今週から嶋田騎手との対談がスタートします!
2012.9.20
3日間開催となった先週の競馬で、我が尾関厩舎からは11頭が出走しました。コスモバルバラが500万円下を勝ったのですが、サバイバルとなっている未勝利戦では3頭が出走して全敗となってしまったのですよね。
デルマジュロウジンをはじめ、リトルシェフ、ジェイフォースと、どの馬もチャンスがあると思っていただけに本当に悔しい。その時々でベストを求めて、頑張ってきたつもりですが、それでもこうして終わってみると、何とかなったんじゃないかという思いが残ります。
「この1回」というチャンスを掴むことがどれほど大切か、そのことを痛感させられます。「この1回」というケースは、未勝利戦以外にも、上のクラスや重賞レースでもあるはずで、一度「この1回」を掴むことで、次に向かう心構えや立ち振る舞いなど、身に付いていくものが多くなると思うんです。
走るのは馬ですし、人間にできることは限られているんですが、「この1回」を掴むための何かがあるはずなんです。僕たちは「この1回」を掴めるように、結果を出すことができなかった馬たちから教わり、できるようになることを目指して頑張らなければなりません。
いきなり長くなってしまいまして、すみません。今週からは、嶋田純次騎手を迎えての対談となります。それではどうぞ。
西塚信人調教助手(以下、西)今回は、嶋田純次騎手を迎えて対談をお送りしたいと思います。よろしくお願いします。
嶋田純次騎手(以下、嶋)こちらこそ、よろしくお願いいたします。
[西]まだ飲めないんだよね?
[嶋]はい。来年になるまでダメです。
[西]じゃあ、ウーロン茶で乾杯ですね。
[嶋]はい。未成年の方って、いままで誰かいらっしゃいましたか?
[西]確か、菅原君(菅原騎手)はそうだった。普段は「嶋田」とか「純次」だけど、今回は「嶋田君」でいかせていただきます。そもそもは、松岡(騎手)を介して付き合うようになっていったんだよね。
[嶋]そうですね。ライヴやバンドの練習にお邪魔するようになって、いろいろ話をさせていただくようになりました。
[西]実は、一緒に仕事をしたことはそれほど多くないんだよね。
[嶋]調教を一緒に、ということはないですね。
[西]よく会っているから、何か不思議な感じがするよ。そう言えば、昨年は新人賞を獲ったんだよね。
[嶋]関東の記者の方々に選出される新人賞をいただきました。
[西]いくつ勝ったの?
[嶋]18勝です。
[西]18勝して、さあ、今年、と思っていたらケガをしてしまったわけだよね。もう大丈夫なの?
[嶋]はい、大丈夫です。いやぁ、やってしまいました。
[西]中京だったよね?
[嶋]中京の開幕週でした。リニューアルオープン初日の6レースで、前の馬に突っ込んでしまったんです。いままでずっと乗ってきて、大丈夫だという感覚でいたのですが、前にいた馬との距離が近過ぎてしまって…。
[西]乗りかけてしまったんだ?
[嶋]危ないと思ったら控えたのですが、引っ掛かってあっという間に触れてしまいました。
[西]重傷だったよね。トレセンでも話をされていたよ。
[嶋]内蔵を損傷してしまいました。痛くて、痛くて…。しかも、中間で感染症にかかってしまって、それが酷かったのです。
[西]腎臓損傷と聞いていたよ。骨折はなかったの?
[嶋]骨折はしていませんでしたが、右腕が曲がらないほど腫れてしまいました。
[西]腎臓損傷ということは透析はするの?
[嶋]腎臓損傷の段階ではやりませんでしたが、感染症にかかってからやりました。
[西]腎臓に菌が入り込んでしまったんだ。その前に、意識不明だったというのは?
[嶋]感染症になった時です。ただ、意識不明ではなく、麻酔で眠らされていて、起きたら2日過ぎていました(苦笑)。
[西]復帰するまで長かったよね?
[嶋]入院だけでも1ヶ月半していましたから。
[西]そこから競馬まではどのくらい要したの?
[嶋]1ヶ月ですね。復帰するまで2ヶ月半かかりました。
[西]復帰したのはダービーの週だったよね?
