サイレントメロディは母の姿とダブって見えた
文/編集部(M)、写真/米山邦雄
ダンスパートナーの仔である
フェデラリストが
中山金杯で重賞初制覇を飾り、先週の
阪神大賞典では
ファビラスラフインの仔・
ギュスターヴクライが優勝。
90年代に活躍した牝馬の仔どもが初めての重賞タイトルを手にするケースが続いていて、その流れに今度は
サイレントハピネスが乗る形になった。
サイレントメロディは
サイレントハピネスの8番仔で、これまでに兄姉が重賞競走を制したことはなかった。
サイレントメロディ自身は前走の
平安S(⑥着)が重賞初出走で、2度目の挑戦でタイトルを手中にしたことになる。
フェデラリスト、
ギュスターヴクライ、
サイレントメロディの3頭はいずれも
社台ファーム生産で、
ダンスパートナーと
サイレントハピネスの母馬2頭も社台ファーム生まれ(
ファビラスラフインは外国産馬)。社台ファームのみなさんは、さぞかし喜んでいらっしゃることだろう。
ダンスパートナー&
フェデラリストの母仔と
ファビラスラフイン&
ギュスターヴクライの母仔は、ともに
芝重賞での優勝となったので、ある意味、イメージが重なるタイトル獲得だったが、
サイレントハピネス&
サイレントメロディの母仔は、舞台が
ダートとなった。
ただ、芝とダートの違いはあったけれど、
サイレントハピネスの現役時代を知る人にとっては、今回の
サイレントメロディの姿は
ダブって見えたのではないだろうか。
サイレントハピネスは
ダンスパートナーと同じサンデーサイレンスの初年度産駒で、
4歳牝馬特別(現フローラS)と
ローズSの重賞2勝を挙げた。中でも圧巻だったのが
ローズS(京都芝2000m)で、後方追走からメンバー中最速の上がり(34秒1)で差し、
ワンダーパヒューム、
ライデンリーダー、
プライムステージという面々を一気に交わし去った。それは
「切れた名レース」として語り草になっているほどでもある。
その仔・
サイレントメロディも、今回は
切れに切れた。脚抜きの良い馬場(重馬場)でペースが速くなり、ハンデ55kgも手伝った面があったのかもしれないが、後方からメンバー中最速の上がり(36秒6)を計時し、軽く「飛んで」いた。
サイレントメロディは芝でも2勝を挙げていて、2勝目は東京芝1800mで記録している。その時の上がりは33秒8(メンバー中1位)で、②着が
カリバーン、③着が
アスカクリチャン、⑤着が
ダイワファルコンという、いずれも現在芝のOPで走っている馬たちだった。その結果を見ても、どれほどの
切れ味を持つ馬なのか、窺い知れるだろう。
芝でそれだけ切れる脚を使えるのなら、
ダートでは、乾いた良馬場よりも湿った馬場の方が向くのは当然だ。しかし、
サイレントメロディは今回6番人気だった。前走で不良馬場の
平安Sを走って⑥着に負けていたことが、
隠れ蓑のようになっていたのだと思う。
前走の
平安Sでは、後方からメンバー中2位の上がりを計時していた。今回はメンバー中最速の上がりだったわけだが、その
上がり3Fタイムを比較すると、
マーチSよりも
平安Sの方が速い。今回が
36秒6で、前走が
35秒9だった。
上がりタイムが着順に直結しないのは、コースの違い、具体的に言えば
坂の有無が大きいのだと思う。
平安Sは平坦の京都で行われ、1000m通過が60秒0で、レース上がりが
36秒1だった。対して今回は、1000m通過が61秒4で、レース上がりが
37秒6。ゴール前に
急坂があることで、上がりが1秒5も遅くなっていたのだ。
サイレントメロディは、これまで中山では連対歴がなかった。芝では3戦して③⑤④着で、ダートは1戦して⑩着。果たして
中山が合うのか、レース前には不安を感じていたのだが、レース後に
母の戦績を見直して驚いた。
サイレントハピネスは中山での成績が[1.2.1.2]で、
唯一の勝利がダート1800mだったのだ。
母は
「芝で切れた馬」というイメージが強かったので、ダートに出走していたことすら覚えていなかった。そのため
サイレントハピネス&
サイレントメロディの母仔が初の重賞タイトルを手にしたのが
ダートだったことに違和感を感じていたけれど、もしかしたらこれは
偶然ではなく、
必然だったのかもしれませんね。
サイレントメロディは、今後もダートでは
馬場状態がカギになるのではないだろうか。ただ、もし機会があれば、
芝重賞でもその走りを見てみたいものだ。
北海道の洋芝なんて合うんじゃないか?と勝手に思っているのだが…。
それにしても、
マーチSはよく
荒れる。今回は1~5番人気がすべて馬券圏外に沈む結果になったが、それは去年も同様だったし、94年の創設以来、
③着以内が1~5番人気で占められたことはまだ一度もない。
荒れやすいことは分かっているが、何を頼りに攻めたらいいのか、取っかかりが掴めない。この感じは
中山牝馬Sに似ているので、
中山牝馬Sのこのコーナーで記した時と同じように、今回も
出走馬が何月に勝ち鞍を挙げているか、調べてみた。
マーチSだけに
「3月」が重要だと思い、過去の好走馬を調べてみたところ、近10年中9年で、
3月に連対歴のあった馬が1頭は馬券に絡んでいた。
では、今回はどんな馬が3月に連対歴があったかと言うと、該当馬は
7頭だった。
エイシンダッシュ、
タガノロックオン、
トーセンアドミラル、
マイネルアワグラス、
マイネルオベリスク、
メイショウタメトモ、
ライブコンサートで、最低人気で②着に入った
メイショウタメトモが当てはまっていた。
メイショウタメトモは
3月の出走歴が過去に2度あり、500万下を
7番人気で①着、準OPの
甲南Sを
11番人気で③着に激走していた。
「マーチSは3月好調馬にご用心」……という話も、もしかしたらあるのかもしれませんね。