管理した産駒での経験を活かし、ローブティサージュで成功を収めた
文/後藤正俊(ターフライター)、写真/川井博
まだまだ
「牝馬の時代」が続いている。
ジャパンCでジェンティルドンナが、あのオルフェーヴルを下して3歳牝馬として初優勝を果たし、ウオッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタと続いた
「女傑伝説」を継承した。
阪神JFは、阪神競馬場が改修された後のこの6年間の勝ち馬が、ウオッカ、トールポピー、ブエナビスタ、アパパネ、レーヴディソール、ジョワドヴィーヴル。故障で大成する前に引退した馬もいるが、どの馬も
衝撃的な強さを見せてくれた名牝ばかりが名を連ねている。
今年は飛び抜けた存在こそ見当たらないものの、抽選の6頭を含めて18頭フルゲートで、
牝馬の時代を象徴するレベルの高さを示す逸材がズラリと揃った。
その中から
2歳女王に輝いたのは
ローブティサージュだった。
ローブティサージュは1400m、外枠だった
ファンタジーSでも②着に追い込んだが、道中は終始掛かり気味で、何度か首を挙げるシーンも見られた。
それだけに、例年のようなスローペースになると折り合い面での
不安はあったが、この日は4頭が先行争いをする前半4ハロン45秒9の
ハイペース。しかも1番枠を引き当てたことにより常にインコース中団で、前に馬を置く
理想的な展開となり、掛かる面を見せることはなかった。
直線は粘る
クロフネサプライズの外側に進路を取り、最内から伸びた
レッドセシリアとの3頭の競り合いをクビ、クビ差しのいでゴール。時計は1分34秒2でこの5年間ではもっとも速かったが、レース上がり36秒4、
ローブティサージュは35秒9と、これまでの
2歳女王のような瞬発力の勝利ではなく、
最後までバテずに伸び続けた力強さが際立っていた。
父はウォーエンブレム。種付けにムラがあり、07、08年生まれの産駒は0。だが、産駒の勝ち馬率は
初年度、3年目が100%。27頭がデビューした2年目世代は20頭が勝ち上がり、ブラックエンブレムの
秋華賞制覇など
重賞6勝。現2歳世代はこれまででもっとも多い43頭の血統登録がある。これまで
JRAでは5頭が勝ち上がっており、他にもヴェントスが
交流Jpn3・エーデルワイス賞③着、タガノエンブレムが
野路菊S③着と実績を残している。
気性の激しい産駒の特徴を各育成牧場、厩舎もつかみつつあり、これまでと違って芝でも
好走例が目立ってきている。
ローブティサージュの
ノーザンファームでの育成時の評価は
「馬体はそれほど大きくないのに、すごいパワー。気性は良く言えば前向きで、たまに手に負えない暴れ方をする」。入厩後も「
坂路の入り口から中に入ろうとしなかったり、他馬を蹴飛ばそうとしたり、かなり気の強いヤンチャ娘」と
厩務員を手こずらせていた模様。
だが、関西リーディング5位と躍進している
須貝師は
「ウォーエンブレム産駒は新馬から続けて使うと、消耗してしまうのか成績が尻すぼみになってしまう。ゆったりとしたローテーションで、気合を充実させることが肝心」と、07年ヴァリアントレディ(新馬勝ち後、
阪神JF⑭着)での経験を活かし、
ローブティサージュは7月の新馬勝ち後4か月の休養をはさんで、モチベーションの維持に努めて成功させた。少なかったデータが整ってきて、これからは
ウォーエンブレム産駒の躍進が期待できそうだ。
ローブティサージュの並んだら抜かせない勝負根性、タフさ、丈夫さは、
桜花賞、
オークスになっても存分に活かされるはず。また、ハイペースを逃げ粘り、最後もひと伸びした②着
クロフネサプライズ、
「すごい脚を使ってくれた。この馬は走る」と
三浦騎手が絶賛した③着
レッドセシリアの2頭の人気薄馬、そして1番人気を裏切ったものの不利な大外から直線よく差を詰めた1番人気
コレクターアイテムらも、まだまだ
未知の魅力に包まれている。
クロフネサプライズはクロフネ産駒ながら母父トニービンでスタミナがあり、18キロ増だった馬体重からも今後の上積みが大きそう。
レッドセシリア、
コレクターアイテムはともにハーツクライ産駒で、距離延長も大歓迎のはず。この世代の牝馬勢は
阪神JFの前評判通りに、ハイレベルな群雄割拠のまま
クラシック本番へと進んでいきそうだ。