騎手エージェントとしての目標は? 高尾さんに伺いました
2011.12.8
今年も残すところあと3週となり、寒さも徐々に本番モードへ移行していっております。
防寒対策に関してはフル装備なのですが、多くの皆さんは、さらに寒くなっていくなかで、いまフル装備をしてしまうと、辛くなってしまうと言うのですよね。でも、そんなことはなくて、早い時期から防寒対策をした方が風邪の予防にもなって、良いんじゃないかと思うんですよ。
実は、その防寒対策のアイテムに、各厩舎スタッフ全員に配布されたタートルネックのシャツが加わりました。多くのスポーツ選手が着用して流行っている、薄手で、ピタッとした野球のアンダーシャツのような感じのモノで、これが実に温かい。保温性に優れていて、早くも手放せなくなっています。
これからは指先が痛くなりますので、その対策もやっていきながら、寒さを乗り越えていきたいと思います。馬も、鼻水を出したりしている馬が出てきていますので、みんなお互いに気を付けながら、冬本番を乗り越えられるように頑張っていきましょう。
今週は『競馬エイト』のトラックマン・高尾幸司さんとの対談の3回目になります。それではどうぞ。
西塚信人調教助手(以下、西)三浦(皇成騎手)の番組担当として、目標みたいなものはあるのですか?
高尾幸司氏(以下、高)とにかくいまは三浦皇成にG1を勝たせたいです。その後のことはそれからです。いまはとにかくG1を勝たせたいです。
[西]それを聞いて分かりましたが、第一条件として三浦のことが好きだってことですね。そうじゃなきゃ、できないでしょう。
[高]それはあります。
[西]好きでもない人のために頑張れませんからね。
[高]他の人に皇成の悪口を言われると、やはり良い気分はしません。
[西]その愛情の深さが大切なんでしょうね。そうでなかったら、他人のために頭を下げたり、怒られたりってなかなかできませんよ。
[高]そうなんですかね。
[西]絶対に嫌ですよ。もし僕が同じことをやらなければならないと仮定すると、その時の基準は、上手いとかリーディング上位とかではなく、人間性だったり、高尾さんが三浦を想うように、相手を好きになれるかどうかだと思います。でも、僕には無理だと思いますけどね(笑)。
[高]元々、こういう立場というか仕事も好きなのかもしれません。芸能人のマネージャーとかをやりたいと思っていた時期もありましたから。
[西]なるほど。
[高]僕はこの世界に入る前に某有名外車の営業マンをしていたのですが、その時のことも、いまとなっては物凄く良い経験になっていると感じているのですよね。
[西]あっ、そうだったのですか。ヘンな質問ですけれど、高価な外車を売る感じと、良い馬の騎乗を確保する感じと、どちらが大変ですか?
[高]車は物ですし、騎乗は馬と人間ですから同じではないのですが……車を売る方が簡単だと思います。
[西]あっ、そうですか。
[高]車は何種類にも分かれていて、お客様が欲しい車種や種類の品物をセレクトするわけですよね。でも、三浦皇成というのはひとりしかいません。人間ですから100人いたら全員が三浦皇成を欲しいということはあり得ないはずです。そこで、より多くの人に好まれるようにできるのは、他の誰でもない皇成自身だと思います。
[西]要するに、評判を良くするのも悪くするのも三浦自身だということですね。
[高]そうです。
[西]でも、例えばベンツなら、絶対に良いですと言えます。三浦に対しても、三浦は良いですと言うのでしょうが、意味合いが違ってきますよね。
[高]あくまで選択されるのはお客様ですから。エージェントの場合は、物じゃないので同じようにはいきませんし、簡単じゃありません。極端な言い方をすれば、乗せてほしいとお願いにあがった時に、乗せていただけるかどうかの判断を仰ぐしかないというのが現実ですよ。
[西]そう言われれば、外国のエージェントは、例えば新馬戦を勝った馬が良いと思えば、「次走は自分のところの○○で」と営業をすると聞きますが、そういったことは日本ではあまりありませんよね。
[高]決して多くはありませんし、簡単じゃない部分があったりするんですよ。
[西]想像すると、規則や立場的なものがあるからなのでしょう。オーナーサイドの意見もありますからね。エージェントをしていると、ストレスも溜まるんじゃないですか?
[高]溜まらないと言えば嘘になりますよね。
[西]ストレス発散は何ですか?
[高]皇成が勝つことですね。
[西]そうなんだなぁ。でも、僕には絶対にできないなあ。ブッチャけさせていただきますと、怒鳴られている担当の方もいらっしゃいますよね。そういう経験はありますか?
[高]いまのところは、いろいろな方々に助けられて、経験していません。
[西]要求と要求のぶつかり合いですからね。「三浦の代わりに、○○を乗せろ」的な発言をする方もいらっしゃるはずですよ(笑)。
[高]個人的には、そこで皇成の代わりは誰なら良いのか、というのを知ることが楽しみだったりします。
[西]ああ、なるほど。相手が誰を言ってくるか、逆に言えば、それが三浦に対する評価だったりするわけですからね。意地悪な質問をしますが、誰が多いですか?(笑)
[高]そこは勘弁してください(笑)。
[西]さすがに無理ですよね(笑)。でも、騎手に対する評価というか、付けられる序列がおかしいと思うことって少なくないと思いますよ。
[高]難しいと思います。
[西]同じ騎手に対して、競馬に乗ったことがある人間とない人間では大きく違うことも珍しくありませんからね。
[高]そう聞きますね。
[西]一緒に攻め馬をしていても、騎手の人たちは明らかに違うなぁと本当に痛感させられます。そう言うと、異論を唱える方々もいらっしゃるのですが…。話が逸れてしまいましたが、番組をやっていて、嬉しいのはやはり勝った時ですか?
[高]そうですね。あとは、パズルが上手くハマった時です。
[西]予想が当たった時みたいな感覚なのでしょうね。西塚厩舎の時、想定を見ながら「ここなら出走できる、誰が乗れる」というやり繰りをしながら、すべてが思い通りに行ったことがありましたけど、それと同じ感覚なんですかね。
[高]まさに、そういうことです。
今週はここまでとさせていただきます。
先週の競馬を見ていて、違和感を覚えることがふたつありました。まずひとつはジャパンCダートについてで、常々言われているように、ダート競馬の本場アメリカから招待をしたいはずなのに、なぜ右回りの阪神で行うのかということです。
ご存じのように、アメリカはほとんどの競馬場が左回り。実際、阪神で行われるようになってから、来日したアメリカの馬たちは、コーナーで膨らんでしまっていますよね。ジャパンCダートが何を目指しているのか、個人的には疑問に感じてしまいました。
そして、もうひとつ、ワールドスーパージョッキーズシリーズは、阪神JFの週に行われていた時代を知る人間としては、もの凄く違和感があるのですよね。この感覚を持っているファンの方は、きっと多いものと思います。
そう、初期『ダビスタ』の番組が抜けきらないんですよ。スプリンターズSは有馬記念の前週にあったみたいな(笑)。
先週の競馬を見ていて、そんな感覚になった次第であります。
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