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距離適性と芝とダートの見極めはどちらが難しい? 武士沢騎手に聞きました
2011.8.11

先週、小野次郎先生が開業初勝利を挙げました!

5ヶ月目での初勝利ということでしたが、最近人気のある馬たちが出走していたので、チャンスは近いはずと内心で思いながら、応援していたのです。

騎手時代に一緒に仕事をしていた時、追い切りで良いタイムが出て、『次郎さん、いやぁ、この馬、動きますよ』と言うと、『追い切りと競馬は必ずしもイコールじゃない』と小野先生はいつも冷静な反応をしていました。

でも、調教師になってから話をした時に、『調教で良い動きをしたんだ』と言いながら、わずかながらですが騎手時代よりも反応があったのです(笑)。

初勝利についてのコメントで、騎手時代よりも重みを感じましたと言っていましたが、やはり感覚が違うものなのかなぁと思いました。

今回の小野先生は、調教師試験に合格してすぐに開業したということで、準備期間がまったくありませんでした。預託馬を確保する時間も十分ではなかったなかでのスタートだったのに、馬房が空いてしまうこともなく、経営することができているわけですよ。そのことだけでも本当に凄いことなのです。

話をしていても馬のことばかりを考えている感じですし、馬をよく見て、触っている先生なので、ここまでは時間を必要としましたが、初勝利をきっかけとして、一気に上昇気流に乗っていくはずです。

さて、今週は武士沢騎手との対談2回目をお送りします。それではどうぞ。

西塚信人調教助手(以下、西)前回の対談から武士沢さんを取り巻く環境は大きく変わりましたよね。西塚厩舎もなくなり、何より所属していた中野渡厩舎もなくなったわけですよ。心境の変化とかはありますか?

武士沢友治騎手(以下、武)他にも乗せてもらっていた厩舎がなくなっていってしまってるのですよね。古き良き時代ではありませんが、そういう時期も見せてもらって、またいま新たな時代なので、違うやり甲斐を感じたりしていますよ。

[西]昔は人と人とのつながりが重んじられましたが、いまはそればかりじゃありませんからね。

[武]それに対応していかなければなりませんし、そこが問われていると思っています。どこの世界でもあることだと思いますから。

[西]いまは簡単にフリーになる時代ですけれど、武士沢さんは最後まで所属していましたよね。

[武]お世話になったわけですし、師匠は師匠ですから。


[西]フリーになって良かったと思うところってありますか?

[武]時間的に余裕が生まれたことかな。

[西]厩舎がなくなるまで、午後、厩舎に行っていましたよね?

[武]いまでも、厩舎回りをしてますよ。何か落ち着かないし、厩舎でいろいろ話をしたりする雰囲気が好きだったりするのですよね。

[西]そう言えば、この間も、隣の柴田政人先生のところにいたのに、なかなかウチには来なかったですよね(笑)。


[武]盛り上がっていたんだよね(笑)。そういうことも含めて、他のいろいろな厩舎のいろいろな面に接してみたいという思いがあります。それができている面も良かったと思う部分ですよね。それこそ調教もそのひとつですよ。

[西]そう思うんですね。

[武]自分がここまでやってきた感覚がどこまで理解してもらえるのか、やっていけるのか、という思いもありますよ。

[西]厩舎によって違ったりする面ってありますからね。

[武]古い先生に対しては気が引き締まりますし、新規の先生たちには、どういう考えなのか分かっていなかったりしますので、それはそれで良い緊張感を感じながらやれるので、とても良いと思っています。

[西]具体的に、何か新たな発見とかはありましたか?

[武]こうですねと言った自分の言葉に対して、そうかと聞いてくれる人たちが意外と多いということですかね。

[西]そうですか。もともと多いように思いますけど。

[武]諸先輩方に、なかなか思っていることのすべてをストレートに言うのは難しいですよ。どうしても伝えたい時には『あのぉ~…』という感じで、お伺いを立てながら、というのが現実でしょう。でも、若い先生たちは、そうかと聞いてくれる方々は聞いてくれるという感覚はあります。

[西]そういうものですか。

[武]ただ、騎手として馬の状態については、伝えさせていただくようにしています。それをどこまで受け入れてもらっているかは分かりませんが、話を聞いてくれるというのは新たなやり甲斐ですし、もっと感覚を磨かなければならないと思っています。

[西]厩舎としても、騎手の方々に頼むということは、ワンスパイスが欲しいという部分はありますよ。

[武]極端な言い方をさせてもらいますと、ダメか大丈夫かだけではいけないと思うのです。こういう感覚で、こういうような雰囲気を感じますというように、できる限り詳細に伝えさせていただくべきだと思うのです。でも、まだ足りないですけどね。

[西]では逆に、フリーになって困ったことはありますか?

[武]それはありません。そう感じるのはいまだけかもしれませんが、特に不便を感じたことはないですね。師匠は絶対的な存在でしたので、正直、気も遣いましたし、それだけでも気分が違うからなぁ。

[西]師匠の眼がなくなったことで、競馬とかにも違った面が出てきたりしていますか?

[武]あるかもしれませんね。

[西]中野渡先生は偉大な騎手でいらっしゃったわけですが、騎乗について『友治、何だ、あの乗り方は』というようなことってあったのですか。

[武]数えきれないくらいでしたよ。他の厩舎の馬でも言われましたし、本当に頻繁に言われましたね。

[西]あっ、そうですか。いつまで言われていたのですか?

