前が止まらない馬場で、馬の特徴を活かしきっての勝利
文/編集部(T)、写真/森鷹史
1番人気は前走で
中山記念を勝った
ナカヤマナイト、2番人気は前走が
中日新聞杯勝ちの
サトノアポロ。同じ単勝7.0倍で、前走が
小倉大賞典②着の
ダコール、
中日新聞杯②着の
アドマイヤタイシが並び、前走が重賞で好走している4頭が上位人気に推される形となった。
ハンデを見ると、58kgで
ナカヤマナイトと
ローズキングダム、57kgで
サトノアポロなど5頭、
ダコール、
アドマイヤタイシは56kg。もっともハンデが重い馬と軽い馬の差は4kgで、上位と下位とは大きな差はない、というのが今回の
新潟大賞典の姿だった。
そんな中で、レース中盤、中団から後方に控えた
ナカヤマナイト、
サトノアポロなどを見ながら、この2頭を軸にした馬券を持っていた自分は、内心ほくそ笑んでいた。
「ダンツホウテイの大逃げでペースが速い(前半1000m通過は58秒0だった)。直線の長いコースでもあるし、これはもらったか」と。
しかし、大逃げを打った
ダンツホウテイを残り300mで交わした
パッションダンス(ハンデ55kg)を見たあたりから、
「そういえば開幕週だった…」と今さらながら思い出し、自分の顔色はだんだん変わっていった(もちろん見ていないが、そんな気がする)。
不安は的中し、
パッションダンスはそのまま先頭を譲らず、好位から差を詰めた
アドマイヤタイシを
ハナ差振り切ってゴールした。
直線半ばで
コスモファントム(⑮着)が外にヨレたことで、③着に入った
ダコール、④着の
サトノアポロ、⑤着の
ナカヤマナイトなど、後方から差を詰めつつあった上位人気馬が軒並み被害を受けた(なお、JRA発表によると被害馬は6頭いたが、
いずれも加害馬に先着しているので、降着、失格となる事例ではありません)。
しかし、①着
パッションダンス、②着
アドマイヤタイシと③着
ダコールとの差は
3馬身。前を交わすまでに至ったかどうかは微妙なところではないか、と思う。
前が止まらない馬場については、実は開幕週だということ以外にも前兆があった。JRAのサイトでは毎週金曜にその週の馬場状態を発表しているが、
今週の新潟は野芝6~9cmだった。
たとえば、今週末の東京が
野芝6~8cm、洋芝14~18cmで開催されていることからも分かるように、相当芝が短い。ちなみに、昨年の
新潟大賞典が開催された週の新潟芝の馬場状態を見ると、
野芝が7~10cm(昨年、今年ともにBコースでの開催)で、昨年と比べても短かったのだ。
昨年の
新潟大賞典は稍重、今年は良馬場の違いはあるが、
勝ち時計の1分56秒9からも分かるように、昨年と比較しても時計が出やすく、前が止まりづらい馬場だったということなのだろう。
パッションダンスは
過去9戦でメンバー中2位以内の上がりを記録したことがなく、今回の
上がり34秒3もメンバー中では4位タイだった。一瞬の切れ味勝負ではなく、
長く良い脚を使う特徴を十分に活かした
藤岡康騎手も、見事な騎乗ぶりだったといえるだろう。
パッションダンスは
父ディープインパクト×母キッスパシオンという良血で、半姉に重賞4勝馬
アドマイヤキッスを持つ。本馬もデビュー勝ちの後、2戦目で
京都新聞杯に挑戦(⑥着)するなど、期待を集めていた馬だった。
しかし、その
京都新聞杯の後に骨折。1年の休養を挟んで昨年夏に復帰し、その後は順調にクラスを上げ、今回が待望の
重賞初勝利となった。
藤岡康騎手も落馬負傷などがあって、これが1年3ヵ月ぶりの重賞勝ちとなる。人馬ともにアクシデントを乗り越えた点で、通じるものもあるのかもしれない。
血統的なポテンシャルはかなり大きいと思われるだけに、今後は更なる上積みも見込めそう。さらなる強敵相手にどのようなレースをするか。楽しみになる勝利だった。