中距離路線で大成する可能性を改めて示した
文/浅田知広、写真/川井博
1年12ヵ月を春夏秋冬に区切って夏にあたるのは……、暑さで言えば7~9月かもしれないが、一般的には6~8月になる。そして、中央競馬の世界で夏競馬といえば、
「夏季競馬番組」に掲載される、3歳と古馬の混合戦がはじまる開催から。今年の場合は6月1日、3回東京・阪神開催以降がこれにあたる。
では
「サマー2000シリーズ」の対象レースといえば? こちらは夏競馬スタートから約ひと月遅れの7月7日・
七夕賞から、9月1日の
新潟記念までの全5レース。同じ夏競馬の中で行われている6月1日(昨年は6月2日)の
鳴尾記念は、その対象レースに含まれていない。
とはいえ、
鳴尾記念から
七夕賞までは間隔がひと月以上。同じ夏競馬の2000m戦だからといって、なんとしても
サマー2000シリーズに追加しなくてはいけない、というものでもない。と、あくまで外野の視点から見ればその程度の話ではあるのだが。その
鳴尾記念を勝った
トウケイヘイロー陣営にしてみれば、
「なんで入ってないんだ!」と言いたくなるところかもしれない。
もっとも、その
トウケイヘイローの
鳴尾記念優勝は
「怪我の功名」という部分もあるものだった。
骨折休養からこの春に復帰すると、まずは1600万のマイル戦を快勝し、続く
ダービー卿CTで重賞初制覇。
しかし、2番人気に推された
京王杯スプリングCで⑧着に敗れると、マイルに戻るはずだった
安田記念は無念の
除外に。そこで、折り合いに不安を抱えながらも2000mの
鳴尾記念に出走すると、意外や意外、向正面からロングスパートを決めての快勝劇である。
もし
トウケイヘイローが
安田記念に出走していたら、この夏はどうなっていただろうか。
その結果にもよるが、もしかしたら来週の
中京記念から、
サマーマイルシリーズに照準を定めたローテーションを組んでいた可能性もありそうなもの。いや、
鳴尾記念を勝っても
「やっぱり適性はマイル」と考えれば、そちらの路線に進む手はあった。しかし、陣営はこの
サマー2000シリーズ・
函館記念を選択したのだった。
果たしてこの選択がどう出るのか。
鳴尾記念は
モズの2番手につけ、阪神開幕週の馬場で800m通過
49秒0。そして今回は、逆に
モズを2番手に従える形で先手を奪い、函館5週目の馬場で800m通過
46秒7である。もちろん、今回のほうが折り合いをつけやすい展開ではあるのだが、
前半から速いペースを刻んで2000mをこなせるかどうかは
未知数だ。
しかし、そんな流れでも馬群は縦長にならずほぼ一団。むしろ、1ハロン12秒台にペースがやや落ちた向正面以降のほうが、追走に苦労する馬が目立っていた。結果的には、好位以降の馬は前を追いかけすぎで、
末を失ってしまったのだろう。
一方、前を行く
トウケイヘイローは、自身がもっとも手応が良いくらいの形で4コーナーを通過すると、ラスト3ハロン12秒0-11秒6-12秒1の
35秒7を要しながらも鮮やかな逃げ切り勝ち。前走のようなロングスパートでも、今回のように前半から速めのラップを刻む形でも、この距離のスペシャリストたちを完封してみせたのである。
運の良い勝利に思えた
鳴尾記念と、レース選択の段階から勝利を引き寄せたと言える今回の
函館記念。マークされる形になった展開面からも、同じG3の重賞ながらまったく違った印象を受け、
中距離路線で大成する可能性を改めて示した一戦となった。
2000mの大一番といえば
秋の天皇賞。その前に
札幌記念(8月18日)あたりでシリーズの王者に就くのかも含め、今後がますます楽しみになってきた。そんな流れから一転
「実はマイルCSでG1初制覇」という結果もなきにしもあらず? さて、
トウケイヘイローはこれからどんな活躍を見せてくれることになるのだろうか。