[武](調教師を)辞められる直前まで言われていましたよ。説明すると分かってくれたりもしましたが、ミスは絶対に見逃さなかったですね。

[西]凄いですね。

[武]やはり、元騎手の人たちは分かりますよ。誤魔化そうとしても、誤魔化せないです。

[西]でも、それが良かったりした部分でもあるんじゃないですか。

[武]もちろんそうです。

[西]やはり騎手経験の有無というのは大きいと思いますよ。実際、前後、左右の幅にしても、乗っていないと分かりませんから。

[武]ある時、「行ってほしい」と言われたことがあったのですが、初めの1歩は遅いものの、二の脚が速い馬で、挟まれて行けなかったのです。元騎手の調教師さんだったのですが、『隣の馬が速かったから仕方がない』と状況をすべて把握してくれたことがあったのですよね。

[西]なるほど。

[武]ゲートからの速さについて、いきなりトップスピードに乗れる馬なのか、それとも二の脚が速いのかということにもよりますし、隣に速い馬がいるのかいないのか、それよりも何よりも枠順によっても変わってくるわけですからね。もっと言えば、状況で馬の気持ちも変わりますから。

[西]向う三軒両隣ではありませんが、自分の馬の隣とか、その隣くらいまでの馬たちのゲートからの初速については、データとして頭に入っているものなんですか?

[武]新馬戦は別として、競馬をしていますので、分かっていますよ。

[西]競馬新聞の①①①という表記だけじゃ表されることのない、それこそ二の脚の速さというようなことがインプットされているわけですね。

[武]競馬をしたことがある馬については、だいたい分かっていますよね。

[西]そういう状況によって、乗り難いなと感じたりすることはあったりするのですか。

[武]テンから加速していくのではなく、徐々に加速していきながらハナを主張するような馬は嫌がられますよ。ペースを狂わせられるんです。

[西]あっ、そうですか。

[武]周りからすると、主張されれば『えっ、遅いけど行くの』という感覚になるのですよ。最初が遅いから、遅いという感覚が残っているのですが、一旦加速するとそこからは速かったりするのです。そうすると、気がついてみればハイペースに巻き込まれてしまっていたりするんですよね。

[西]なるほど。それは面白いですね。セオリーとしては、完歩の大きい馬は短いところに向かないと言われたりしますが、そのことについてはどう思われますか?

[武]逆に、1完歩が大きいから短いところじゃないとダメという馬もいますよ。

[西]気性面もありますけどね。

[武]気性が激しくて、完歩が大きい馬だったら、短いところは楽でしょうね。そこでもしズブいとします。完歩が大きいし、ズブいから、長距離を走らせる。そこで対応できれば良いですが、長距離は持たないという馬もいます。そうなった時には短距離の差し馬を目指しても良いはずですよ。短距離馬はすべてが速いというわけではありません。

[西]そういうことになると、ぜひ聞きたいのが、距離適性と芝とダートの見極めはどちらが難しいですか、ということなんですが。

[武]距離よりも芝とダートの方が明らかに難しいですよ。芝とダートは競馬で走ってみないと分からないことが圧倒的に多いですから。特に若馬たちですと、明らかに長いところということでない限り、まずは距離の短いところという意識が強かったりするじゃないですか。

[西]読者のみなさんにはこれまでにもお話をしてきましたが、本当にタイムオーバーの怖さがあるんですよ。マイル戦に行って、本当にこなせるのかという不安は常にありますから。

[武]まずは競馬の走りを見て、適性を見極めようという時には、やはり無難な方法になりますので、短いところということになりますよね。

[西]ただ、調教助手として、見極めができてこそ、プロフェッショナルなんじゃないかと思うんですよ。

[武]それは大切ですよ。

[西]その馬の状態はもちろんのこと、精神面までも的確に把握して、調教師に報告できなければいけないと思うのですよね。もちろん、最後に判断するのは調教師ですし、参考にするかしないかは調教師の判断次第ですが、自分自身のなかでは見極めが的確にできるようになりたいんですよね。

[武]そうでしょうね。でも、みんなの意見が一致する時というのは、やはり良い結果が出る可能性が高いように思います。

今週はここまでとさせていただきます。

対談の先週掲載分で話の出たロックドクトリンが500万円下で4着と能力を示す走りをしてくれまして、応援メールをいただいていた方からも『ここからが楽しみですね』というメールをいただいていたのですが、残念ながら故障してしまいました。

骨折ということで、詳細については検査の結果待ちなのですが、ケガとしては軽度にあたり、残念なことではありますが、復帰はできるはずですので、不幸中の幸いと胸を撫で下ろしています。

ロックドクトリンのように、春付近に未出走で入厩してきて、良い成績を残した馬たちの中には、そこからここまで放牧に出ずに調教が積まれて、競馬を走ってきているケースが少なくなかったりします。そこに暑さが追い打ちをかけるような形となり、肉体的にもいちばん厳しかったりするのですよね。

もしこのまま順調なら、次も競馬に出走していたはずですので、良いお休みになってくれるという思いで見守っていきたいと思っています。成長してくれれば、上のクラスでも、と思う手応えを感じさせられるので、復帰を楽しみに待ちます。

ということで、最後はいつもの通り『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。