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小野次郎調教師に騎手起用の基準を聞いてみました
2012.11.8

先週、我が尾関厩舎は4勝を挙げることができまして、何と30勝に到達することができました。実は30勝ということは、後になってから気が付きました。他の厩舎の方々から、いろいろ声をかけていただくのですが、とにかく毎日できることを頑張っている、というのが正直な気持ちなんですよ。

勝ち星は年末に振り返れば良いものだと思うんですが、もうここまで来たら、年末に向けてひとつでも多くの勝ち星を挙げることと、ひとつでも上のランクに上がれるように、狙っていきたいと思います。

オープン入りを果たしたサクラゴスペルについては、『本当に強くなった』と感じました。デビュー前、ゲート練習から携わらせていただいている存在なのですが、振り返ってみると、放牧に行く度に成長していっていると思います。

サークル内では「よく走る馬は変わる」と言われるのですが、まさにサクラゴスペルに身をもって教えてもらっています。以前に対談に出ていただいた添田さんが「方向性さえ人間が示してあげれば馬は自ら成長していくもの」とおっしゃっていて、その言葉を思い出します。

さて、今週は、小野次郎先生との対談の3回目になります。それでは、どうぞ。

西塚信人調教助手(以下、西)次郎さんは、ひとりの騎手に任せることが多いですよね。北海道などの出張先では特に。

小野次郎調教師(以下、小)基本的には、あまり騎手を替えたくはありません。成績の良い騎手に乗っていただくのは良いのですが、それだけ(その馬の)弱さをさらけ出すというリスクもあるわけですよね。例えば、GIに向かうとき、ピンポイントでいろいろなトップジョッキーに乗ってもらうとします。そのとき、乗ってもらった騎手の人数だけ、その馬の強さだけでなく、弱さも教えてしまうことになるのです。つまり、敵になる人間にすべてを教えてしまうことになるわけですよ。

[西]つまり、騎手の人たちは一度乗ればその馬の能力をすぐに把握するということですよね。

[小]前哨戦で武豊、横山典弘、蛯名正義、安藤勝己といったトップジョッキーに乗せて、本番は違う騎手となったとき、すでにレース前で負けてしまっている面もあるのですよ。

[西]全部を知っているわけですからね。

[小]昔の感覚なのかもしれませんが、トップジョッキーであればあるほど、弱点を見逃してはくれません。一流の騎手たちというのは、乗らなくても、その馬の弱点や癖などを見抜く力も持っているんですよ。実際に、よく観ていますしね。

[西]なるほど。ズバリ聞いちゃいますが、騎手の起用の基準は何なのですか。

[小]基本的には、自分自身の感覚ですよね。ただ、馬主さんの意向もありますから、そこはいろいろ加味しながらということになります。

[西]いまの時代はどうしても(リーディングの)上からということになりがちだったりします。

[小]もちろん、トップジョッキーたちというのは、いろいろな経験をしていますから、的確なジャッジができます。一方で、成績を残せていない騎手というのは、こちらが本当のことを聞きたいのに、オブラートに包んで話をしてくるケースが目立ちます。

[西]そういうものですか。

[小]こちらが依頼をして乗ってもらっている。たとえヘグってしまったとしても、責任はこちらにあるという話をするのですが、それでもオブラートに包んだ言葉を口にするんですよ。

[西]守ってしまうんでしょうね。

[小]ノリちゃん(横山典弘騎手)とか、エビちゃん(蛯名正義騎手)とか、走らない馬は「走らん」と言ってくれます。もちろん、言われたくないですけどね(笑)。でも、その言葉が大事なんですよ。


[西]そうなのでしょうね。

[小]あるとき、自信を持って送り出した馬がいたのですが、負けてしまったんです。ハッキリと言えば、乗り方次第では勝っていたはずというレースでした。レース後、「次郎、ごめん」とだけ会話を交わしたのですが、その騎手は次でキッチリと勝ってくれました。そのときの「今度こそ」という思いはヒシヒシと伝わってきましたし、嬉しかったですよ。

[西]そこに醍醐味があったりしませんか。

[小]勝負ごとだからこそ、その人間的な面に魅力を感じるんですよね。10回やって9回は負けるのが当たり前の世界で、そういう思いがあるからやっていられるとも思うんですよ。騎手は勝負師であって、そういう思いを見せないかもしれないけど、持っているものなんです。

[西]あるオーナーに言われたことがあって、人の思いは絶対に馬鹿にしちゃいけないし、お金では買えないと言われたことがあります。

[小]いま津村に多く乗ってもらっているんですよね。それは、うちの馬にできる限り多く乗ることで、津村自身の思いが変わっていってもらいたいと思ってのことなのです。1回、1回の競馬、その結果で交代すると、それだけ思いが薄くなってしまうと思うのです。乗り続けることで思いが強くなっていく面は間違いなくあるはずですよ。

[西]あるでしょうね。

[小]言い方は悪いですが、少々歩様が悪い馬でも乗ってもらっています。できる限り乗ってもらうことで、思いの強さが騎乗に出てくると思っています。

[西]津村を乗せる切っ掛けは何かあったんですか。


[小]最初は脩(石橋脩騎手)に乗ってもらおうと思ったら、活躍して乗ってもらえなくなったわけですよ。次は田辺と思ったら、またしても活躍して、なかなか乗ってもらえなくなりました。そこで、次は…と思ったとき、津村だったのです。

[西]もちろん技術的にということですよね。

[小]そうです。彼らと技術的に遜色ないけれど、まだ結果が出ていないということだったのです。そうしないと、なかなか乗ってもらえませんからね。

[西]タラレバの話になってしまうのですが、いま、自分の現役騎手時代のコピーロボット、小野三郎がいたとしたら、乗せますか?

