その姿はタップダンスシチーのようだ
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
平安Sは別定重量で、牡セン馬は
56kgを基準にして、近1年にG1勝ちがある馬が
3kg増加(59kg)、G2勝ちがある馬が
2kg増加(58kg)などとなっていた。斤量で実績を計ると、最上位の存在が
59kgを背負う
ニホンピロアワーズと
ハタノヴァンクールで、以下、
ソリタリーキング(58kg)、
ナイスミーチュー(57kg)と続いていた。今回は、
その斤量への対応力の差が結果につながる形となった。
レース展開を予想していた人にとって、驚いたのは
ハタノヴァンクールの位置取りだろう。多頭数の競馬に替わった今回は、序盤を後方に位置するのかと思いきや、スタート直後に促されて
中団を追走した。
道中では
ニホンピロアワーズをマークするような感じだった。だが、勝負所で鞍上の手が動き、直線に入ってもいつもの伸びが見られない。今回に限っては、
余所行きの競馬をしたことが⑤着という結果になった要因に思われる。
ただ、あくまでこれは
「今回の結果に限っては」の話だろう。
ハタノヴァンクールの陣営にとって、収穫がないレースではなかったはずだ。次走には、この経験を活かす競馬をするのではないか。
ソリタリーキングもスタート直後に促される感じだったが、こちらはすぐに後方に位置し、直線勝負の構えを見せた。
ところが、勝負所での反応が良くなく、直線でも伸びてこない。2走前は同じ
斤量58kgで35秒3の上がりで④着まで差していたのだから、こちらはやや
不可解な凡走になった。上位人気での凡走がたまにある馬で、気難しい面が出たか。
実績上位の存在の中で、盤石の強さを見せたのが
ニホンピロアワーズだった。準OP以上での勝利は少頭数かふた桁馬番の時だったので、
多頭数での最内枠という条件がどうかと思われたが、本格化した今となってはまったく関係なかった。
序盤は3番手を追走し、向こう正面で先を行く2頭との差を詰めると、持ったままで直線に向いた。もちろん鞍上の
酒井騎手がコントロールしてのことなのだろうが、映像だけ見ていると、馬がすべてを分かっていて、3~4コーナーで
「じゃあ、そろそろ行きますか」と声をかけているようだった(笑)。
競馬の世界では
「馬が自信を付けた」などと言われることがあるが、
ニホンピロアワーズも今は自信満々なのか、本当に強くなった。
4歳秋に初重賞制覇を飾り、
5歳秋にG1制覇。
6歳に充実一途となっているその姿は、芝とダートの違いこそあれ、
タップダンスシチーとイメージがダブる。海外のビッグレースにも挑戦してほしいと願うのは、私だけではないだろう。
ニホンピロアワーズにとって、当面の目標は6月26日の
帝王賞だ。ここには、もはや
宿敵となりつつある
ホッコータルマエも出走を予定している。
ニホンピロアワーズと
ホッコータルマエは昨秋以降、
みやこS、
JCダート、
アンタレスSと3度対戦し、
ニホンピロアワーズが2度先着している。その3戦とも
ニホンピロアワーズの方が
重い斤量を背負っていたので、同斤量なら
ニホンピロアワーズの方が互角以上と言えるはずだ。ただ、
アンタレスSで
ホッコータルマエの後塵を拝したままという事実が後味が悪い。
ニホンピロアワーズが強くなっているのは間違いないが、
ホッコータルマエも重賞4連勝中で
日の出の勢いだ。
ニホンピロアワーズが再び
ホッコータルマエを下すのか、それとも返り討ちにするのか。両馬とも57kgでの出走となる
帝王賞は、
凄い闘いになりそうだ。
帝王賞は他にも
ローマンレジェンドや
ワンダーアキュートが出る可能性があり、超豪華メンバーとなりそう。ただ、その中でも先行策を取りそうなのは
ニホンピロアワーズと
ホッコータルマエで、位置取りがどうなるのか、最初の1コーナーまでもが緊張しそうだ。
スタートから1コーナーまでこんなに緊張するなんてことは……
セナと
プロストが接触しちゃった
90年の鈴鹿GP以来かもしれません(笑)。もちろん、
ニホンピロアワーズと
ホッコータルマエには、接触しないでゴールまで凌ぎを削ってほしいものだ。そこで勝利をした馬が
現役ダート最強馬の称号を得ることになるだろう。