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ゲートで“縛る”ことも、ときには必要になります
2012.9.13

秋競馬がはじまり、G1戦線が本格化するとともに、続々と2歳馬たちがデビューを果たしています。

トレセンでも2歳馬が着用する緑ゼッケンが増えるとともに、ゲート試験を受ける姿を毎日見かけるようになってきました。

これまでも試験をはじめ、ゲートについては何度かお話をさせていただいてきましたが、今回はそのなかでも“縛り”についてお話ししたいと思います。

“縛り”を簡単に説明すると、ゲートのなかで静止していることができない馬に対して施される矯正方法のひとつなのです。

改めてゲートについてお話をしますと、まずゲートに向かう、中に入る、そこで静止する。そしてゲートの扉が開くことに反応して発進し、しっかりと加速していくことができるかどうかについて、試験が行われているのです。

入厩してきたばかりの馬のなかには、そのどれかができないというケースが珍しくありません。

どうしても近寄らない、中で静止することができない、ゲートの扉が開くことに反応して発進することができない、発進後にスムーズに加速していくことができない、というようなことです。

多くの馬は練習をすることで、上手になっていくものです。僕の少ない経験のなかでは、2、3回の試験で合格していく馬たちが多いのですが、なかにはそれでは対応、あるいは克服できない馬たちがいるんですよね。

そういう馬たちには、様々な方法で対応していくことになります。

例えばスムーズに入ることができない馬に対しては、ロープを張って中へ導くようにしてみたり、前扉を開けた状態で何度も通すようにしてみたりします。

あと、スムーズな発進ができない馬に対しては、後ろから長い鞭で促すという方法を取ることもありますし、電気鞭も使用しています。

それと、発進してからスムーズに加速していくことができない馬もいて、正直こういうケースには悩まされることが多いんですよ。困る度ランキング的にはかなり上ですね(苦笑)。

また、特に左右にフラついてしまう馬や、それと尻っぱねをしてしまう馬もそうです。これはゲートに対応云々ということではなく、馬の体力と言いますか、肉体的な面に課題があったりするんですよね。

しっかりとした動作で発進ができて、進んでいくことができれば、苦しくはないはずです。それができないから、左右にフラついたり、尻っぱねをしたりするんですよ。

ただ、左右にフラつくということで言えば、運という部分もあったりするんです。

どういうことかと言いますと、ゲート試験はダートコースの一部で行われていますので、周囲に馬がいるのです。その馬たちを見て反応して左右に動いてしまうというケースもあるわけですよ。周囲に馬がいるかどうかなど、そういう意味で運という面もあるということなのです。

そんな中で、ゲートのなかで立ち上がる、あるいは寝てしまう馬がいます。これは正直、危険を伴いますし、なかなか簡単にはいきません。

そこでの対処として代表的なものと言われるひとつが、いわゆる“縛り”と呼ばれる方法なのです。

一般的には首に輪っかを掛けて、ロープで固定するという方法なのですが……、上手く言葉で説明できずにすいません。極端な言い方をすれば、ゲートにロープで動けないように固定してしまうんです。

このとき、立ち上がっていた馬は割と観念しやすいと言いますか、個人的には比較的効果が簡単に得られるケースが多いように感じます。また、もし馬が暴れたとしても、人間も回避しやすかったりするんです。

それに対して、潜ってしまう、寝てしまう馬というのは、難しいですし、危険が倍増します。

中には地面とゲートの隙間に寝てしまう馬もいるんですよ。それを寝ないようにロープで縛るのですが、寝てしまった馬を引き出すときは本当に大変ですし、馬がパニックに陥ってしまい暴れたりもしますので、より危険を伴います。

ときには、尻尾を持って寝ることを止め、静止を促すという方法が取られるケースもあります。過去には、尻尾が千切れてしまい、予後不良になってしまった馬もいるんですよ。

そういったことからも、人馬ともに危険だということがお分かりいただけるのではないでしょうか。

そして、縛った後は何をするかというと、そのような状態で20~30分、なかには1時間、そのまま放置されるんです。

横に練習や試験で発進する馬たちがいます。それらに反応して立ち上がろうとしたりするんですが、縛られているためできません。馬がそうやって覚えていくんです。僕の少ない経験のなかでは、1時間という馬が最長でしたね。

この縛りに関して言えば、都市伝説的なことが言われていて、縛った直後の馬はすごくゲートが速く、記者さんの中では縛った直後は買い、と言われたりするんですよね。

ただ個人的には、なるべく縛るという方法以外でアプローチをした方が良いと考えます。ゲートの中で静止ができない理由として、狭いところへ対する不安であったり、苦しいという気持ちの表れであるはずなのです。

時間をかける、体力が付くのを待ってあげるというのも有効な方法のひとつだと思いますし、個人的にはなるべく馬が円を描くように、なるべく小さく小さく動かすようにしています。

小さく回ることができない馬というのは、人間の足からの指示に対して反応が鈍ってくるんです。口、つまりハミとトモがしっかりと動かせることができることは、ゲートでもとても重要なのです。

それができるからこそ、小さく回ることができるので、逆に言えば小さく回ることができるようにすることで、その動きができるようになるわけですよね。

もちろん、メンタル面からの影響によって対応できない馬たちもいます。

ブッチャけさせていただきますが、この時期はゲートに行けば毎日誰かが縛っているという状況が現実なんですよ。予約で一杯という日もあるんですから。

この縛りについて、メリット、デメリットということで言えば、当然のことながら両方あります。

メリットは効果がより短期間で得られるということです。デメリットについて言えば、僕の経験ではゲートに入った馬が入らなくなるということです。ただ、入らなくなる反面で出るのが速くなりますよ。

それと、縛るということは、肉体的な負担が大きいのは間違いありません。メンタル面での負担もあるのですが、なかには疲労困憊で休養を要するまでになる馬もいます。

何度も言うようですが、個人的には縛ること以外での対処方法が取られるべきだと考えます。ただ、デビューが早まったのにともない、未勝利の切り上げが早まって、さらには出走回数が減っているいま、時間がないのも事実なんです。

だからこそ、短期間で効果が得られる縛りが選択されることになってしまうのでしょう。

毎度のことながら長くなってしまいまして、どうもすいません。次回は嶋田純次騎手との対談をお送りいたしますので、どうぞお楽しみに。

ということで、最後はいつも通り「あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうぞよろしくお願いいたします」。