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ゴールドシップはオルフェーヴル級と言い切れるレベルの馬
文/鈴木正(スポーツニッポン)、写真/森鷹史


いいレースだった。心から、そう言える菊花賞だった。

ダービー馬ディープブリランテが右前屈腱炎を発症し、追い切り後に回避を発表。皐月賞馬を除けば、重賞勝ち馬はコスモオオゾラ(弥生賞)しかいない。ともすれば、凡戦となりかねなかったクラシック最終戦を、ファンの記憶に強烈に刻み込む一戦へと変えたのは、ひとえにゴールドシップの強さだった。

何と言っても、2周目向正面、残り1000mからのロングスパートが圧巻だった。

戦前、自分はこんな見方をしていた。4コーナー手前で手綱をしごきながら上がるのが、この馬のパターン。だが、今回はその地点に淀独特の急坂が待っている。上りで仕掛ければスタミナを大きくロスするし、下りで仕掛けたところで周囲もスピードに乗り始めているので、先行勢との差は詰められない。よって、スパートは不発に終わる…。

内田博幸騎手の発想は、このひねくれた記者の、はるか先を行っていた。坂で仕掛けられないのなら、その手前で仕掛けてしまえ。凄い。言葉が見つからない。内田騎手の、ゴールドシップの能力への信頼というものは、ここまで凄かったのかと驚く。そして、その期待に応えるゴールドシップも、また凄い。

スタート直後はどん尻だったはずが、3コーナーで4番手の外に付けていた。この押し上げだって楽ではない。ポジションを上げた付近のラップは12秒312秒212秒512秒2皐月賞馬は11秒台で馬群の外からまくっていったことになる。

ミルドリームマウントシャスタが、この押し上げに合わせて位置取りを上げていったが、それぞれ⑫着⑨着と失速した。どう見ても、セオリーから外れたスパートだったのだ。

4コーナーを2番手で回り、直線でじきに先頭へ。まだスピードが落ちない。外からベールドインパクトが伸びかけたが、最後は完全にあごが上がって下がった(④着)。スカイディグニティ(②着)は相当に健闘したと言うべきだろう。外からジワジワと差を詰めた。だが、ゴールドシップに並ぶには至らなかった。0秒3差、完勝だ。

勝ち時計は3分2秒9。06年ソングオブウインドの3分2秒7には及ばなかったが、この年は1000通過58秒7のハイペース。対して、ゴールドシップは道中で自ら動いてラップを上げ、最後まで伸び続けて、このタイムを叩き出した。レース内容の評価で言えば、どちらが上かは説明不要だろう。

昨年のオルフェーヴルも3分2秒8と優秀な時計だった。ただ、ラップを見比べると、昨年も道中で13秒台がない、非常に引き締まったラップだったが、勝負どころの手前で12秒9がある。今年は最初の1Fこそ13秒0で入ったが、その後、もっとも緩んだ200mでも12秒6。上がりの4F、3Fは昨年(47秒235秒1)より遅いが、決してだらけた上がりではない(48秒336秒1)。昨年と同じか、それ以上の評価をしていい、厳しいレースだったと言える。

今年の3歳マイル勢は強いと評判だ。カレンブラックヒル、そして富士Sを勝ったクラレントが、その代表格。だが、ゴールドシップも相当に高いレベルの菊花賞馬だ。昨年の同時期のオルフェーヴル級。そう言い切れる。凱旋門賞②着馬の次走は未定だが、有馬記念でぶつかるのであれば、どちらに本命を打てばいいのか、少なくとも自分は迷う。そういうレベルの馬だ。

よって、ゴール前、2冠馬に食らいついたスカイディグニティもG1級の馬であると思った方がいい。来春の天皇賞あたり、相当に面白いのではないか。ブライアンズタイム×ノーザンテースト。成長力は折り紙付きで、少し古めの血統構成。嫌いではない。

血統と言えば、ステイゴールド×メジロマックイーンの配合馬が2年連続で菊花賞を制したことになる。しかも、年末の大一番で激突するかもしれない。こんな筋書き、照れ臭くて小説家でも書けないだろう。だが、そういうドラマチックなことが往々にして起こるのが競馬なのである。