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33年ぶりの道悪競馬が明暗を分ける結果となった
文/後藤正俊(ターフライター)、写真/川井博


3冠すべて②着で「最優秀助演女優賞」というありがたくないニックネームがつけられたヴィルシーナにとって、ジェンティルドンナがいないこのエリザベス女王杯は是が非でも負けられないレース。

「完璧な仕上がり」友道師が宣言していたように、パドックに現れたヴィルシーナの馬体はピカピカに黒光りしており、秋華賞以上の状態にあると感じさせれた。

競馬格言として「連続②着馬には要注意」と言われている。

ゴール前で緩めることができる①着馬とはごく2~3完歩であっても消耗が違うこと、陣営が馬体を緩めずさらに負荷をかけて仕上げてくることから、②着続き後に大敗するケースがあることを指しているのだが、この完璧な馬体を見る限り、その心配はまったくの杞憂に思われた。

だがヴィルシーナには「運」がなかった。

「晴れの特異日」と言われる文化の日からの1週間は、例年晴天が続く。過去36回のエリザベス女王杯で、レース時の天候が「雨」だったことは一度もなく、1980年からは32年連続で「良馬場」。ところが今年は「雨・重馬場」。しかもレース直前からは特に激しい降りになって、不良馬場に近い状態になっていた。

ヴィルシーナのツメは雨馬場が下手な形はしていないが、やはり歴戦の古馬とはキャリアの違いがあった。

スタートから4~5番手の好位について、女王の走りを見せていたヴィルシーナだったが、3角から内田騎手の手綱が動き始めた。バテていたわけではないだろうが、デビュー以来初めて体験する重馬場に戸惑いが見られた。

1000m通過の62秒4は馬場を考えれば決してスローではなかったが、4角手前では外からエリンコートが強引にマクっていき、それにつられて後続も迫ってきたため、早いとは判っていたはずだが仕掛けざるを得なかった感じ。

直線、外から一旦は先頭に立ったが、すぐにその外からレインボーダリアに来られて2頭での競り合い。3角からの手応えを考えれば驚異的な粘りを見せたものの、クビ差は最後まで詰まることはなく、G1・4戦連続、ローズSを含めると5戦連続の②着と、またまたG1には手が届かなかった。

レース後、内田騎手「馬場のせいにはしたくない。持っている力を出し切ることができなかった。すみません」とコメントしていたが、どこにもミスは見当たらない騎乗ぶりで、やはり馬場しか敗因は見当たらないレースだったと思う。さすがに疲れも出てくるはずで、今後は有馬記念をパスして来春に備えると思われる。悲願のG1制覇は来年に持ち越されることになりそうだ。

5歳馬レインボーダリアにとっては、デビュー28戦目での初重賞制覇がG1となった。この28戦で掲示板を外したのはたったの3回だけ(3戦とも重賞で、うち2戦はG1)、芝では勝馬から1秒以上離されたことはないという堅実ぶり。

去年の⑤着馬だから能力、コース適性もあるのだろうが、やはり重馬場で経験が活かされた部分が大きかったのだろう。父ブライアンズタイム、母の父ノーザンテースト。サンデーサイレンスの出現以前なら「最強のニックス」と思われていた配合だが、高速馬場の切れ味決着が主流となっている現在の競馬では、やや重たさが気になり始め、ブライアンズタイム産駒はダートが主戦場になりつつあった。

ブライアンズタイム産駒の芝G1制覇は、この10年間で07年皐月賞のヴィクトリーだけだった。だが、時計のかかる馬場状態になれば芝でも十分に通用することを、改めて証明した。高齢になっても能力の衰えが目立たない血統だけに、今後も時計のかかる馬場では要注意だ。

③着ピクシープリンセスダーレージャパンファーム生産モハメド殿下所有のディープインパクト産駒。スタートでのめってダッシュがつかず最後方からの競馬となったが、直線大外から猛然と追い上げた脚は、デムーロ・マジックを差し引いたとしても見どころ十分。

長い休養を2回挟んでいて、まだキャリア9戦。重賞初挑戦がG1だったが、これだけのレースを見せられたのだから、素質の高さは相当なもの。今後の成長がもっとも楽しみな1頭だ。