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今回は初めてのダート戦を思い出させるような末脚だった
文/安福良直、写真/川井博


「展開」というのは怖いなあ。というのが、今回のフェブラリーSを見ての第一印象である。いや、「怖い」ではなくて、「展開があるから、競馬は面白い」とも言えるんだけどね。

とにかく今週の重賞は、どちらも展開に大きく左右される結果となった。前日のダイヤモンドSは、超がつくスローペースになって、ブービー人気のケイアイドウソジンが逃げ切り。まさかそれが伏線だったのかどうかはわからないが、フェブラリーSハイペースの追い込み決着。両方の馬券を獲った人がいたなら、「展開の神様」と呼びたいですね。

さて、追い込み決着を呼び込んでしまった要因は、いつもは逃げないセイクリムズンが逃げたことなどもあるだろうが、やはり本命馬トランセンドの存在に尽きるだろう。

一昨年のジャパンCダートを勝って以降、妥協を許さぬ先行策で挑戦馬たちを退け続けてきた。私は、以前から日本のダート競馬には「格闘技」的な雰囲気があると感じているのだが、トランセンドはまさにそのイメージにピッタリの王者である。しかし今回は、その格闘王者のイメージがすべてマイナスの方向に働いてしまった感がある。

トランセンドは、芝の上でのスタートダッシュがうまく行かなかった。これまでも芝の走りはいまひとつだったが、今回はその中でも悪い方だった。しかし、それでも他の先行馬たちを蹴散らすのが格闘王者である、と言わんばかりに先行争いに突進していった。結局、余裕のない手応えのまま直線を迎えることになってしまい、抜け出す脚は残されていなかった。

道中のラップタイムだけなら、超がつくほどのハイペースには見えないが、余力を持てなかったトランセンドが自らを追い詰め、他の先行勢も追い詰めたので、追い込みの展開を呼び込んでしまったようだ。

スタートが悪いなら悪いなりの競馬をしよう、という馬だったらこういう展開にはならなかったと思うが、それで勝ってもおそらくトランセンドは満足しないのだろう。今回は「トランセンドらしい負け方をしてしまった」ということで、どこか痛めたということがなければ後に響くものでもないだろう。ドバイで巻き返しは期待できるはずだ。

そして、トランセンドが自滅する中で豪脚を爆発させたのが、テスタマッタシルクフォーチュン。中でも、勝ったテスタマッタが大外から抜け出してきたときの脚は素晴らしかった。

いつも折り合いがカギとなるテスタマッタは、大外枠とあって今回も折り合いをつけるのがやっと。道中はただ1頭、手綱を必死で引っ張るシーンが目についたほど。まあでも、そこまで我慢した甲斐があって直線は弾けた岩田騎手は、レース前半は手綱を全力で引っ張り、後半は全力で押した。これぞまさに「腕力の勝利」か。

思えばテスタマッタと言えば、初めてダートを走った約3年前の東京1400m戦で、上がり3ハロン34秒8の豪脚を披露して差し切った馬。そのときは「将来のG1馬が現れた!」と思ったものだが、折り合いに難があって、現実に中央G1を勝つまで時間がかかってしまった。

それでも、初期に強烈な印象を残した馬は、いつか大仕事をやってくれるもの。追いかけるなら、根気よく追いかけないといけませんね。それにしても今回は、初めてのダート戦を思い出させるような末脚であった。

一方、「打倒! トランセンド」を目標に掲げて走ったはずのワンダーアキュートエスポワールシチーダノンカモンらも不発に終わった。いずれも激流の先行争いには参加せず、賢く立ち回ってトランセンドを負かしたまではよかったが、そこで力尽きてしまったようだ。

自分の走りで精一杯だったテスタマッタ、ハナから自分の戦法(追い込み)をするのみのシルクフォーチュンが①&②着に来て、トランセンドへの意識があったであろう馬たちが敗れ去る。なんだかんだ言っても、これがすべて「トランセンドの競馬」なのだろう。