ロゴタイプが示した精神力、持久力は強靭だった
文/石田敏徳、写真/森鷹史
内田博幸騎手騎乗の
オメガブレインがまんまとマイペースの逃げに持ち込んで、そのまま鮮やかに押し切ってみせた中山9Rの
鹿野山特別(芝2000m)の勝ちタイムが
1分59秒7。1000万特別にしてはやや手薄なメンバー、しかもあの展開で走破時計が2分を切ったのだから、
皐月賞もかなりの高速決着になることは、その時点で予測がついた。
思えばこの日、中山で行われた芝のレースでは、4Rの
3歳未勝利(芝1600m)は
マイネルミラノが逃げ切り勝ち、8Rの
袖ケ浦特別(芝1200m)でも雁行する形で逃げた
ミヤジエムジェイが、直線の入口で後続を突き放して快勝を飾っている。
じゃあ
皐月賞は何を買うか? 逃げ馬でしょ!
というわけで
コパノリチャードの逃げ切りを狙ってみたのだが、まさかあそこまでの
ハイペース(前半1000mの通過ラップは58秒0)になるとは。パドックでは程よい気合乗りと映ったし、レースもそれほどブンブン飛ばしている走りには見えなかったのだが……。さてはお主、マイラーだな。
「そんなことはとっくの昔に分かっていた」というツッコミが聞こえてきそうなので、⑬着に沈んだマイ本命馬についてはここらへんでとどめ、話を本題のレース回顧に戻そう。
軽い馬場に超のつくハイペースが輪をかけて、レースのみならずコースのレコードをも塗り替える高速決着となった今年の
皐月賞。パンパンの良馬場なのに“重に近い稍重”を舞台に争われた3年前(優勝馬
ヴィクトワールピサ)とまったく同じだったレースの上がり時計(35秒9)が物語る通り、
持久力勝負の様相も呈した一戦の凱歌は2歳王者
ロゴタイプにあがった。
レースのポイントとなったのはスタンド前から1コーナーにかけて、外の各馬が徐々に内へ寄せていった場面だった。
「(1周目の)ゴール板あたりまではいい感じだったけれど、他の馬に寄っていくとガツンとハミを噛んでしまった」と
エピファネイアの
福永祐一騎手。
一方、上位人気を分け合っていた
コディーノも、外から内に入ってきた
ラブリーデイの
煽りを受けた格好ですぐ内を進んでいた
ロゴタイプと接触、
「あれで馬がカーッとなり、ハンパじゃなく引っ掛かってしまった」と
横山典弘騎手は明かしている。
両馬とも、バックストレッチあたりではまずまずの平常心を取り戻していたとはいえ、速いラップが刻まれたレースの序盤に折り合いを欠いてしまった
“ロス”は、決して小さなものではなかった。
そんな2頭に比べると、
ロゴタイプが示した精神力、そして持久力はなんと強靭だったことか。
ミルコ・デムーロ騎手によれば、
コディーノと接触した
アクシデントも
「馬が集中して走っていたので別に問題はなかった」そうで、道中はスムーズに折り合って中団馬群のインを追走。4コーナーでは
カミノタサハラを弾き飛ばすようにして外へ持ち出されると、最後の直線では懸命に食い下がる
エピファネイアをねじ伏せて
一冠目のゴールを駆け抜けた。
②&③着に敗れた
エピファネイア、
コディーノは
序盤のロスのぶん、伸び切れなかった格好ながら、同じ関門をクリアしての勝利だけに、ここはやはり
ロゴタイプの“強さ”を褒めるべきだろう。
スプリングSからの1ハロンの距離の延長もまったく問題とならなかった今日の内容からすれば、
ダービーの最有力候補と目されるのも当然、この馬。少し気の早い話だが、
朝日杯を制した2歳王者が
皐月賞、
ダービーの
二冠を達成すれば、
ナリタブライアン以来、実に19年ぶりの快挙となる。
唯一最大の
不安材料は、3年前の
ヴィクトワールピサ(
ダービーは③着)と同様、持久力ではなくスローの瞬発力勝負となったときに、キレ味の不足に泣くケースか。
これに対して
エピファネイア、
コディーノはやはり“折り合い”が巻き返しのカギを握る。とはいえ
皐月賞組から1頭、逆転候補をあげるとすれば、その2頭よりもむしろ
カミノタサハラ。超のつくハイペースを馬群の外々で追いかけ、4コーナーでは外に弾かれながらもなお、④着にまで押し上げた末脚は、東京2400mの舞台にピッタリと映った。