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「これは絶対に負けないだろう」と言ってしまいたくなる1.1倍だった
文/浅田知広、写真/稲葉訓也


競馬に「絶対」がないことは、昨年のこのレース・オルフェーヴルの例を持ち出すまでもなく、なんらかの形で強く実感された(痛い目に遭った)ことのある方も少なくないだろう。しかし、つい「これは絶対に負けないだろう」と言ってしまいたくなるくらいの馬、それが単勝1.1倍である。

その単勝1.1倍、実際のところはどんなもんなの、と調べてみると、03年以降の平地戦で135頭が出走し、107勝で勝率は約80%。なんとまあ2割も負けているわけで、これは「絶対」とはほど遠い

重賞でも04年の日経賞ゼンノロブロイが②着に敗れ、9連勝のあとが昨年のオルフェーヴル(ほかに1.0倍ではディープインパクト菊花賞がある)。10回のうち1回でも負けると単勝でマイナスとなってしまうのが1.1倍。どんなに堅いと思っても、基本的にはアタマで買うことをオススメしたくない馬なのだ。

しかし、実際に出馬表を前にすれば「これは絶対に負けないだろう」と言ってしまいたくなる、ゴールドシップの1.1倍だった。同世代対決の菊花賞はさておくとしても、初めて古馬との対戦になった有馬記念が、かなりのロスがありながらもあの圧勝劇である。今度はG2、4歳で57キロなら、かなり気を遣っても「まず負けないんじゃないの?」という話になるものだ。

ただ、単勝1.1倍というと、実際は8割しか勝っていないにも関わらず、ファン「安心して見ていられる競馬」まで期待しがち。その点、ゴールドシップは、オルフェーヴルとはまた違う面で「怖い」ところのある馬だ。

今回、まったく二の脚がつかなかった有馬記念ほどではないにせよ、やっぱり見た瞬間に「大丈夫かぁ~」と言いたくなるスタートだった。よく、調教で時計の出ない馬は「お金になるところでしか走らない」などと言われたりもするが、いくら長距離戦とはいってもゲートが開けばレースである。

以前の例があるだけに、今回も少し走ればやる気を出してくれるだろうとは思っても、なにせそこは人ではなく馬のやること。そのままやる気ナシで終わってしまうのではないか、とファンに少しでも不安感を与えるあたりは、単勝1.1倍の馬としては、もしかしたら「失格」と言えるのかもしれない。

もっとも、そんなところがあるからこそ、折り合いとスタミナが重要なこの長距離戦で単勝1.1倍に推されるほどの結果を出し続け、そして強い馬だと信じられることにも繋がってくる。

ファンの見守るスタンド前にかかれば最後方から1頭、もう1頭と交わし、向正面ではしっかりと馬群の一角を確保。そして、内田博幸騎手がゴーサインを出せば、あとはもう「いつも通り」だ。

ただ今回の直線は、先頭に立ってから伸びが鈍って、ラスト1ハロンは13秒0。この馬に真っ向勝負を挑んだベールドインパクトが失速して④着に敗れていることもあり、「これだけ長く脚を使えば、さすがのゴールドシップでも止まるのか」とも思えた。

ところが。レース後の内田博幸騎手のインタビューによれば、先頭に立ったところでお仕事終了、という走りになっていたらしい。ビデオを見直せば確かに、本気が垣間見えた前を捕らえにかかるまでと、抜け出してからは違って見える。どうやら今日は、最初と最後の1ハロンでウォーミングアップとクーリングダウンをしていたようである。

まったくもって順調なスタートを切った昨年の「最優秀3歳牡馬」ゴールドシップ。昨年はG1・3勝で、1回しか負けていないのに年度代表馬の座を逃すなど、最上級に近い「相手が悪かった」1年だった。そのタイトルを手にするには、今日のレースはもちろん、これからもまだまだ負けられない戦いが続いていく。