[嶋]そうでした。
[西]ちょっと聞き難いんだけど、この時期というのは、『騎手人生を左右する』とも言える時期だよね。1年目に18勝して、今年も勝ち星を挙げていたわけだよ。
[嶋]今年もその中京までに4勝させてもらっていました。そして、そこまでは中央場所で乗せてもらってきていたのですが、三場へ行って勝ち星を稼ごうと思っていた矢先だったんですよ。
[西]あっ、そうだったんだ。
[嶋]あの週、何事もなく過ごしていたら、翌週からアイムユアーズと一緒に栗東滞在する予定になっていたんです。栗東で調教をすることで、関西の方々に覚えていただいて、騎乗のチャンスを獲得できればという思いだったんですが、叶いませんでした。
[西]なるほどね。もっと聞き難いことを聞いちゃうけど、あの時期、同期の杉原(騎手)がもの凄い勢いで勝ち出したんだよね。それこそ『嶋田の分も勝っている』と思わせるくらいだった。
[嶋]本当によく勝っていましたね(笑)。
[西]焦りとかなかった?
[嶋]ブッチャけ、焦りはありました。ただ、焦って中途半端な状態で復帰して、また調子が悪くなることはもっと嫌だったので、とにかく完治するまでは我慢するしかないと思っていました。
[西]葛藤だったろうと思うよ。
[嶋]病院ではグリーンチャンネルが観られなくて、15時になれば民放で観られますが、それまでのレースは携帯でチェックしていました。『あっ、俺が乗っていた馬が勝った』とか、『内田さんで勝ったかぁ』というように、追いかけていましたね。
[西]同期についてはどういう思いだったの?
[嶋]もちろん同期の方が気になりました。しかも、あの時期、なぜか杉原、藤懸(騎手)がメチャクチャ調子良かったじゃないですか(笑)。
[西]そうだね。東では杉原、西では藤懸君が、ちょうどあの頃に勝ち星を量産していた。
[嶋]正直、気になりました。
[西]その前、関東では『良い減量』というと、嶋田以外では平野(騎手)、あとは西村(騎手)という感じになっていた時期があったんだよ。その頃は、まだ杉原はそこまで出てきていた感じではなかっただけに、余計に目立ったというか、嶋田の代わり的な捉え方をしていたかもしれない。でも、復帰してからは順調に来ている印象を受けるよ。
[嶋]いえ、復帰後の初勝利までに時間がかかってしまったので、正直、焦らなかったと言えば嘘になります。
[西]そうなんだ。
[嶋](復帰後の勝利は)福島の最後の週ですからね。しかも、杉原は順調に勝ち星を稼いでいるんですよ。あるレースが終わって、『あれ、なんで杉原は勝負服脱がないんだ?』と思っていたら、勝っていた、ということもありました(笑)。
[西]うははは(笑)。でも、逆を言えば、杉原は杉原で嶋田を意識しているはずだよ。
[嶋]そうだと思います。
[西]そういえば、面白いことがあったよ。バーデンバーデンCでファインチョイスに嶋田が乗っていた時、騎手控え室でレースを観ていたら、隣で杉原が『純次、そこにいていいのか』と口にしながら、ファインチョイスに注目していたんだよ。『あっ、ダメか』とか言うんだよ。わかるだろ?(笑)
[嶋]わかります、わかります(笑)。絶対、アイツ嬉しいんですよ。
[西]終わる頃に『そんなに嶋田に勝ってほしくないのか?』と聞いたら、『そんなことないですよ。ちゃんと応援していたじゃないですか』と言うんだ(笑)。
[嶋]僕たち、お互いにそういう感じなんですよね(笑)。
[西]同期の3人(嶋田騎手、杉原騎手、横山和騎手)を見ていると、若いという部分があったとしても、お互いをとても意識している印象を受けるんだよね。
[嶋]気になりますよ。
[西]他の若い騎手たちとも話をするけど、ここまで同期で意識し合っているのはいないんじゃないかと思うんだよ。
[嶋]同期の奴らは本当に仲が良いんですよ。僕たちの同期で特別の初勝ちをした人間はすべてが新潟の1000直なんですよ。
[西]へぇ、そうなんだ。
[嶋]遊びに行く時も一緒だったりしますからね。ただ、逆に仲が良いから、強く意識しているのかもしれません。
今週はここまでとさせていただきます。
嶋田騎手は、先週の競馬で31勝目を挙げて、減量が1キロ減りました。秋は三場で騎乗するということですから、またすぐに減量が減ることになるでしょう。
31勝目となる新馬戦での勝利は波乱を演出し(15番人気での1着)、存在感を示していましたから、これからも頑張ってほしいと思います。
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