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今後誰が騎乗し、どんなレースを見せてくれるのかも興味深い
文/後藤正俊(ターフライター)、写真/川井博

秋のG1シリーズが開幕しても、どことなく盛り上がりに欠く印象を感じていたが、その空気を一変させたのが菊花賞で3冠を達成したオルフェーヴルだった。

決してエリートではなかったステイゴールド産駒の小さな馬が、池添騎手との鉄壁コンビで1戦ごとに力を付け、ついに史上7頭目の偉業を達成。デビュー戦と同じようにゴール後に池添騎手を振り落としてしまったパフォーマンスを含めて、デビューからのコンビによる3冠は、競馬ファンの胸を熱くさせた。

その興奮が冷めやらないまま開催された天皇賞(秋)もまた、大いにファンを熱狂させる、見応えのあるレースとなった。売り上げも菊花賞に続いて、前年比でプラスとなった。

G1ウイナー7頭が集結したという以上に、ヴィクトワールピサヒルノダムール以外の古馬芝トップホースが顔を揃えたことで、史上稀に見る大激戦が予感されていたが、その王者に就いたのはG1未勝利だったトーセンジョーダン。同じ池江厩舎オルフェーヴルとはステーブルメイトであるものの、まったく正反対の立場に立つ馬だった。

トーセンジョーダンは生まれながらのエリートだった。父ジャングルポケット、母は未勝利だったエヴリウィスパーと血統的には目立っていなかったものの、07年セレクトセール1歳1億7000万円(税別)の高値で取引されたことでも、その馬体がいかに傑出していたかが伺える。

だが、その期待の大きさがプレッシャーになったのか、これまで経歴は順調ではなかった。デビュー2戦目から3連勝を挙げ共同通信杯でも②着になったものの、裂蹄のためクラシック出走は断念。4、5歳時も春シーズンはまともにレースを使えず、高勝率をマークしながらG1出走は今回が3戦目だった。

オルフェーヴルともっとも対照的なのは騎手で、デビューから16戦で12人もの騎手が騎乗している。このうち4人が外国人騎手だった。

安易な外国人騎手への乗り替わりにはファンから批判も少なくないと思われる。だが、この天皇賞(秋)に関しては、ピンナ騎手好判断が光った。1番枠を引き当てたシルポートがグイグイ飛ばし1000m通過が56秒5の超ハイペース。

宝塚記念で同馬に騎乗経験があるピンナ騎手は、スタミナ面には自信を持っていたのか、このペースを追走したら厳しいと判断したかのように中団でじっくりと脚を溜めた。ブエナビスタトゥザグローリーが早めに動いた時も不動の態勢。ダークシャドウが追い出すと、それを待っていたかのように一完歩遅らせてスパートに入り、キッチリと差し切った。

今春に続いて2度目の短期免許取得だったが、直線の長い東京コースに最初は戸惑いながらも、免許最終日で見事に答えを出して見せた。そして、ダークシャドウベリー騎手との叩き合いは、日本人騎手を応援するファンにとっては悔しい光景だったかもしれないが、じつに見応えがあった。

オルフェーヴルのようなクセのある馬には同じ騎手を起用し続け、トーセンジョーダンのように素直な馬は、乗り替わりが多くなったとしても、その時に鞍が空いている腕っぷしに長けた騎手を起用する。池江師はそんな考えを持っているのかもしれない。トーセンジョーダンに今後誰が騎乗し、どんなレースを見せてくれるのか、その面でも興味深い。

大観衆がざわめいたのには、1分56秒1という驚異的なレコードタイムも要因だろう。開催4週目でのこのタイムは異常とも思えるほどで、メイショウベルーガ競走中止もあった。個人的にも、あまりの高速馬場は馬への負担の大きさから賛成ではない。

だが、この天皇賞(秋)に限れば、それほど心配していない。馬にもっとも負担が掛かるのはレース終盤での10秒台でのラップタイムだと思っていて、スローで直線だけの競馬なのに好タイムが出てしまう時が怖い。

その点、天皇賞(秋)はハイペースでの消耗戦になったため、ある程度の疲れは残っても、致命的なダメージには至らないと考えている。各馬が全力を出し切るハイペースの競馬は、見ていても気持ちがいい。

待望の本格化を果たしたトーセンジョーダンはもちろん、仕上がり途上だった感のブエナビスタ、ハイペースを追走しながら粘ったエイシンフラッシュ、休み明けの外枠でも堂々のレースで復活をアピールしたトゥザグローリージャパンC有馬記念ヴィクトワールピサオルフェーヴルとどんな勝負を見せてくれるのか。秋のG1が盛り上がってきた。