[小]乗せるね。手前みそになるけど、技術に自信はあった。

[西]それはみんなそう思っていると思いますよ。フィジカル的に絶頂だった頃の次郎さんがもしいたら、乗せたいと思うだろうし、僕もそう思います。

[小]もしそういう自分がいたとしたら、「笑顔を忘れるな」、「挨拶を忘れるな」とアドバイスしますよ(笑)。

[西]そう考えると、次郎さんの現役時代に似ている騎手が好みだったりするんですかね。

[小]どうかな(笑)。ひとつ言えることは、このハ行は故障するか、大丈夫なのかを的確にジャッジできるのは一誠(村田騎手)ですよ。そういう面では一誠は似ているかもしれないです。乗せたいと思う騎手ですよ。

[西]村田さんは、玄人好み的な雰囲気がありますよね。

[小]そう、玄人好みね。昔ながらの良い面を持っていて、魅力を感じさせられる騎手ですよ。

[西]では、玄人好みでもあった次郎さんから見て、芸術的というか、そういう存在は誰ですか?

[小]芸術的ということなら、ノリちゃん(横山典騎手)ですよ。言葉で表現できない域の凄さがあります。世界で一番上手いですよ。天才さえ超えてしまっているというか、すべてを超越してしまっています。

[西]騎手の方々はそう言いますよね。

[小]同じ騎手として、どんな騎乗をするんだと、ワクワクさせられるんですよ。あんな騎手は他にいないですね。有馬記念でブエナビスタに乗ったときも、上手かったぁ。何気なく先行しているように見えたかもしれませんが、あの馬は位置を取りにいくと引っ掛かるタイプのはず。

[西]だから安藤さんは、いつも後ろから行っていたんでしょうね。

[小]そうでしょう。でも、ノリさんは引っ掛かる馬を好位でピタッと折り合わせていましたよね。さすがだなと思いましたよ。

[西]なるほど。いまはそうではなく、大きいアクションで追う姿(騎手)を多く見かけるようになっています。

[小]決して良い傾向だと思いません。それと内から差されるシーンを見かけますが、あれはダメですよ。

[西]外と内で違うものですか。

[小]騎手は勝ちたいんです。もちろん関係者は誰もそうなのですが、競馬のなかで勝つためには、強い馬を封じることもします。強い馬が勝つのが盛り上がるという方もいますが、やっている方としては、勝ちたいんですよ。いかにライバル、あるいは強い馬を負かすかと考えて、策を講じます。相手の弱点を見抜いて、そこを攻めます。引っ掛かるというのであれば、外を張っていって内に入れないようにするとか、スタートで敢えて半馬身くらい競って引っ掛からせるということも考えていますし、やるんですよ。そこは戦いですから。

[西]わずかな時間のなかでですよね。

[小]騎手人生のなかで唯一、福島で“ゾーン”に入ったことがあったんですけど、そのときは「相手がスタート直後にわずかだが無理をしたので、最後交わせる」と感じることができました。そのときなどは、実際はコンマ何秒、いや0.0何秒のことなのに、ゆっくりとハッキリとみえるんです。

[西]そういうことがあるんですね。

[小]スタートした瞬間に、左右全部の騎手の動き、それこそ指先の動きまで見えるんですよ。自分でも恐ろしいくらいに、すべてが見えて、思い通りの展開になって、結果になりました。たぶん、トップジョッキーの人たちはそれを何度も経験するんですよ。引退するまで、その感覚を思い出そうと必死でしたが、結局、あの1回だけでした。夢にもみましたけど、ダメでした。

[西]そういうことがあったんですね。以前、ある競馬を一緒にみていたときに、「騎手の腕っ節が強いから勝てた」という周囲の言葉に、次郎さんが「腕っ節で馬が走るのは大きな間違い」とつぶやいたのをよく覚えていますよ。

[小]そんなことあったかな(苦笑)。ただ、絶対に一馬力には人間は勝てないですよ。それを従わせるために、歴史のなかで様々な道具を用いて、付き合い方を確立してきたのですから。決して力ではないですよね。

今週はここまでとさせていただきます。

アルテミスSに出走を予定していたファンアットコートがフレグモーネを発症し、出走回避を余儀なくされてしまいました。いやぁ、ショックで、ショックで…。

僕自身も風邪気味で微熱があったのですが、夜に腫れてしまった脚を見た時は、いやぁ、悔しかった…。世話をしている者として責任を感じますし、反省しています。

幸い、軽症で済みまして調教をすぐに再開していて、近いうちに競馬に出走する予定となっております。次こそ無事に出走して良い結果を出せるように、全力で頑張っていきたいと思います。

あっ、最後にひとつお知らせがあります。『ノビーズ』が今度のライヴを最後に一時活動停止ということになりました。

メンバーそれぞれ、ここまでやってきて、ひとつの区切りをつけてソロ活動を……というのは冗談でして、自分自身、本気で調教師試験に向けて勉強していかなければならず、時間的になかなか厳しいためです。

ということで、ひょっとするとこれが見納めとなってしまうかもしれません。実はまだチケットも100枚近く余裕があったりしますので、どうかみなさんよろしくお願いいたします。

ということで、最後はいつも通り『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうぞよろしくお願いいたします』。