いくつもの「わざわざオバケ」に惑わされた(2週連続で)
文/編集部(M)、写真/川井博
今年の
小倉記念には、さまざまな
「わざわざ」が渦巻いていたような気がする。そう感じたひとつは、
イタリアンレッドの
単勝人気だった。
前日売り時点で、単勝オッズが
6.4倍ながら
イタリアンレッドが
1番人気に推されたのを見た時は、「まあ、そうだろうなあ」という感想を持っていた。
「メインレースの考え方」で触れられていたが、今年の
小倉記念は前走好走馬が少なく、前走で③着以内に入っていたのは
イタリアンレッドと
ホクトスルタンだけだった。
ホクトスルタンは休み明けだったので、
普通に考えればイタリアンレッドを信用する人が多くなるだろうと予想していたのだ。
ところが、夜になるとすぐに
ナリタクリスタルに逆転されて、日曜日になったら
アドマイヤメジャーや
ヤマニンキングリーに肉薄され、最終的には
ヤマニンキングリーは再逆転したものの
アドマイヤメジャーと
コスモファントムに抜かれて、
4番人気に落ち着いた。
その単勝オッズは
7.6倍で、前日売り時点より
1.2倍も増えていた。土曜日夜以降のオッズの推移を見ると、
イタリアンレッドの単勝オッズが6.4倍より上がったことは一度もない。その人気はなだらかに下落していたことになる。
どうしてそんな事態になったのか。いろいろと想像を巡らせ、「
イタリアンレッドを軽視した」という人にも話を聞いてみたところ、そこに
「わざわざ」という思いを感じたのだ。
「前走を7番人気で勝った馬にわざわざ手を出すことはないだろう」、
「ハンデ戦で斤量が3kgも増えている牝馬をわざわざ買うことはないだろう」、
「開幕週の芝で、外枠から外を回る差し馬をわざわざ買うことはないだろう」。いろんな
「わざわざオバケ」が出没し、それらが折り重なって、
イタリアンレッドの単勝人気を下げていったのではないだろうか。
しかし、この状況は、最近も
別のレースで感じたことではなかったか。つい先週の話だ。そう、
函館記念の
キングトップガンである。
キングトップガンは前走でハンデ戦の
目黒記念を勝ち、斤量が
3kg増となった
函館記念も優勝した。
「7番人気でハンデ重賞を勝ち、次走のハンデ重賞で斤量が3kg増えて、4番人気で再び勝利する」というのは、今回の
イタリアンレッドもまったく同じ。
その単勝オッズも、
キングトップガンが
16.3倍(
目黒記念)→
7.6倍(
函館記念)で、
イタリアンレッドが
17.7倍(
七夕賞)→
7.6倍(
小倉記念)。似すぎていてちょっと恐いぐらいです(笑)。
キングトップガンについては、
「人気が上昇した8歳馬にわざわざ手を出さないでも…」という思いもあったのではないかと思われる。いろんな
「わざわざオバケ」に取り囲まれ、次第にその思いに洗脳されて…。それでいながら2週連続で同じような結末が訪れるという。
多頭数のハンデ戦は恐ろしいものだ。
「わざわざ」という思いを巡らせたのは、馬券を買う側だけではなく、レースに騎乗していた
騎手の間にもあったのではないかと推察される。というのも、直線で馬場の内に進路を取り、
思うように走れていない馬が何頭も散見されたからだ。
開幕週の芝で行われた今年の
小倉記念で、ペースが速くなり、
「わざわざ距離ロスをして外を回さなくても…」という思いがあったのではないか。特に真ん中から内枠があたった馬たちの鞍上は、
「開幕週の内枠でわざわざ外を回らなくても」という思いがあって当然だろう。
それでも結果的には
外を回った2頭が連対圏に入った。多頭数のハンデ戦が恐ろしいと前述したが、そもそも
競馬というもの自体が恐ろしいのかもしれない。
大勢の人が考えることは妙味が小さい、もしくは
発生する確率が低くなる、というのは世の常なのかもしれませんね。少なくとも
「ギャンブルの掟」とは言えるのだろうから、頭の中に入れておきたいものだ。
優勝した
イタリアンレッドは、急坂の中山芝で開催最終週だった
七夕賞を勝ち、平坦の小倉芝で開幕週だった
小倉記念も制したのだから、立派である。しかも、前走から
斤量が3kg増え、それでいながら
走破時計は3秒2も縮めた。牝馬も、夏も、
「格より調子」なのだろう。
1000m通過が61秒4のスローだった
七夕賞に比べて、57秒1とハイペースだった今回の方が折り合いは付けやすかったのだろうが、前走時に
中舘騎手が「乗り難しいタイプ」と話していた姿はまったく感じられなかった。夏が得意、小倉が得意ということに加えて、いよいよ
本格化したと見ていいのではないか。
サマー2000シリーズの初戦(
七夕賞)と3戦目(
小倉記念)を制したことで、
イタリアンレッドは同シリーズでは初めて
20ポイントを獲得する馬となった。
函館記念覇者の
キングトップガンが
札幌記念に向かうようなので、優勝争いはまだ分からないものの、同シリーズで2勝を挙げた馬は
イタリアンレッドが初めて。もし優勝できなくても
特別賞とかを贈ってあげてほしいくらいだ。
G3を連勝し、いよいよ
G2や
G1に挑戦していくことになるのだろうが、
イタリアンレッドはこれまでの7勝をすべて
7~9月に挙げている。今秋の
G1は10月2日の
スプリンターズSからになるので…………
「夏に強い馬をわざわざ秋のG1で買わなくても」という
「わざわざオバケ」をどうやって退治するかが我々の
次なる試練となりそうだ。