嘉藤騎手にこれまでの浮き沈みについて話してもらいました
2012.8.16
先週、期待していると話をしたサクラディソールは、4着という結果となりました。
まだ体力が付いていない現状を考えれば、競馬の内容は悪くありませんでしたし、素質があることを再確認でき、上積みについても手応えを掴むことができたと思います。騎乗した松岡(騎手)自身も、「まだ力が付いていない面は感じさせられるけど、素質はある」と手応えを感じている様子でした。
新馬戦で掲示板に載る馬たちは、その後すぐに勝ち上がるタイプと、来年の今頃まで未勝利戦で善戦を繰り返すタイプに二極化する傾向があったりします。ですから、サクラディソールも、まずはひとつ勝てるように上手に進めていくように頑張ります。
サクラディソールは、乗った感覚と競馬の内容が一致するんですよね。例えば、3ハロンを17-17で、と言われる時、多くの馬たちは38完歩でいくのが一般的で、僕の少ない経験のなかでは、それが一致する時は結果が良いんです。
思い込みなのかもしれませんが、思い通りの調教ができている、そして、その調教と競馬が一致するという流れは良いことだと思います。 サクラディソールはそうでしたので、先々に向けて楽しみです。
そしてもう1頭、13番人気で3着にきたリトルシェフも、手応えを感じることができていたので、力が入りました。新馬戦の頃は追走に苦労した感じでしたが、一歩一歩確実に良化していっているのが、手のなかでハッキリと感じることができています。
今回は「掲示板には」という思いで送り出したのですが、この時期の未勝利戦は甲子園と同じで「待ったなし」ですので、いやぁ力が入ります。次は中山のスーパー未勝利ということになりそうですが、何とか勝ち抜きたい。ここからできる限りのことをやって、送り出せるように頑張ります。
今週は、嘉藤貴行騎手との対談の2回目をお送りします。それでは、どうぞ。
西塚信人調教助手(以下、西)貴行は、何を隠そう、新人賞に輝いているんだよね。
嘉藤貴行騎手(以下、嘉)やめてください。すごく昔の話ですから。
[西]ダメダメ。新人賞イジリは大好きなんですから(笑)。
[嘉]過去の話で、僕自身、なつかしさしかありません。そんなこともありました(苦笑)。
[西]1年目は19勝を挙げてるね。
[嘉]所属厩舎が良かったんですよ。ウチの先生(田中清隆調教師)に感謝しています。あの当時、(田中清厩舎は)20馬房のうち10頭がオープン馬ということもあったんですよ。先生は、チャンスを与えようと、馬主の方々に頭を下げてくれて、本当に感謝しています。僕自身、人に恵まれているところがとても大きいと思いますし、みなさんに良くしていただいて、ありがたく思っています。
[西]でも、それは貴行の人間性によるところが大きいわけだから。
[嘉]ただ、いまになって思うと、勝っていた当時は調子に乗っていたと思います。
[西]そんなことないだろう。
[嘉]もちろん、そういうつもりではいませんでした。でも、他の人からは調子に乗っていると思われたことはあったはずです。誰もが通る道なのでしょうし、程度に差はあるとは思いますが、僕自身、振り返った時にそうだったと反省するところはありますよ。
[西]最初に勝って、そこからどん底に落ちて、そこからまたこうして登っているわけだよね。
[嘉]いえ、まだ登り始めることができているとは思っていません。
[西]でも、上向いているじゃない。
[嘉]チャンスをいただいている段階です。
[西]そういうことなんだけど、イケイケの若い子を見ると、思うところはあるんじゃないの?
[嘉]でも、そこは実力の世界ですから。もちろん、「そんなに簡単じゃない」と思うこともありますが、そこは正義さん(蛯名騎手)が言うのと、僕が言うのとでは、言葉の重みが違うわけですよ。
[西]言いたいことはわかる。
[嘉]やはり説得力が違いますよ。だから、僕は言わないことにしました。言うほど偉くもないですし。聞かれた時と、あとは本当に危ない時くらいしか言いません。でも、自分もそうだったはずなんですよ。
[西]なるほどね。
[嘉]ただ、僕たちが新人の頃と比べると、最近の方が厳しいと思いますよ。僕たちの頃は、新人で未勝利というのはいませんでした。
[西]確かに、そうだね。
[嘉]僕は(単勝)1倍台の圧倒的な人気馬にも乗せてもらったりしました。
[西]そうなんだ。初勝利は自厩舎だった?
[嘉]いえ、藤沢厩舎です。ウチの先生と仲が良かったこともあったのでしょうが、良い馬にたくさん乗せていただきました。ケツから行って、外を3馬身膨れて回っても勝ってしまう馬にも乗せていただいたのです。明らかに馬の力が抜けているので、誰が乗っても勝つんですが、そういう馬たちに乗せていただきました。
[西]そういう時代があったんだね。貴行は、デビュー当初は乗れていたのに、その後、なぜか下降線を描いてしまったよね。それはどうしてだと思ってるの?
[嘉]自惚れてしまっていた部分があったからではないかと思います。
[西]そうなんだ。騎手の人たちは、落ちていく時にも、逆に上がっていく時にも、きっかけがあるように思うんだけど、貴行のなかで、このレース、あるいはこの時期に勝っていたら変わっていた、と思うことってある?
[嘉]う~ん……レースよりも嘉藤という字が難しくて、その影響で乗鞍が減っているんじゃないか、と思ったことはありました。
[西]うははは(笑)。それはあるかも。実際、時間がない時にはカタカナにしたりするからね。
[嘉]個人的には、レディパステルで負けたことは大きかったと思います。未勝利を勝って、次のレースで差されてしまって2着に敗れたのです。
[西]あれだけの馬だから、連勝していった可能性があるわけで、そうしたらK・デザーモではなく、貴行になっていた可能性もあったんだろうね。
[嘉]馬の実力は折り紙付きでしたからね。ただ、もし勝っていたとしても、その後同じように乗れていたかと言われれば、どうなのか?ということはあります。それでも、可能性はありました。
[西]勝っていたら、違ったのかもね。
[嘉]もっと調子に乗っていたでしょうね。
[西]そこでの敗戦というのが大きかったんだ。
[嘉]いまになって振り返ると、そう思います。当時は、良い馬であったのは間違いありませんが、オークスを勝つというイメージまでは持っていませんでした。
[西]他の騎手たちもそうなんだけど、勝っていたはずなのに、ある時期から急に勝てなくなってしまうケースってあるよね?
[嘉]僕自身も、12月まで勝てない年がありました。
[西]えっ、そんなことあったの?
[嘉]12月まで未勝利で、年末の中京で同じ日に2勝させてもらったんです。
[西]そういう時、乗り数はあったの?
[嘉]全くないわけではありませんでした。でも、あの時は、8月くらいから勝つ夢を見るんですよ。夢のなかで勝つんです。
[西]焦っていたのかな?
[嘉]自分では焦っているつもりはないのですが、そうなのでしょうね。ゴールした瞬間に目が覚めるんですよ。そんな日々が続いていましたので、中京で勝った時は本当に嬉しかったです。
[西]そんな経験をしていたんだ。普段、一生懸命働いていたけど、そんな雰囲気は微塵も感じられなかったよ。
今週はここまでとさせていただきます。
対談でも話が出たトルークマクトが帰厩してきました。昨日(15日)戻ってきたばかりですので、ここからピッチを上げていって小倉2歳Sを目指す予定です。貴行とともに頑張ってほしいですね。我々はできることをやって送り出したいと思っています。
ということで、最後はいつも通り「あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうぞ、よろしくお願いいたします」。