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ジェンティルドンナはライバルたちの抵抗を退けて堂々と三冠を手にした
文/安福良直、写真/森鷹史


史上4頭目の牝馬三冠、そして牡牝通じて初めての、親子三冠制覇の達成がかかった今日の秋華賞。偉業は見事に達成されたが、記録のことなど忘れるくらいに、レースそのものがスリリングだった。秋華賞史上に残る名勝負だと思う。

レースを大いに盛り上げたのは、15番人気のチェリーメドゥーサ。スタート直後は最後方にいたのが、800m行ったところで外から一気にゴボウ抜きして先頭に立ち、以降は後続をグングン離して4コーナーでは5馬身以上のリード。

折り合いを欠いて先頭に立ってしまう馬はたまに見かけるが、今回は先頭に立つときに小牧太騎手が仕掛けていたので、これは考えていた作戦だったのかもしれない。

スタートから3、4ハロン目のラップタイムが13秒2-13秒4と急激に落ちていたところでのスパートだからタイミングも申し分なし。

3コーナーからジェンティルドンナなど有力馬の手綱が激しく動いても差はすぐには詰まらなかったし、直線に入ったところでは「決まったか!」と思わせたほど。最後は脚が上がって⑤着に敗れたが、これだけ健闘できれば文句なし。伏兵が大本命馬を負かすために死力を振り絞る。こういうG1をもっと見たいですね。

大本命馬を負かすために、という点では、それにもっとも近い位置にいたヴィルシーナの走りも見事なものだった。桜花賞オークスも、そしてトライアルのローズSまでジェンティルドンナの②着。どう乗れば勝てるかを必死に研究し、それに徹した走りを見せたと思う。

1番枠から一度は先行し、途中でチェリーメドゥーサが奇襲をかけてきたときも動かず、ひたすらジェンティルドンナとの間合いを測るようなレースぶり。つねにジェンティルドンナより前にいて、つねにジェンティルドンナより内を回っていたのがその証拠だろう。

これでチェリーメドゥーサに逃げ切られたら、2番手で動かなかったヴィルシーナの責任、などと言われてしまうところだったかもしれないが、それでもかまわないというような内田騎手の意志を感じた。

直線でもジェンティルドンナに馬体を併せに行き、いったんは前に出られても最後は差し返す脚を見せた。ゴールした瞬間は「ひょっとしたら差し返したか」と思わせたのだが…。三冠レースではもっとも素晴らしい内容で、見る側としては「ヴィルシーナもよくやった」と言ってあげたいが、陣営としては悔しい敗戦に違いないだろう。

そんなチェリーメドゥーサヴィルシーナの必死の抵抗(他の馬たちも頑張ったと思うが、今回はこの2頭が際立っていた)を退けて、ジェンティルドンナは堂々と三冠を手にした。

単勝1.3倍の大本命で、過去に負かした相手がほとんどだったとはいえ、そう簡単に勝たせてくれないのが三冠レース。展開的にも苦しかったし、最後は追い詰められたが、それでも終始余裕を残して振る舞っていたようにも思える。

思えば、馬体重は秋初戦のローズSでプラス12kgだったのが、今回はさらに2kgプラス。貧弱に見える部分はまったくないが、太めと思えるところもない。そして、本場馬入場時には騎手を振り落とす場面もあったが、放馬することなく、すぐに落ち着きを取り戻す精神力。いまのジェンティルドンナは、まさに心技体が充実した状態と言っていいだろう。こういう馬だから三冠が獲れるのですね。

今後は、勝負したことがない古馬、そして牡馬との戦いが始まるのだろうが、いまの充実ぶりを保っていけば、勝ち続けることも可能なはず。それにしても、これだけの馬を2年目から送り出す種牡馬ディープインパクトのすごさも賞賛すべきもの

特に馬産地にとって、親子三冠馬の誕生は歴史的な偉業だ。今後は、親子牡馬三冠を達成する馬の誕生と、先週達成できなかった「世界一」だね。