黛騎手に去年の騎乗停止について話してもらいました
2012.5.3
先週は、ゼローソと初出走となったラストウィッシュがそれぞれ勝ち星を挙げ、またスイートピーSではココロチラリが2着となり、オークスへの優先出走権を獲得することとなりました。
ココロチラリについては、飼い葉をしっかりと食べていましたし、乗っても覇気があり、得られる感触としては良い状態でした。ですから、目に見えない疲れだけが心配でしたね。
いまは厩舎そのものが好調ですし、それぞれの馬たちも良い状態であると、「もう1レース」、「さらにもう1レース」と出走していくケースが出てきます。ただ、そのなかで、どこかの「もう1レース」で結果が崩れてしまうことも少なくないものです。
そのような場合でも、追い切りの動きは悪くなく、飼い葉もしっかりと食べていて、体重の変化もなかったりすることが珍しくありません。悪くなっているという手応えがないのに、レースで結果が出なくなる。そんなことがあるので、今回のココロチラリについても、良い感触があったものの、目に見えない疲れがないか、気になっていました。
今後はオークスを目指して調整が続けられます。ローテーション的には決して楽ではありませんが、ココロチラリなら克服できると信じて、できる限りのケアをしながら、良い状態で送り出せるようにしたいと思います。
ココロチラリは乗り味も良いですし、体の使い方が上手なんですよね。オークスとなればメンバーも一気に強化されますが、能力的には決してヒケを取らないと思いますし、2400mはどの馬にとっても未知数ですから、能力に期待したいと思います。
今週は黛騎手との対談の2回目をお送りします。それではどうぞ。
西塚信人調教助手(以下、西)去年の騎乗停止についても聞きたいんだけど、あの前はけっこう好調な流れになっていたよね?
黛騎手(以下、黛)大久保(洋吉)先生に乗せていただいて、チャンスをいただけたことが何よりも大きかったです。大久保先生に乗せていただいたので、いまも騎手を続けていられるのです。
[西]なるほど。
[黛]あの時は、辞めて責任を取ろうと思っていました。
[西]やっぱりそうだったんだ。
[黛]ただ、大久保先生以外にも、戸田先生や小島茂之先生、奥平先生をはじめ、普段からお世話になっているたくさんの先生方から声をかけていただいて…。その思いに応えるためには、もう少し頑張らなければならないと思えるようになったのです。
[西]尾関厩舎を手伝ってもらうようになったのは、僕が声をかけたからだったよね。人手が足りないから、もし時間があるなら手伝ってほしい、と言ったんだけど、あの騎乗停止明けにデルマアプサラスに乗ってもらった時、いままで以上に深い繋がりになったと思いました。正直な話、ここで黛にいくのかという驚きもありましたよ。
[黛]そういう思いに何とか応えたいと思っていて、それが支えでもありました。
[西]何よりも、大久保先生が乗せ続けてくれたからね。大久保先生にはいろいろ言われた?
[黛]怒られました。でも、最後には『ここからどうやって頑張っていくかが大切なんだぞ』と言っていただいたのです。
[西]そうだったんだ。でも、やっぱり辞めようと思っていたんだね。
[黛]責任を取るには辞めるしかないと思っていました。翌日から騎乗停止となったので、最後に、オーナーであるメジロ牧場さんにご迷惑をおかけしたお詫びをしてから辞めようと思い、次の日の朝、北海道まで行きました。そうしたら、牧場のスタッフの方々に、逆に励ましていただいたのです。
[西]ブッチャけてしまいますが、あの時のことをもう一度振り返って、説明してもらいたい。このコーナーで取り上げた時は、賛否両論がありました。だからこそ、マユちゃん本人に話を聞きたいんだよね。
[黛]我を忘れてしまい、夢中になって追っていたためにフォームがバラバラになり、さらにはモタれていたこともあって、最後にバランスを崩してしまったのです。それで、手綱を引っ張り、腰が上がってしまったというのが真実です。あとから、裁決委員からVTRを見て説明を受けましたが、そう受け取られてしまっても仕方がないと思いました。すべては僕自身の未熟さが引き起こしたことです。
[西]わかりました。
[黛]未熟さを真摯に受け止めて、精進しなければならないのです。ファンの方々には、八百長とかでは決してないことを分かっていただきたかったので、そのことをあるメディアで書かせていただきました。
[西]前にも言ったけど、勝ったと思ったのかと思ったんだよね。
[黛]ゴール板を過ぎても、勝ったか負けたか分かっていないくらい夢中になってしまいました。周囲は見えていたのですが、あの馬自身、最後にやめようとするところがあるので、何とかしなければと夢中になってしまっていました。
[西]メジロガストンには僕自身も調教で騎乗したことがあって、そのモタれ具合は分かります。大久保厩舎の助手さんたちも、その難しさをよく知っていますよね。新潟かどこかでも、他の馬をやっつけていたよね?
[黛]新潟です。外の馬たちを吹っ飛ばしながら、外へ行ってしまったことがありました。でも、走る馬ですし、僕自身が未熟ではなければそうはなっていなかったはずです。もっと上手く乗れていれば……。
[西]いろいろな意見があると思いますよ。でも、個人的には、あの時のマユちゃんへの対応を見ていて、この世界もまだ捨てたもんじゃないと思いましたよ。逆に、あれで冷たくなった人とかいるの?
[黛]いません。
[西]でも、厳しい意見を口にする人とか、ブッチャければ、八百長をやったヤツと言う人もいるでしょう。
[黛]そうですね。もちろん八百長ではありません。あくまで僕自身が未熟であるが故の出来事ですので、とにかく頑張り続けて、上手くなっていくしかないんだという思いでいます。
[西]あの直後、小倉に戻って調教に乗り続けたよね?
[黛]騎乗停止にはなりましたが、その翌週以降の調教も頼まれていましたから。騎乗停止になったからといって、それを途中で投げ出して帰ってしまうのは無責任ですので、やらせていただこうと、北海道から小倉に戻りました。
[西]あの時点で、すでに火曜日の攻め馬の番組が組まれているからね(笑)。
[黛]平日は調教を手伝って、開催日には装鞍所で鞍を付けるのを手伝ったりしていました。
[西]あっ、鞍付けもしていたんだ。変な言い方かもしれないけど、そこで逃げ出さずに、すべてを受け入れて頑張ったから、いまがあるんだと思うよ。そこで頑張ることができたんだから、ここからはもっとやれるでしょ。
[黛]とにかく頑張っていくしかありません。
今週はここまでとさせていただきます。
先週、僕自身は競馬に行っていないんですよね。それで2勝を挙げたので、ひょっとすると行かない方が勝てるんじゃないかという気持ちになるわけですよ。今週はモンストールがNHKマイルCに出走しますが、行こうかどうしようか、ものすごく迷っています(笑)。
モンストールは、ここへきて状態もさらに上がってきています。距離もマイルは合うはずですし、十分チャンスがあると思っています。
それと、前回にマユちゃん(黛騎手)が騎乗して4着と変わり身を見せたプボワールベールが新潟に出走します。モンストールともども、応援をしていただければと思います。
ということで、最後はいつも通り『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうぞ、よろしくお願いいたします』。