ(
キングトップガンは
54kg、
マヤノライジンは
53kg)の恩恵はもちろんあったはずだが、今回の結果を見て、改めて
このコースで内を突くことの重要性を教え込まれたような気がする。
外枠の馬で固めたために、
WIN5はこのレースであえなく脱落してしまったが、来年はこの反省を活かそうと思う。