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今年から変更された厩舎制度についてお話しします
2011.7.28

先週お伝えをした通り、今週は厩舎の制度改革について話をさせていただきます。

ご存じの方々もいらっしゃるかもしれませんが、今年の1月1日から厩舎制度に関していくつかの変更がありました。

まずひとつは、「副馬手当」が廃止となったことです。副馬手当について説明しますと、基本的に厩務員さんひとりに対しては担当馬が2頭とされています。1頭が競馬に行くと、厩舎にもう1頭が残ることになりますよね。その残された馬を担当すると、1日当たり2900円の「残地馬手当」というものが支給されてきました。

また、厩務員さんがケガをしてしまい、担当馬だった2頭を他のふたりで手分けするという場合にも、それぞれ担当した人に支給されます。いま開催されている新潟などですと、1泊2日となるケースがありますので、その場合は2900円×2日分ということで5800円が支給されてきたのですが、これが一切支給されなくなったのです。

他に変更となった点で言いますと、これまで関東では20馬房に対して、13人体制が堅持されてきました。このことはご存じの方も多いと思いますが、これも変更されました。

以前は、持ち乗りと言われる調教厩務員を含む厩務員10人と調教助手3人ということだったのですが、今年の1月1日から正規採用者は12名で、残り1名を競馬学校卒業生のなかで採用を待っている人間、通称「ピンク帽」と呼ばれるスタッフを雇うスタイルが認められました。

極端な話をすれば、正規採用者が12名で、残り1名は、ピンク帽を代わる代わる雇用することも可能という、そういうルールなのです。

「ピンク帽」についてご説明しますと、アルバイトと同じ扱いです。給与は日給で、賞金の5%にあたる進上金は正規採用者と同じように支給されるものの、ボーナスの支給はありません。

定年退職者の方々を中心として、ケガなどによって欠員が出た場合に「ヘルパー」という存在がいて、それとほぼ同じではあるのですが、大きく違うのは調教に騎乗できることでしょう。

ヘルパーの方々は、たとえ技術的に優れていたとしても、調教で騎乗することは認められていなかったのです。それに対してピンク帽の方々は、我々と同じように騎乗することが可能です。

給与についても変更が行われ、今年の1月1日以降に正規採用者となった人たちについては、それまでの給与体系のなかで勤続年数によって決められていた基本給の金額から20%減らされたばかりでなく、これまでは勤務してきた年数に応じて支給されてきた勤続手当が支給されないということになりました。

昨年12月に騎手の方々が何人も引退するというニュースがありましたが、騎手の方々に関しても、それまでの騎手としての経験を考慮しない、つまりは1年目の新人と同じ扱いになると、当初伝えられたことが大きく影響したと言われています。

このことについては、一応、2年間の猶予が与えられ、もし調教助手などに転向する場合は2年以内ならば、以前と同じように騎手として過ごした時間をカウントしてもらえるということで落ち着きました。

今年の1月1日から変更されたポイントは、大きく分けて以上の3つになりますが、僕自身は今回の厩舎システムの改正に関して、メリット制に次ぐ改悪だと思っています。

現在の日本経済の状況のなかで、我々が保護されていると言われるのも承知していますし、実際に恵まれているという実感もあります。それでも、これでいいのかと思わざるを得ないのです。

ピンク帽に関して言えば、定年退職者の代わりに厩舎に勤務したとします。毎日、我々と変わりなく、社宅に入居が許されないなど福利厚生面ではむしろ厳しい条件のなかで、一生懸命働いても、そのまま正規採用されるという保証はありません。

しかも、ピンク帽として勤務した厩舎で正規採用となろうとすると、代わりとなった定年退職者とは別に、定年などによる退職者が出ないと認められないのです。転厩ではダメなのです。

退職者ということですと、厩舎によっては、それこそ10年以上出ないこともあるわけですよ。やがては、競馬学校は卒業したものの、ピンク帽としてさえ勤務できない可能性も出てくると思います。

新規採用者の給与に関しては、預託料の高騰におけるいちばんの大きな要因と言われる人件費を抑えることが目的なのでしょうが、僕自身も含めて、給与体系の抜本的なルール改正が必要、いや、必要不可欠でしょう。

ブッチャけさせていただきますが、給与が下がるのは僕自身も嫌です。でも、それも含めて制度そのものの改革をしなければ、競馬の将来を考えた時に良くなっていくことはないと思うのです。

ハッキリ言いますと、人事権や給与に関して、いま現在、調教師には一切の権限が与えられていないのが現実です。極端な言い方をすれば、スタッフに関しては、あくまで労働組合に人事権があり、いる人員のなかで選ぶしかなく、給与に関しては年功序列で決められているため、頑張っているから給与を上げるということは許されていないのです。

大袈裟な言い方をしますが、このままいけば、競馬が滅びて、組合だけ残るという状況さえ現実に起こり得ると感じさせられます。これから競馬の世界を目指す人たちが魅力を感じずに、どうして競馬の未来がありますか。

週1日の休み、有給休暇も制度としてはありますが、実質的になかなか取り難いのが現実です。そのようななかで、夜中から夕方まで休憩を挟むものの、夢中になれるのは、そこには大きなお金が得られるという魅力も少なからずあると思っています。僕自身も、頑張ればお金を得ることができるということに、少なからず喜びを感じますから。

もちろん他の仕事にはない夢もありますし、恵まれている面があることも理解しているつもりですが、僕自身はこれから競馬を支える若者たちに魅力を感じ取ってもらうようにすることが何よりも大切だと考えています。

熱というか、欲望は決して悪いことではないし、個人個人、もっと言えば日本競馬のレベルをここまで押し上げてきた原動力のひとつであったと思うのですよ。

厳しい現実を考えれば、手当をはじめとするカットは受け入れなければならないでしょう。ただ、もっと競馬の将来というものを念頭に置いた改革が行われるべきだと思います。

以前に対談に出ていただいた桑原さんが、この仕事に就いたら休みなんかないと思うのが当たり前というような話をしていましたが、そう思いますよ。でも、それはそれだけの魅力があるからこそだと思うのです。

毎度のことながら長くなってしまいまして、どうもすみません。来週からは武士沢騎手との対談がスタートしますので、どうぞお楽しみに。

といことで、最後はいつもの通り『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。