スタート直後の“幸と不幸”が、直線入口で逆転した
文/編集部(T)、写真/川井博
「塞翁が馬」という言葉がある。一見良いと思われたことが悪い方向に働いたり、不幸だと思われたことが実は良い方向に働くこともあり、
何が幸いとなるか、何が不幸となるかは予測することが難しい、といったような意味のことわざだ。
なぜこんなことを書いたのかというと、今年の
函館スプリントSは、まさに
「塞翁が馬」を地で行くレースだったような気がしたからだ。
レースを制したのは、2番人気の
ドリームバレンチノ。圧倒的1番人気に推された
ロードカナロアを下し、3連勝で
重賞初制覇を飾った。
ポイントは、
スタート直後にあった。
ロードカナロアは1枠1番、
ドリームバレンチノは2枠2番で、ともに内枠からの発走となったが、
ロードカナロアはスタートを決めて好位へ、
ドリームバレンチノは行き脚がつかず、中団からの競馬になった。
これだけ見ると
ロードカナロアが有利に立ったように思えるが、
実際は逆だった。
ナイアード、
パドトロワなど、前に行きたい馬が多いメンバー構成だったこともあり、
ロードカナロアは終始内に閉じ込められる形となってしまったからだ。
ここで
幸不幸が逆転した。
ロードカナロアを横目に、スムーズに外に持ち出した
ドリームバレンチノは、4角手前から外を通って進出。そのまま直線に入ったところで一気に先頭に立ち、残り150mでようやく外に持ち出した
ロードカナロアを振り切ってゴールした。
ドリームバレンチノにとっては、
行き脚がつかなかったことが逆に幸いした形となった。まさに
「塞翁が馬」だが、その実力も重賞勝ち馬となるのにふさわしいものだったと思われる。
というのも、このレースのスタート前は、
「函館スプリントSは牝馬が強い」といわれていた。それはその通りで、02~11年(札幌開催の09年も含む)の
函館スプリントSで、
牝馬は8勝、牡馬は2勝にとどまっていた。
しかし、そんなジンクスを崩してこのレースを勝った2頭の牡馬は、その後も大活躍をみせていて、02年の勝ち馬
サニングデールは04年の
高松宮記念、08年の勝ち馬
キンシャサノキセキは10、11年の
高松宮記念を制している。
牡馬が
函館スプリントSを勝つのは、それほど実力がないとできないことなのだろう。
昨年も指摘したが、
函館スプリントSの勝ち馬は
同年のキーンランドCで[2.1.3.0]と好成績を残している。昨年
函館スプリントS→
キーンランドCを連勝し、一気に
スプリンターズSまで連勝を伸ばした
カレンチャンに続けるだろうか。
一方で、②着に敗れた
ロードカナロアは内枠がもろに響いた形で、今回の4分の3馬身差がそのまま実力差ではないはず。
高松宮記念(③着)で実力は証明済みで、今後の巻き返しは必至。この2頭には、今後も注目していくべきだろう。
話は変わるが、ひとつ残念だったことがある。今年から函館開催が例年の16日から
12日開催に短縮されたことで、
函館スプリントSの開催週が3週目から2週目となった。
4日開催が減ると、条件戦なら調整ができるが、OPはそうはいかない。かなり
番組編成が窮屈になったため、今年の
函館スプリントSは、同じ距離で開催されるOP特別の
バーデンバーデンC(福島芝1200m)と同じ日の開催となった。
その結果、
函館スプリントS、
バーデンバーデンCがともに11頭立てとなり、完全に
メンバーが分かれる形となってしまった。
開催日数が減らされた理由はいろいろあるとは思うが、我々ファンに
「馬券を買いたい」と思わせるような番組を編成することが大前提のはず。
函館スプリントSはそのレース名から考えても、距離を延ばすわけにはいかないだろうが(笑)、
バーデンバーデンCの距離を延ばす、開催日を組み替えるなど、方法はいろいろあるだろう。来年もこの開催日数となるならば、ぜひ一考を願いたいと思う。