マーチSは「勢い」だけでは突破できない
文/編集部(M)、写真/米山邦雄
1番人気がまたも敗れた。今回の1番人気は
ジョヴァンニだったが、同馬は先行策を採るも直線入口で逃げた
バーディバーディに突き放され、最後は
⑩着での入線となった。
マーチSでの1番人気は、これで
4連敗。4年前に1番人気で勝ったのは
エスポワールシチーで、それ以前も1番人気は
8連敗を喫していたから、かなり強力な馬でないと、
マーチSでの1番人気は信用できないことが分かる(ここ10年では[1.1.1.7])。
ただ、
エスポワールシチー後の近3年の1番人気が何だったか、思い出せる人はいるだろうか? 改めて成績を見返したら、
この馬を1番人気にしてしまった側にも責任があるんじゃないかと感じた。
3年前の2010年は
モンテクリスエスで、11年は
タガノジンガロ、昨年は
シルクシュナイダーだった。この3頭は、その後がいずれも
未勝利。ダート戦で③着以内を記録したのも、昨春の
アンタレスSで
シルクシュナイダーが③着となっただけだ。今になって振り返れば、
どうしてこのような馬たちを人気にしたんだ?と思わないだろうか。
理由は簡単で、この3頭はいずれも前走のOP特別で連対圏に入り、
タガノジンガロと
シルクシュナイダーは4戦以上の連続好走を続けている最中でもあった。簡単に言えば、
「勢いがあった」のだ。
ところが、面白いものだが、
マーチSでの1番人気に
「勢い」は必要ない。近年は特にその傾向が強く、
「勢い」よりも
「実績」が重要なのだ。
01年以降の
マーチSでの1番人気は[1.1.1.10]という成績で、これを前走着順で分けると、
前走が③着以内だった馬が[0.0.1.9]で、
前走が④着以下だった馬が[1.1.0.1]。ちなみに、馬券に絡んだ3頭はすべて
ハンデが57.5~58kgで、
57kg以下だった馬は[0.0.0.9]。「勢いもあるし、ハンデも重くないから」という理由で安易に飛びついたら、
痛い目に遭うのが
マーチSなのである。
そういう意味では、
マーチSはG3のハンデ戦だが、
芝の別定G2に似た雰囲気がある。古馬の別定G2(芝)は、今年の中山では3レースが行われ(
AJCC、
中山記念、
日経賞)、昇級馬は、
AJCCで
サトノアポロが
④着に、
日経賞では
アドマイヤフライトが
⑥着に敗れている。芝の別定G2は
経験値を問われることが多く、
マーチSもこの点で共通している。
「重ハンデ馬は、ハンデのマイナス面よりも地力に期待すべき」と
『メインレースの考え方』で記した通り、今回の
マーチSは、トップハンデの2頭(
グランドシチー、
バーディバーディ)が後続を引き離してハナ差の接戦を演じた。優勝したのは
グランドシチーで、これが
重賞初制覇だったが、
バーディバーディも自らペースを握り、一度は後続を突き放してハナ差だったのだから、
強いレースを見せたと言える。
バーディバーディは、重賞での連対圏突入が、実に3歳時の
ユニコーンS(①着)以来となった。古馬になってからの連対は、昨年6月の
アハルテケS(東京ダート1600m・①着)と今回の2レースで、いずれも
北村宏騎手によって
逃げた時だ。
今後も、逃げた時は簡単に止まりそうになく、
ダートの上級条件での高い門番となりそうだ。
「交流重賞に行くのなら、俺を倒してからにしろ」。なんだか、そんな言葉が聞こえてきそうです(笑)。
バーディバーディは、地方の交流重賞への参戦が、3歳夏以降はすべて
Jpn1だけで、そんな心情であっても、あながち間違いじゃない気がする。
グランドシチーは、重賞未勝利ながらハンデ58kgを課せられ、勝ち鞍のない
ふた桁馬番にもなったので心配したが、最後の伸び脚は
鬼気迫るものがあった。
直線半ばでは、
フレイムオブピースや
グラッツィアと凌ぎを削る感じだったのに、ハンデが2kg以上軽いその2頭を置き去りにし、いち早く抜け出していた
バーディバーディを捕え切ったのだから、恐れ入った。昨年12月の
フェアウェルSで、
ホッコータルマエを2馬身以上ちぎり捨てたその末脚は、やはり強力であった。
グランドシチーは今年1月の
東海Sで⑤着に敗れ、芝馬の参戦もあって、今年の
フェブラリーSに出走できなかった。しかし、今回の重賞初制覇で賞金を加算し、晴れて
G1(Jpn1)戦線に殴り込みをかけられるだろう。
準OP以上での4勝はすべて
中山ダート1800mだが、
左回りでも勝ち鞍はあるし、
平坦コースでも勝ったことがある。活躍の場は広いはずだから、6歳春のいまから
真の充実期を迎えることがあっても、まったく不思議ではないはずだ。