喧騒の中、ゆったりとお茶を飲んでいるかのようだった
文/編集部(M)
06年(4歳)が②着、07年(5歳)が③着、08年(6歳)が④着、09年(7歳)が⑤着。年齢を重ねるとともに着順は下降していたわけで、8歳にしてジャンプアップしようとはなかなか想像できなかった。これは
今回の話ではありません。
10年阪神大賞典(勝ち馬
トウカイトリック)の
このコーナーで記したものだ。これと
似たようなことが2年後に起ころうとは……いやはや、まったく想像できなかった。
今年
10歳となった
トウカイトリックは、今回の
ステイヤーズSが
6度目挑戦だった。過去5度の成績は、06年(4歳)が
②着、07年(5歳)が
④着、08年(6歳)が
⑧着、09年(7歳)が
④着、11年(9歳)が
③着。
阪神大賞典とは異なり、近年は年齢を重ねて着順を盛り返していたわけだが、それにしても、
10歳にして突き抜けることまでは想像しきれなかった。
5歳時(07年)に1番人気で④着に敗れた時は、同年の
ダイヤモンドSを勝ち、前走の
アルゼンチン共和国杯でも②着になっていたから
「広いコースの方が合うんだろう」と結論付けていたが、いやあ、この馬は
広いとか
狭いとか関係ありませんな(笑)。
長距離なら強い。10歳の今頃になって結論付けるのも恐縮ですが(笑)、
トウカイトリックはそういうことなんでしょう。
08年の
ステイヤーズS(勝ち馬
エアジパング)での
このコーナーでは、
「人生はステイヤーズS」なる話を書いた。終始内で我慢し続けた
エアジパングが最後に伸びてクビ差の接戦を制し、鞍上の
横山典騎手が「馬も人も道中で我慢した分、最後に弾けた」と話していたからだ。人生も同じように
我慢が大切…。今回の
トウカイトリックも、あの時の
エアジパングと同じようなレースぶりを見せた。
小回りの中山コースを2周するレースらしく、今回は、道中で先頭に立つ馬が何度も入れ替わる展開になった。最初は
メイショウクオリア、1周目の途中から
ケイアイドウソジン、2周目からは
メイショウウズシオがハナに立ち、2周目の3~4コーナーでは外を回って
ファタモルガーナと
デスペラードが仕掛ける。
息の入りづらい流れになった。
トウカイトリックはそんな激しい争いの中、終始
内でジッとしていた。若いモンが外でわーわーやってる喧騒の中、ゆったりと
お茶を飲んでいるかのように……。
いや、
北村宏騎手が
「ずっと追い通しに見えていたと思う」と話していたように、実際の
トウカイトリックはお茶をすすってるような感じではなく、鞍上の腕がせわしなく動いていた。それでもスタミナ切れを起こすことはなく、最後の最後まで
脚が温存されていた。
北村宏騎手も、管理する
野中調教師も、
「馬がえらい!」と讃えていた。いやしかし、10歳馬を復活させる
厩舎スタッフも素晴らしいし、大外枠の馬をソツなく内に潜り込ませて差し切った
北村宏騎手の腕も見事だった。これは
トリックでもなんでもない、正真正銘、
実力での快勝だった。
トウカイトリックは来春の
天皇賞・春を目指すという。もし出走が叶えば、都合
8度目の挑戦になる。せっかくなので、過去7度の戦績を載せておこう。06年(4歳)が
⑨着、07年(5歳)が
③着、08年(6歳)が
⑦着、09年(7歳)が
⑥着、10年(8歳)が
⑨着、11年(9歳)が
⑤着、12年(10歳)が
⑧着。
阪神大賞典や
ステイヤーズSとは異なり、
天皇賞・春ではまだ連対歴がない。ただし、その
着順と
着差を並べると、こんな具合になる。
トウカイトリックの天皇賞・春成績
年 |
年齢 |
着順 |
着差 |
06年 |
4歳 |
⑨着 |
1秒9 |
07年 |
5歳 |
③着 |
0秒0 |
08年 |
6歳 |
⑦着 |
1秒3 |
09年 |
7歳 |
⑥着 |
0秒7 |
10年 |
8歳 |
⑨着 |
1秒9 |
11年 |
9歳 |
⑤着 |
0秒5 |
12年 |
10歳 |
⑧着 |
1秒6 |
⑦着以下と
⑥着以内が交互で、着差も
1秒3以上と
0秒7差以内が交互。順番でいくと、来年は…?
着順はどうであれ、もし来年の
天皇賞・春の舞台に立てば、前述した通りに
8度目となる。
90年以降の
JRA・G1で、同一レースに
5回以上の出走歴があるのは、次の馬たちになる。これを見れば、
トウカイトリックが
天皇賞・春に7度も挑戦していることの偉大さがよく分かるだろう。
90以降のJRA・G1で、同一レースに5回以上の出走歴がある馬
レース名 |
馬名 |
出走数 |
フェブラリーS |
ノボトゥルー |
6度 |
天皇賞・春 |
トウカイトリック |
7度 |
スプリンターズS |
タマモホットプレイ |
5度 |
マイルCS |
テレグノシス |
5度 |
ジャパンC |
コスモバルク |
6度 |
JCダート |
ヴァーミリアン |
5度 |
有馬記念 |
コスモバルク ナイスネイチャ |
6度 5度 |
中山GJ |
メルシーエイタイム |
5度 |
中山大障害 |
メルシーエイタイム |
5度 |
すでに
1位の
トウカイトリックがどこまで記録を伸ばすか。来春の
天皇賞のパドックに現れたら、それだけで
盛大な拍手を贈りたいものだ。