コスモオオゾラはレース前に唯一スラスラと名前を言えた馬だった
文/編集部(M)、写真/川井博
最近は、
歳のせいもあってか、
馬名がさっぱり覚えられない。特に3歳馬は、
似た血統で
似たようなヨコ文字の馬が多いからだろう。覚えられないというか、次々と活躍馬が出現するので、
覚える気力が追いつかない、というのが正直なところです。
ディープインパクト産駒についても、強い勝ち方をする馬が次々と現れるので、ぶっちゃけ、覚えきれていない。最近は、仕方がないので、
スーパーストロングマシーン1号、2号、3号みたいな感じで、密かに
「ディープインパクトマシーン1号」、
「ディープインパクトマシーン2号」なんて呼んでます(笑)。
クラシック路線の重賞で強い勝ち方をした順に番号を割り振ってきていて、
1号が
東スポ杯2歳Sを制した
ディープブリランテ、
2号が
ラジオNIKKEI杯2歳Sを勝った
アダムスピーク、
3号が
京成杯を優勝した
ベストディール、そして
4号が
きさらぎ賞を圧勝した
ワールドエースだ。
ちなみに、
牝馬については女の子っぽく
「ちゃん」を付けて、
「ディープインパクトマシーンちゃん1号」とか呼んでいる(笑)。もちろん
1号が
ジョワドヴィーヴルで、
2号が
シンザン記念を制した
ジェンティルドンナ、
3号が
クイーンCを勝った
ヴィルシーナだ。
もはや馬名を覚えることを放棄して、
「1号」、
「2号」などと呼んでいたら、頭に入りやすくなって重宝していたのだが、ここにきて
困った事態が発生してきた。「1号」や「2号」が人気で負けまくっているからだ。
「1号」の
ディープブリランテと
ジョワドヴィーヴルが
共同通信杯と
チューリップ賞で②着と③着に敗れ、
チューリップ賞では牝馬の
「2号」である
ジェンティルドンナが④着。そして、牡馬の
「2号」である
アダムスピークまでが
弥生賞で⑧着に敗れてしまった。
「1号」、
「2号」などと数字を割り振ったために、なんだかそれが
実力の序列のように感じていたのだが、クラシック前になってそれがバタバタと崩れてきている。だから、
「1号より4号の方が強いんじゃないか?」、いや
「4号よりも3号か?」などと考える機会が増えて、むしろ混乱を来しています…(苦笑)。
まるで
精密な機械のように活躍馬が次々と生まれてくるから
ディープインパクト産駒に
「ディープインパクトマシーン」と名付けたのに、その精密さに狂いが生じてきているとは、いったいどうしたことだろうか。
共同通信杯にしても、今回の
弥生賞にしても、1番人気で敗れた2頭(
ディープブリランテ、
アダムスピーク)はともに休み明けで、どちらもスローペースで
折り合いに苦労していた。一度使われれば次走で変わり身は期待できるのだろうけど……どうにも
負け方が気になるのも事実だ。
昨年の三冠馬・
オルフェーヴルも昨年の今ごろは差し届かない競馬を続けていたが、とにかくレースで折り合えるように競馬を覚えさせ、最後に差してきていた。その姿と比べると、
同じ負けるにしてもレースぶりが気にかかるのだ。
ディープインパクト産駒はこれまでにJRA重賞で14勝を挙げていて、それはすべて
前走で③着以内に入っていた馬だ。一変して重賞を制することが少ないわけだが、同時に、
前走が重賞だった馬が[1.7.10.42]というデータがあり、重賞を連戦した馬が圧倒的に勝ちきれていない(唯一の優勝馬は、
NHKマイルC③着→
安田記念①着となった
リアルインパクト)。
このデータを見ると、前走の重賞で敗れて次走の重賞で巻き返して勝利するなんていうことは、極めて
難易度が高いと思わせられる。果たして、
ディープインパクト産駒は、この先のクラシックでどんな走りを見せるだろうか? G1であっさり巻き返す、というシナリオは、想像以上に難しい気もしているが……。
一方、今回の
弥生賞を快勝した
コスモオオゾラは、レース前に私が唯一スラスラと名前を言えた馬だった。そのため、ゴールした瞬間に
「素晴らしい!」と言ってしまった。
コスモオオゾラの名前は
和風だから覚えやすかったということもあるけれど(笑)、それ以上に
同馬のキャラが明確だったから覚えやすかったということがある。
前走の
共同通信杯では⑤着に敗れたものの、そのレースは前述したようにスローペースで、
コスモオオゾラには上がりが速すぎた。上がりがかかる形の方が良いことは明白な馬で、
ロージズインメイ産駒だけに中山に替わるのもプラス。さらには、
道悪が追い風となるのも疑う余地がなかったので、正直な話、この馬の単勝が
29倍というのは付きすぎだと思った。
コスモオオゾラを管理する
高橋義調教師は、
バシケーンで2010年の
中山大障害を制しているが、
平地の重賞勝利はこれが初めて。鞍上の
柴田大騎手も、昨年に障害重賞を3勝しているが、平地の重賞は97年の
ラジオたんぱ賞(
エアガッツ)以来、
14年ぶり9ヶ月ぶりのこととなった。
言ってみれば、
ディープインパクト産駒とは対極の
「苦労人コンビ」という感じ。クラシックを面白くするのは、まさにこのような人馬だろう。
トライアルを叩き上げの馬たちが勝つと、本番で
混迷さが増す。それはそれで困る人もいるかもしれないけれど、どうやら今年はそんな巡り合わせのようだ。
良血馬たちの巻き返しに賭けるか、それとも叩き上げの馬たちの戴冠に期待するか。1ヶ月後の
クラシック本番では、我々も、
真の実力を見抜く能力が問われることになりそうだ。