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環境や制度は、強い馬を生み出すためにあるべき
2013.7.25
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大竹正博調教師…以下[大]
西塚信人調教助手…以下[西]

[大]いまの時代、騎手はフリー化が加速していることもあって、必ずしも攻め馬に乗ることができるということではありませんので、感覚を得ることなく騎乗するケースが圧倒的に多いです。レースを見たり、あるいは伝聞で得た情報からイメージを膨らませていきます。そこで、我々の言葉もひとつの大切な情報となりますので、言葉は選びますし、気を遣います。

[西]そうなんですよ。その言葉がどのように作用するのかということを考えて伝えなければならないんですよね。

[大]騎手、あるいは馬にもよりますが、言葉が及ぼす影響を考えて伝えます。

[西]先生は、騎手を攻め馬でも乗せたいと思いますか?

[大]現実として難しいですが、乗せたいとは思います。ファンの方々も、昔のスタイルというか、慣習の方が日本人の気質として、共鳴したりもするんじゃないでしょうか。

[西]それはありますよね。コミュニケーションということでも、僕自身で言えば、普段から付き合いがある騎手とそうではない騎手では、伝わる力というか、伝えるのに気を遣う部分で差があったりしますよね。ブッチャけてしまいますが、あまり知らない騎手に対しては、言葉がマイナスに働いてしまうかもしれないと思えば、やはり控えがちになります。

[大]最終判断はオーナーですが、騎乗する騎手を提案する際には、その騎手の性格、あるいはモノの考え方なども含めて、候補をあげさせていただきます。ただ、全部が全部把握できるわけではありません。父親が騎手だった(編注:大竹師の父は大崎昭一元騎手)ので、騎手を立てるという意識は持っています。


[西]そうですね。

[大]たとえ上手に乗ることができなかったとしても、命を賭けて乗っているという現実があります。父親も頻繁に怪我をしていて、常に心配しているような状況でした。

[西]そうだったんですか。

[大]言葉は悪いですが、正常な人間では騎手は務まらないんじゃないかという感覚はあります。それほど、非現実的な状況のはずですよ。自分自身、調教助手として馬に乗ってきましたが、あれだけの速度が出ていて、しかも密集している状況のなかで騎乗できるかと言われたら、まずは恐怖感しかイメージできないですよ。

[西]うわっ、て思いますよね。

[大]それでいながら、引き上げてきて、あそこで落ちかけたとか、あそこで接触したとかいう話を毎レースしているわけですよ。

[西]調教では馬に乗っていますので、乗ったことがない人よりは競馬の想像ができるのでしょうが、怖いということはイメージできますよね。

[大]言葉は悪いですが、普通の感覚では無理。相当脳内ではエンドルフィンが分泌されているはずですよ。普段、口数が少ない人がよくしゃべることもありますからね。

[西]話は変わりますが、将来的には馬房が削減される方向で調整されているということで、いまの段階でも預託可能頭数が減少したり、関東と関西の行き来に制限が設けられたりということになっています。そのあたりについてもお聞きしたいんですよ。この対談の主題のひとつとして、5年後の競馬ということがあるんです。

[大]まず最初に考えるべきことは、競馬の大義というのは、古今東西において強い馬をつくりだすことですよね。JRAで言えば、一番強い馬を決めるために、3歳馬たちはダービーをはじめとしたクラシック、古馬たちは路線別によってGIレースが行われています。そこを頂点としたとき、底辺が広ければ広い程、その頂点は高くなるはずなんです。

[西]その先に海外挑戦があるわけですよね。

[大]我々は、ホースマンとして、大義である強い馬を育てる。そのために切磋琢磨する。そうすることこそ、ファンが競馬に対して魅力を感じることになると思うんです。

[西]角居先生が1歳馬を預託しないという発表をされましたが、我々同業者としてもそのニュースはセンセーショナルでした。

[大]同じ調教師として、やはり調整するために試行錯誤しています。

[西]やはり、そうでしたか。

[大]力の均一化ということが目的なのでしょう。そういう意味では、F1の世界でも、どこかのメーカー、チームが独占的に強くなってしまうことを嫌って、レギュレーションを変更して、力の均一化が図られています。ただ、それでも年々、車の速度は速くなっています。つまり、均一化は図られていますが、それは進化を止めるということではなく、進化を遂げるなかで、均一化を図っていくということなのです。

[西]F1の世界でも力の均一化が図られていることは知りませんでした。

[大]預託頭数以外にも、未勝利、500万円下では関東は関東馬、関西は関西馬が優先という、通称“自ブロック”という政策がとられています。

[西]まずは関東ならば関東馬で出走枠が埋められて、空席があるときには関西馬たちが出走できるというルールですね。なんだか、昔関東は関東、関西は関西で、それぞれトライアルを走って、クラシック本番で対決というような感覚に似ていますよね。


[大]“西の秘密兵器”という言葉もそこから生まれたとされているよね。

[西]あっ、そうなんですか。

[大]交通網が発達したことで、輸送競馬にとってはより良い環境になり、より環境が良いとされる関西馬たちにとって追い風となったとされています。

[西]実際、未勝利、500万円下では出走しやすくなったかなぁという感覚はあります。ただ、短いところなんかは相変わらず混んでいるレースもありますし、一気に解消とはなっていないようです。

[大]簡単ではないですよね。ただ、我々はいつでも、強い馬を育てるという目的のために、5年後、10年後を目指して切磋琢磨していくことが、競馬が持つ魅力の根幹であるということを絶対に忘れてはならないと思います。

[西]だからこそ、高校生、あるいは中学生など、これから競馬の世界を目指そうとしている人たちが、競馬に対して夢とか希望を持てるかどうかということが大切だと思うんです。

[大]低迷していると言われている競馬ですが、10万人のファンが集まってくれるんです。そんな産業は他にはありません。だからこそ、その魅力を伝え、そしてもっと魅力ある方向へ向えるように、みんなで頑張らなければならないんです。環境も、制度も、すべては、ファンが求める、強い馬が生まれ、育てられるためにあるべきだと考えます。

(来週に続く)

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